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社説の読み比べ

円安の根はどこに——毎日は首相の口先介入から、読売は日銀短観から、同じ場所にたどり着いた|社説読み比べ 2026年10月2日(金)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年10月2日(金)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は15本。

毎日と読売が、円安の根を同じ場所に見た。毎日は、高市首相がトランプ米大統領との会談で円安をけん制したことから書いた。読売は、日銀の企業短期経済観測調査(短観)から書いた。入り口は違ったが、二紙とも、市場が政府の政策を信じていないことに円安の原因を見た。同じ短観を書いた日経は、そこには触れなかった。

この記事の要点

  • 毎日は首相の口先介入から、読売は日銀短観から書き、二紙とも、市場が政府の政策を信じていないことに円安の原因を見た。毎日は財政の見直しを、読売は日銀の利上げと予算の両方を求めた。同じ短観を書いた日経は、話を日銀の次の利上げにとどめた
  • 衆院の定数削減は朝日で五本目、国が情報を集める権限は産経で七本目、ニデックは日経で七本目、AIは産経で十九本目——同じ減速の提案を挙げて、前日の赤旗は止める側へ、産経は進める側へ向かった
  • この日の一本は東京「核ごみ調査容認 住民の理解は後回しか」——朝日はなぜここなのかの説明を、前日の産経は周辺への説明を求めた。東京が問うたのは、説明が決定の後に回ったことである

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算この日の【賛】と【注】
核のごみ(常陸大宮市の文献調査)9/2 産経、9/4 日経、9/5 毎日、9/8 東京、9/11 読売、10/1 産経朝日・東京八本目まで朝日 −1 ■■□
東京 −1 ■□□
衆院の定数削減と選挙制度9/22 毎日、9/28 東京、9/29 毎日、10/1 読売朝日五本目—
中道改革連合の分裂9/1 朝日・読売から 9/19 読売まで十二本毎日十三本目—
国が情報を集める権限9/3 産経、9/22 朝日・産経・赤旗、9/29 読売、9/30 朝日産経七本目—
AIとIT大手をどう抑えるか8/31 公明から 10/1 赤旗・公明まで十八本産経十九本目—
企業の統治とニデックの不正9/9 日経、9/12 産経、9/13 朝日・毎日、9/20 読売、10/1 読売日経七本目—
ふるさと納税9/21 朝日、9/24 日経、9/30 産経読売四本目—

【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。この日の核のごみで【賛】が測っているのは、常陸大宮市での文献調査を進めることへの賛否である。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一円安の根を、毎日と読売は政策への不信に見た

毎日が書いたのは、首相の口先介入である。首相は、9月のトランプ氏との会談で「円安によって米国の貿易が厳しい」という話があったと明かし、円の過小評価は問題だと伝えたと述べた。毎日は、これを対症療法にすぎないと書いた。

「根源的な要因である日本の財政政策こそ見直すべきだ。」

毎日新聞

毎日が挙げたのは、首相の看板政策の「積極財政」である。来年度予算の概算要求は過去最大の143兆円超に膨らみ、消費税の減税では年4兆円超の税収が失われる。長期金利は3%台と30年ぶりの高水準をつけている、と毎日は書く。

読売の入り口は、日銀の短観だった。大企業・製造業の景況感はプラス24で、6期連続で改善した。読売はこれを、緩やかな景気回復の継続と書いた。そのうえで、リスクを円安と物価高と金利の急上昇に置き、その原因を政策への信認に見た。

「だが、国の財政・金融政策が、市場からの信認を得ているとは言い難い。」

読売新聞

読売は、それが過度な円安と長期金利の上昇につながっていると書き、言葉だけでなく実績で「脱リフレ」を見せよと書いた。求めたのは、日銀の適切な利上げの判断と、規模を追わない来年度予算である。

日経も、同じ短観を書いた。日経が見たのは、AI関連の需要と、コスト高を販売価格に転嫁する動きが企業収益を支える構図である。物価の上振れのリスクは残るとしつつ、短観は総じて日銀の利上げ路線を支持する内容だと書いた。

「次の利上げの時機を見定めるうえでは支店を通じた聞き取りを含め、企業動向の丹念な情報収集と分析が求められる。」

日本経済新聞

日経は、円安にも財政にも触れなかった。

たどり着いた先は同じでも、求めたことは違った。毎日は財政の見直しを求め、読売は日銀の利上げと予算の両方を求めた。同じ短観を読んだ日経は、話を日銀の次の利上げにとどめた。

二追いかけている主題から

衆院の定数削減は、朝日で五本目になった。与野党の協議会の報告書は、抜本改革の答申を1年以内に得るとし、現行制度の見直しも10月末をめどに結論を得るよう努力するとした。首相と維新は、5日召集の臨時国会で比例45議席の削減法案の成立を図る構えである。

「抜本改革に先行して定数だけを大幅に削るのは順序が逆だ。」

朝日新聞

朝日は、比例を45削減すれば小選挙区の割合が62.2%から68.8%に上がり、比例に頼る中小政党に痛みが偏ると書いた。前日の読売も、定数削減に強引な姿勢を続ければ当面の改革の合意も崩れると書いていた。

中道改革連合の分裂は、毎日で十三本目になった。中道には1人が残り、政党交付金の残り約12億円を受け取る。毎日はこれを、不信を招く対応だと書いた。9月19日の読売と同じ一点である。毎日はそのうえで、野党に、政権とは別の選択肢を示して新たな結集軸を探れと書いた。

国が情報を集める権限は、産経で七本目になった。警視庁が、闇バイト強盗の標的の資産情報を匿名・流動型犯罪グループ(匿流)に流した「情報元」を初めて逮捕した。産経は、警察庁の検討会が求めた、匿流の上層部のスマートフォンを遠隔で解析する手法の解禁を急げと書いた。

「国民を泣かす匿流を丸裸にできる法改正である。」

産経新聞

9月22日の朝日は、同じ遠隔解析を、拙速な議論は避けよ、立法は厳格にと書いていた。

AIは、産経で十九本目になった。産経も、前日の赤旗と同じく、アンソロピックの最高経営責任者が開発の減速を提案したことを挙げた。米国の主要6社が自主規制でトランプ大統領と合意したことは一歩前進だが、法的拘束力はないと書き、国際協調による安全対策を求めた。そのうえで、日本には開発を進めよと書いた。

「日本の国力を保つには安全を保ちつつ、AIを積極的に開発することが不可欠だ。」

産経新聞

前日の赤旗は、日本政府として最先端AIの開発の一時停止・禁止を求めよと書いていた。同じ提案を挙げて、赤旗は止める側へ、産経は進める側へ向かった。

ニデックは、日経で七本目になった。監査法人が2年続けて意見を表明しなかった。日経は、この「意見不表明」はニデックの対応に疑義を突きつけるものだと書いた。結びは、創業者の永守氏の説明である。永守氏が説明を果たすことも避けて通れない、と日経は書いた。9月12日の産経と9月20日の読売が求めたのと同じ一点である。

ふるさと納税は、読売で四本目になった。募集にかける経費の上限が、1日から寄付額の50%から47.5%に下がった。2029年には40%になる。読売はこれを妥当とし、仲介サイトの手数料を重荷として挙げた。読売は、制度を続ける前提で手直しを求めた点で、日経・産経と同じ側に立った。

この日の一本

東京新聞「核ごみ調査容認 住民の理解は後回しか」を採る。

茨城県常陸大宮市の市長が、核のごみの最終処分場選びの文献調査を受け入れた。国の要望から、わずか1カ月後の判断である。東京が問うたのは、決めるまでの手順だった。

「唐突ともいえる政府要望からわずか1カ月後の判断だが、住民説明の場さえ設けられないまま。」

東京新聞

東京は、同じく政府からの要請を受けた小笠原村と比べた。小笠原村では、判断の前に住民説明会が4回開かれた。常陸大宮市の市長は、処分場選びには直結しないとして説明会を開かなかった。市議会も、議員協議会を3回開いたが、いずれも非公開で、総意をまとめないまま市長の判断に一任した。

「「自分たちの知らない間に物事が決められる」という不安ではないか。」

東京新聞

同じ日の朝日も、この受け入れを書いた。朝日が問うたのは、なぜここなのかである。国は、市内全域が科学的特性マップで「好ましい特性」のグリーンだと挙げたが、グリーンだけなら国土の6割以上に当たる、と朝日は書いた。東京も、同じマップを挙げ、先行した自治体には大半が「好ましくない」地域に当たる所もあるとして、説得力を欠くと書いた。調査地点を増やす国の動きに、朝日は「原発の最大限活用」への転換への批判をかわす狙いを見て、東京は原発回帰を正当化するためのポーズにも映ると書いた。

前日の産経は、市長の表明を歓迎し、NUMOは周辺の自治体にも早い段階から説明をと書いた。

三紙とも、説明を求めた。求めた中身が違った。産経はこれから周辺へ広げる説明を、朝日はなぜここなのかの説明を求めた。東京が問うたのは、説明が決定の後に回ったことである。この一本を採るのは、核のごみの是非の手前にある、決め方の順序を示したからである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から10月1日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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