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社説の読み比べ

同じ減税、逆向きの批判——東京は借金の側から、赤旗は暮らしの側から|社説読み比べ 2026年10月4日(日)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年10月4日(日)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説の掲載がなく、公明新聞は日曜のため「主張」の掲載がない。

東京と赤旗が、政府の飲食料品の消費減税に触れた。向きは逆だった。東京は財源の見えない支出の一つとして数え、赤旗は2年限りで食料品だけの減税として退けた。それでも二紙は、同じものを見ていた。いまの政策のつけが、後から国民に回ってくることである。

この記事の要点

  • 東京は消費減税を財源の見えない支出の一つとして数え、国民の年金や資産を当てにして金利を抑えるのは「解熱剤」だと書いた。赤旗は2年限り・食料品だけの減税を退け、すべての品目を5%に下げる恒久減税を求めた。つけを避ける処方は正反対
  • 中国が日本に向けた「新型軍国主義」という同じ言葉を、日経は対話を閉ざした壁として読んで対話を探れと書き、産経はその傍らで進む総力戦準備を書いて警戒を求めた。民泊(読売)とマンション談合(朝日)は三紙目になった
  • この日の一本は毎日「売春防止法の見直し 女性の尊厳守る対応こそ」——売る側だけを罰してきた法の偏りを指したうえで、誰を罰するかの手前に、誰を助けるかという問いを置いた

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算この日の【賛】と【注】
食料品の消費減税の財源9/5 読売から 9/30 朝日・赤旗まで十六本東京・しんぶん赤旗十八本目まで東京 −1 ■□□
赤旗 +2 ■■■
長期金利の上昇と、その波及9/2 毎日・日経から 9/26 読売まで十一本東京十二本目—
日中関係の修復と議員外交9/8 東京、9/22 公明、10/1 朝日・東京、10/3 読売日経六本目—
企業の統治とニデックの不正9/9 日経から 10/2 日経まで七本朝日八本目—
民泊の規制強化9/20 日経、9/29 産経読売三本目—
マンション修繕の談合9/30 読売・産経朝日三本目—
カスハラ対策の義務化9/9 公明毎日二本目—
同一労働同一賃金9/29 公明日経二本目—

【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。この日の消費減税で【賛】が測っているのは、飲食料品の消費減税への賛否である。赤旗の ■■■ は、すべての品目を5%に下げる恒久減税という代案による(この日は財源には触れていない)。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一同じ減税を、東京は借金の側から、赤旗は暮らしの側から見た

東京の書き出しは、通帳だった。久しぶりに記帳したら、見たこともない額の受取利息が印字されていた。「金利ある世界」が戻ってきた、と東京は書いた。

東京が書いたのは、その金利の裏側である。日銀が国債の大量購入をやめ、長期金利は30年ぶりに3%台に上がった。東京は、上昇の一因に、高市政権の「積極財政」への市場の警戒感を挙げた。2027年度の概算要求は約143兆円と過去最大になった。飲食料品の消費税を2年間1%に引き下げることも、増大する防衛費の対応も、財源の確保策がはっきりしないまま支出の拡大だけが先行している、と東京は書いた。

そのうえで東京は、与野党の政治家から、年金基金や個人に国債の購入を促す発言が相次いでいることを挙げた。

「国民の年金や資産を当てにして金利を抑えようとする振る舞いは財政不安という「体調不良」を放置したまま「解熱剤」を服用し、体温計の目盛りだけを無理やり下げるようなものです。」

東京新聞

東京は、戦時中に国が「貯蓄報国」を掲げて国民に国債の購入を促したことを引いた。敗戦後のインフレで、その国債や貯蓄は紙くず同然になった。東京は、いまとは制度も強制力も全く違うと断ったうえで、その結末を忘れてはならないと書いた。東京が見た請求書は、借金の請求書である。

赤旗は、10月の値上げから書いた。東京都区部の9月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2.7%上昇した。主要食品メーカーが10月に予定する値上げは3153品目にのぼる。電力大手10社は10月使用分から料金を引き上げた。赤旗は、政府が臨時国会に出す減税を、2年限りで食料品だけだと書いた。

「2年後には大増税です。」

しんぶん赤旗

「消費税の廃止をめざし、緊急にすべての品目の消費税を5%に下げる恒久減税が必要です。」

しんぶん赤旗

9月30日の赤旗と同じ求めである。赤旗が見た請求書は、2年後の増税の請求書である。

東京は、国債を安定して買ってもらうためにも、規律ある財政運営を取り戻せと書いた。赤旗は、減税をすべての品目に広げ、恒久にせよと書いた。東京は財政の規律で避けよと言い、赤旗は減税を広げて避けよと言う。二紙の処方は正反対である。

二「新型軍国主義」という同じ言葉を、日経は対話の壁として読み、産経は総力戦準備と並べて読んだ

日経と産経が、中国を書いた。二紙とも、中国が日本を「新型軍国主義」と呼んでいることに触れた。

日経は、米中の接近が鮮明になるなかで、岩屋前外相の訪中を書いた。日中関係は、昨年11月の台湾有事をめぐる首相の発言を機に悪化した。日経は、首相の発言に誤解を招く面があったのは確かだとしたうえで、中国側が対話のチャンネルを閉ざし、一方的に日本を「新型軍国主義」と批判する国際的なキャンペーンを繰り広げたと書いた。それでも日経は、対話をかたくなに拒んできた中国側の変化の兆しを前向きに受け止めた。

「中国の挑発には乗らず、あらゆる機会を捉えて対話を働きかけるしかない。」

日本経済新聞

産経は、1日に施行された中国の改正国防動員法を書いた。有事の際に民間の資源を軍需向けに動員しやすくする法で、日本を含む外国企業の資産の接収や外国人の徴用を可能にする条項もある。動員を発動できる場合に「(国家の)発展の利益」が脅かされる場合も加わり、産経は、いかようにも解釈できる規定だと書いた。中国は来年夏に人民解放軍の創設100年を迎え、秋の共産党大会では習氏が党総書記の4期目に入る見通しだ、とも書いた。

「こうした重要日程を前に、習指導部は日本を「新型軍国主義」と非難する傍らで着々と総力戦準備を進めているのが実情だ。」

産経新聞

同じ言葉を、日経は対話を閉ざした壁として読み、それでも壁の向こうへ話しかけよと書いた。産経は、その非難の傍らで進む総力戦準備を書き、厳に警戒せよと書いた。

三追いかけている主題から

ニデックは、朝日で八本目になった。岸田光哉社長が、社外取締役を中心とする取締役会の勧告で辞任した。朝日は事実上の解任と書いた。今春の会計不正の調査報告書は、岸田氏の財務健全化の努力を評価していた。朝日は、その岸田氏の不適切な言動の内容が説明されていないことを問い、情報開示が不十分だと書いた。永守氏は不正について公の場で説明せず、岸田氏も自ら理由を説明せずに社長を辞めた。朝日は、両氏を含む旧経営陣の責任を明確にせよと書いた。

民泊の規制強化は、読売で三本目になった。4000件近い民泊がある東京都新宿区が、住宅街や学校周辺での営業を原則禁止する方針を固めた。昨年度の苦情や相談は1300件を超えた。国は7月、自治体が条例で民泊を禁止できるとする通知を出した。読売は、民泊を推進してきた国の方針の大きな転換と書いた。

「まずは悪質な業者を排除することが重要だ。」

読売新聞

読売は、トラブルが減らないなら規制を一層強めざるを得ないとも書き、どのような運営が適切かを各自治体で検討せよとした。9月20日の日経は一律に締めずに運営の良し悪しで仕分けよと書き、9月29日の産経は規制の強化はやむを得ないと書いた。読売は、その二つのあいだに立った。

マンション修繕の談合は、朝日で三本目になった。公正取引委員会は、設計コンサルタント2社と工事業者40社の独占禁止法違反を認定し、171カ所のマンション名を公表した。マンションの修繕工事での処分は初めてである。

「頼るべきコンサルが住民に寄り添うふりをしながら都合の良い工事業者を選び、バックマージンを得る。」

朝日新聞

9月30日の読売は業者に補償を、産経は刑事告発の検討と違約金の特約を求めた。朝日は業者の補償に加え、国の責任を書いた。国土交通省は2017年に注意喚起の文書を出したが、それ以上強い処置は取られず、談合は続いた。朝日は、コンサルに登録・許可制を導入するなど業界全体の是正を求めた。

カスハラ対策の義務化は、毎日で二本目になった。すべての事業者に対策が義務付けられた。毎日は、事業者の対応が遅れている理由に、正当な苦情とカスハラの線引きの難しさを挙げた。9月9日の公明が丁寧に書いた、線をどこに引くかという一点である。毎日は、正当な苦情は消費者の権利で、企業の業務改善にもつながるとも書いた。

同一労働同一賃金は、日経で二本目になった。10月からガイドラインが改定され、退職手当や家族手当、住宅手当などが加わった。日経は、非正規の賃金水準は正社員の7割弱にとどまると書き、格差の是正を生産性の向上と一体で進めよと求めた。9月29日の公明は、見出しで「新ルールで不合理な待遇差解消を」とした。

この日の一本

毎日新聞「売春防止法の見直し 女性の尊厳守る対応こそ」を採る。

70年前にできた売春防止法を見直す動きが本格化している。法務省の有識者検討会が報告書をまとめた。きっかけは、東京・歌舞伎町の路上売春である。悪質ホストクラブで借金を負わされた女性らの客待ちが増え、社会問題になった。毎日が指したのは、法そのものの偏りだった。

「売春防止法は売る側の勧誘行為を罰する一方で、買う側には同様の規定がない。」

毎日新聞

往々にして女性だけが処罰の対象となり、男性客の責任は問われない。検討会では、何らかの規制を設けるべきだという意見が複数の委員から上がり、異論は出なかった。法務省は法改正を検討している。

毎日は、そこで止まらなかった。客待ちの女性がいなくなっても、本質的な問題は解決しない。売る側の女性の多くは、貧困や虐待、障害などの困難を抱えているとされる。

「重要なのは、女性の人権を守ることである。」

毎日新聞

毎日が求めたのは、売春に走らずに済む福祉のセーフティーネット、望まぬ売春から離れるための支援、そして実態調査である。処罰を恐れて、助けを求めることをためらう女性もいるという。海外には、売る側を支援の対象と位置付けて処罰しない国もある。検討会では罰則を維持する意見が大勢を占めた。毎日は、過酷な環境にある女性には支援を優先すべきだという考え方は、多くの人の賛同を得られるのではないかと書いた。

法の見直しは、誰を罰するかの線を引き直す議論として始まった。毎日はその手前に、誰を助けるかという問いを置いた。この一本を採るのは、罰の偏りを正すだけでは届かない人がいることを示したからである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から10月3日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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