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社説の読み比べ

米中間選挙を何で測るか——朝日は暮らしで、毎日は世界で|社説読み比べ 2026年10月3日(土)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年10月3日(土)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は13本。聖教新聞は社説の掲載がない。

朝日と毎日が、1カ月後に迫った米国の中間選挙を書いた。二紙が挙げたトランプ氏の手立ては同じだった。区割りの変更、郵便投票の制限、勝てば給付金という約束である。二紙が分かれたのは、審判の物差しだった。朝日は暮らしが良くなったかを問い、毎日は世界の秩序を壊した責任も問えと書いた。民主党への注文も、朝日は財源に、毎日は世界への道筋に向いた。

この記事の要点

  • 朝日と毎日は同じ手立て(区割りの変更、郵便投票の制限、勝てば給付金)を挙げながら、審判の物差しを分けた。朝日は暮らしで、毎日は世界で測った。民主党への注文も、朝日は財源に、毎日は世界への道筋に向いた
  • 首相の国連演説を、赤旗は米国に言わなかったことで、読売は中国に言ったことで読んだ。学術会議は読売で四本目——10月1日の毎日が萎縮を心配した監事と評価委員会を、読売は使途を確かめる当然の仕組みとして書いた
  • この日の一本は東京「データセンター 紛争予防へ法整備急げ」——DCは建築基準法に定義がなく、自治体は計画を止められない。AIの是非の手前で、AIが建つ場所の規則が追いついていないことを示した

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
米国のICC制裁と日本9/3 毎日から 9/26 赤旗まで九本赤旗十本目
日中関係の修復と議員外交9/8 東京、9/22 公明、10/1 朝日・東京読売五本目
日本学術会議の法人化9/11 東京、9/28 日経、10/1 毎日読売四本目
国が情報を集める権限9/3 産経、9/22 朝日・産経・赤旗、9/29 読売、9/30 朝日、10/2 産経毎日八本目
未成年の選挙運動9/30 毎日・東京、10/1 朝日日経四本目
男女の平等9/28 朝日・日経・赤旗朝日四本目
米国産ジャガイモの輸入9/16 東京、9/20 赤旗、9/22 日経、9/26 朝日公明五本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一中間選挙を、朝日は暮らしで、毎日は世界で測った

朝日の書き出しは、問いだった。

「米国は偉大となり、国民の暮らしは果たして向上したのか。」

朝日新聞

朝日は、米紙の9月の世論調査を挙げた。トランプ氏の政策で経済が「悪くなった」は60%、「良くなった」は25%だった。朝日は、負担増はイラン戦争による燃料高、関税、移民規制と切り離せないと書いた。

毎日は、最大の争点は物価高対策だと書いた。そのうえで、トランプ氏が「私への投票と思ってほしい」と論点をずらしたことを逆手に取った。

「ならば国内外での無謀な振る舞いも問われるべきだ。」

毎日新聞

毎日が挙げたのは、ベネズエラ急襲とイラン攻撃である。毎日は、トランプ氏が平和の礎となる「法の支配」も破壊していると書いた。各地で米国抜きの安全保障の連携が進むのは、秩序を乱す米国自身に原因がある、とも書いた。

二紙とも、民主党にも注文を付けた。朝日は、暮らしの問題を掲げる左派系の候補も、財源や実現性を欠いた政策では幅広い支持を得るのは容易でないと書いた。毎日は、民主党も同盟関係の修復や国際秩序の再建への道筋を描けていないと書いた。

「「米国第一」を超え、世界を見据えた論戦を期待したい。」

毎日新聞

朝日も、選挙を意識して外交・安保の判断を誤るなと一段落を割いた。それでも、民主党に向けた注文は暮らしの政策の財源だった。

同じ選挙、同じ手立てを並べながら、二紙は審判の物差しを別の場所に置いた。朝日は米国の有権者の暮らしに置き、毎日は米国の外の世界に置いた。

二首相の国連演説を、赤旗は米国に言わなかったことで、読売は中国に言ったことで読んだ

赤旗は、国連総会の一般討論演説を書いた。トランプ氏は国際刑事裁判所(ICC)を「ならず者機関」と呼んだ。赤旗は、多くの首脳が国連憲章と国際法の順守を強調したと書き、そのうえで高市首相の演説を挙げた。

「高市早苗首相は演説で一応「法の支配」に言及したものの、ICC脱退を求める米国への批判はまったくありませんでした。」

しんぶん赤旗

読売は、岩屋前外相らの訪中から書き、その中で同じ演説に触れた。首相が国連憲章の旧敵国条項の削除を求めたことに、中国は反対を表明した。条項は1995年に総会で死文化が決議され、中国もこれを支持した、と読売は書いた。

「今になって反対することは当時の決議に矛盾し、筋違いだ。」

読売新聞

9月24日の読売は、同じ演説を、首相がICCへの支持を示した場として書いていた。

同じ演説を、赤旗は米国に言わなかったことで読み、読売は中国に言ったことで読んだ。この日の赤旗は、日本政府に「日米同盟絶対の立場」から抜け出せと書いた。読売は、日本の立場を繰り返し訴えよと書いた。

三追いかけている主題から

日本学術会議の法人化は、読売で四本目になった。新設された監事は首相が指名し、内閣府に新設する評価委員会が意見を出せる。10月1日の毎日は、この仕組みで運営方針や提言に圧力がかかれば活動が萎縮しかねないと書いた。読売は、介入の恐れという懸念は当たらないと書いた。

「監査などを通じて使途を厳正に吟味するのは当然だ。」

読売新聞

これまでの三紙は、政府の関与が学者の異論を封じることを警戒していた。読売は、同じ仕組みを税金の使い道を確かめる仕組みとして書いた。

日中関係は、読売で五本目になった。10月1日の朝日は、岩屋氏の訪中に変化の兆しを読んだ。読売は、中国が友好的とみなす人々と首相らを選別する狙いを読んだ。岩屋氏の応答には、中国に取り込まれたかのような印象を与えかねないと書いた。

国が情報を集める権限は、毎日で八本目になった。自民党の提言は、通信傍受の対象をスパイ防止法違反などに広げ、将来は安全保障目的の傍受を令状なしで可能にすることも検討するとした。毎日は、通信の秘密やプライバシーを脅かす恐れがあると書き、情報機関の民主的統制を求めた。9月30日の朝日と同じ一点である。

未成年の選挙運動は、日経で四本目になった。日経も、違憲とした東京地裁の判決には一定の説得力があると書いた。判決も指摘するとおり、規定ができて以来、国会でその是非が深く検討されたことはないとみられる、とも書いた。10月1日の朝日が国会の放置を責めたのと同じ一点である。日経はそのうえで、未成年が不当な政治的影響を受けるのを防ぐ対策も必要だと書いた。

男女の平等は、朝日で四本目になった。首相は、公的書類に旧姓だけを書ける「単記」の基盤整備を法相に指示した。朝日は、旧姓の通称使用だけで解決する問題ではないとし、これで選択的夫婦別姓の議論を幕引きするなら筋が違うと書いた。9月28日の日経も、旧姓使用の拡大の先に選択的夫婦別姓の改革を急げと書いていた。

米国産ジャガイモは、公明で五本目になった。公明は、科学的根拠に基づいて慎重に協議せよと書き、決め方を問うた日経・朝日と同じ側に立った。そのうえで、種芋の生産現場の負担を減らす支援を求めた。

この日の一本

東京新聞「データセンター 紛争予防へ法整備急げ」を採る。

人工知能(AI)の普及で、データセンター(DC)の建設が相次いでいる。都市部では、住民の反対が続いている。東京都日野市では住民団体が審査請求をし、千葉県印西市では住民らが建築確認の取り消しを求めて提訴した。東京が指したのは、争いが起きる手前の穴だった。

「ただ、DCは建築基準法に定義がなく「事務所」などとして扱われている。」

東京新聞

法令に違反しない限り、自治体は計画を止められない。事業者が「情報の秘匿性」を理由に住民に十分な説明をしない例も少なくない、と東京は書いた。東京が求めたのは、建築基準法でDCの位置付けを明確にすること、そして事業者に、情報提供や環境影響評価を義務付けることである。

前日の産経は、日本の国力を保つには、安全を保ちつつAIを積極的に開発することが不可欠だと書いた。東京も、高市政権がAI開発を成長戦略の中核に位置付けたことを挙げた。

AIを進めるかどうかの議論は、これまで技術と安全の側で行われてきた。東京が書いたのは、そのAIが建つ場所の規則である。この一本を採るのは、AIの是非の手前で、建てる場所の決まりが追いついていないことを示したからである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から10月2日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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