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社説の読み比べ

制度の線を三紙が書いた——読売と日経は線の手前に寄るものを、朝日はまだ引かれていない線を問うた|社説読み比べ 2026年9月30日(水)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月30日(水)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は14本。聖教新聞は社説の掲載がない。

読売、日経、朝日の三紙が、制度の線を書いた。題材は、読売がビール類の酒税の一本化、日経がパートの厚生年金の適用拡大、朝日が消費減税とセットで政府が導入をめざす就業者負担軽減支援金である。読売は商品が、日経は働き手が、線の手前に寄ることを書いた。読売は税率の線を消すことを歓迎し、日経は残る線の見直しを急げと書いた。朝日は、誰に配るかの線がまだ引かれていないことを問うた。読売は税制の原則「公平・中立・簡素」を線を消す理由に置き、朝日は「公平・公正」を線を引く理由に置いた。

この記事の要点

  • 読売は、麦芽比率で「ぎりぎりの線を突いた」発泡酒から始まった酒税のいたちごっこを書き、税率の一本化を歓迎した。日経は、「106万円の壁」が消えても「週20時間の壁」が生まれると書いた。朝日は、就業者支援金の対象の線引きを問い、所得と資産の把握を求めた
  • 消費減税は朝日と赤旗で十六本目(赤旗は「食料品のみ1%」を「減税の名に値しません」とした)。未成年の選挙運動を違憲とした判決を毎日と東京が、マンション修繕の談合を読売と産経が書いた。ふるさと納税は産経で、カナダとEUの接近は毎日で三本目
  • この日の一本は朝日「情報有識者会議 民主的統制の具体化を」——前日の読売が情報の収集力を高めよと書いた同じ会議を、朝日は情報機関を見張る仕組みの側から書いた

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算この日の【賛】と【注】
食料品の消費減税の財源9/5 読売、9/7 東京、9/8 日経、9/9 朝日、9/10 赤旗、9/13 東京、9/16 朝日・読売・産経・東京・日経、9/17 毎日・赤旗、9/18 朝日朝日(就業者負担軽減支援金)・しんぶん赤旗十六本目まで朝日 0 ■■□
赤旗 +2 ■■■
国が情報を集める権限9/3 産経、9/22 朝日・産経・赤旗、9/29 読売朝日六本目—
年金の第3号被保険者制度9/27 読売日経二本目—
ふるさと納税9/21 朝日、9/24 日経産経三本目—
カナダと米国の関税、EUへの接近9/9 読売、9/21 朝日毎日三本目—
インフルエンザの早い流行9/7 東京、9/13 産経、9/16 読売、9/26 公明日経五本目—
未成年の選挙運動(この日が一本目)毎日・東京二本—
マンション修繕の談合(この日が一本目)読売・産経二本—

【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。この日の消費減税で【賛】が測っているのは、飲食料品の消費減税への賛否である。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一制度の線——読売と日経は線の手前に寄るものを、朝日は引かれていない線を書いた

読売は、10月1日にビール類の酒税が一本化されることを書いた。350ミリ・リットル缶で、ビールは約63円、発泡酒と第3のビールは約47円の税が、いずれも約54円になる。読売がさかのぼったのは、サントリーが1994年に発売した発泡酒「ホップス」である。当時は麦芽使用比率67%以上がビールで、それに満たなければ発泡酒だった。

「ホップスは麦芽比率を65%と、ぎりぎりの線を突き、税金分を含めて2割以上安くして、爆発的な人気を呼んだ。」

読売新聞

財務省がビールとなる麦芽使用比率を「50%以上」へ引き下げたあとも、各社と財務省のいたちごっこは続いた、と読売は書く。読売は一本化を歓迎し、こう書いた。

「税制の原則は、「公平・中立・簡素」である。似たような商品に異なる税率を設定することはそもそも不自然だった。」

読売新聞

日経は、パートの厚生年金の適用で、月収8万8000円以上という賃金要件が10月から撤廃されることを書いた。この要件は「年収106万円の壁」と呼ばれ、手取りが減るのを避けるためにパートが就業を調整する理由になっていた。日経は、残る二つの要件——企業規模と労働時間——の見直しを急げと書いた。

「今のままでは「年収106万円の壁」が消えても、週20時間に到達しないように就業時間を調整する動きが強まるだろう。「週20時間の壁」の発生である。」

日本経済新聞

日経は、労働時間の要件を「週10時間以上」などに引き下げ、適用されたときの手取りの減り方を小さくする改革の検討を求めた。

朝日は、2027年4月からの飲食料品の消費減税とセットで政府が導入をめざす「就業者負担軽減支援金」を書いた。10月からの臨時国会に法案が出るが、誰にいくら配るのか、どこから財源を調達するのかの詳細は盛り込まれない見通しだ、と朝日は書く。朝日が問うたのは線引きである。

「どう対象者を線引きするかという公平・公正な視点からも、課題は大きい。」

朝日新聞

高所得の配偶者がいる人を対象から外す線は、まだ決まっていない。金融所得が高い人や、多額の資産を持つ人は外さない。給与など他の所得と合わせてみる仕組みが未整備だからだ、と朝日は書く。朝日は、所得の正確な把握と、資産の把握に広げた検討を求めた。

三紙を並べると、線の両面が見える。線を引けば、商品も働き手も線の手前に寄る。読売はその線を消すことを歓迎し、日経は残る線の見直しを急げと書いた。朝日は、線が引けていないことを問うた。読売は「公平・中立・簡素」を線を消す理由に置き、朝日は「公平・公正」を線を引く理由に置いた。

二追いかけている主題から

食料品の消費減税は、朝日と赤旗で十六本目になった。赤旗は、「戦後最長の景気拡大」と言われる中で実質賃金や個人消費は後退、停滞していると書き、消費税の廃止を目指して、すべての品目で税率を5%に下げる恒久減税を求めた。財源は、大企業・大資産家への減税・優遇を正すことで確保できるとした。二紙は、政府案で食料品に残る「1%」を、それぞれの側から書いた。朝日は、減税しきれない税率1%分、約6千億円を使って支援金を配るつなぎの仕組みを、税率ゼロの実現を取り繕う「苦肉の策」と書いた。赤旗はこう書いた。

「2年間、食料品のみ1%にする消費税率引き下げは、減税の名に値しません。」

しんぶん赤旗

未成年の選挙運動を、毎日と東京が書いた。未成年者の選挙運動を罰則付きで禁じた公職選挙法の規定を、東京地裁が、表現の自由を保障する憲法21条に反すると判断した。二紙とも判決を評価し、法の見直しを求めた。毎日は、規定が1952年に盛り込まれた理由を挙げ、どれも選挙運動を一律に禁止する根拠としては薄弱だとした判決を書いた。

「表現の自由は民主主義の基盤であり、年齢だけを理由に制限されていいはずがない。」

毎日新聞

東京は、判決が合憲とした部分も書いた。未成年者を使って選挙運動をさせることの禁止は、意に沿わない選挙運動をさせられる可能性があるとして合憲とされた。東京は、選挙運動での違法行為やSNSでの誹謗中傷が後を絶たないとして、選挙の公正と未成年者の保護を前提にした仕組みづくりを社会全体で考えたいと書いた。

マンション修繕の談合を、読売と産経が書いた。関東のマンションの大規模修繕工事171件で、公正取引委員会が設計コンサルタント2社と施工会社40社の独占禁止法違反を認定した。住民の側に立つはずのコンサルが、施工会社から受注額の約5%を受け取っていた、と二紙とも書いた。二紙は同じ問いを立てた。

「その信頼を逆手に取るというなら住民は何を信じればいいのか。」

読売新聞

「複数業者の競争自体が談合で仕組まれ、コンサルまで業者と結託されたら住人は何を信じればいいのか。」

産経新聞

求めたものは分かれた。読売は、業者が自ら別の専門業者に適正な工事費を算出してもらい、差額を住民に示して返すよう求めた。産経は、刑事告発も検討すべきでなかったかと書き、談合した業者に違約金を払わせる特約の普及を急げと書いた。

年金の第3号被保険者制度は、日経で二本目になった。9月27日の読売は、見直しは理解できるとしつつ、実態を把握して慎重にと書いた。この日の日経は、夫婦共働きが主流となって時代に合わなくなった制度だとして、見出しで縮小を「急げ」とした。

ふるさと納税は、産経で三本目になった。9月21日の朝日は、税収の格差の是正を交付金という別の制度に戻せと書き、9月24日の日経は、制度の中で規模を抑える側に立った。この日の産経は、寄付額の5割強しか自治体の財源になっていないとして、仲介サイトの手数料を問うた。

「手数料の高止まりが続くのであれば、一定の規制導入も検討すべきではないか。」

産経新聞

三紙とも、仲介サイトの手数料を問うた。9月21日の朝日は仲介サイトへの個別の引き下げ要求を挙げ、9月24日の日経は、協力が得られなければ規制はやむをえないと書いていた。

カナダとEUの接近は、毎日で三本目になった。9月9日の読売はカナダと米国の報復関税の応酬を不毛な貿易戦争と書き、9月21日の朝日はその帰結としてカナダのEU接近を書いた。この日の毎日は、欧州委員長がカナダを初の「準加盟国」として迎える構想を打ち出したことを、米国の威圧がもたらした中堅国の連携として書いた。毎日の結びは、9月21日の朝日と同じところにある。

「そもそも米国との壁を築き、政策の選択肢を自ら狭めることは中堅国にとっても得策ではあるまい。」

毎日新聞

9月21日の朝日も、「一方的に対米修復の道を閉ざすのは得策とはいえない」と書いていた。

この日の一本

朝日新聞「情報有識者会議 民主的統制の具体化を」を採る。

政府が、インテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化に向けて有識者会議を立ち上げた。高市政権は年内にも国家情報戦略を策定し、スパイ行為を抑止する新法を来年の通常国会に出す日程を描いている、と朝日は書く。7月末の国家情報会議と国家情報局の創設は組織の改革が中心だったが、今回は国家の権限そのものを強めるもので、市民への監視の強化やプライバシーの侵害への懸念が大きい。朝日はそう見て、情報機関の活動をチェックする「民主的統制」の仕組みづくりを求めた。

前日の読売は、同じ会議が議論を始めた国家情報戦略について、情報の収集力を高めよと書いた。外国政府などの指示を受ける人に「代理人」としての登録を義務づける案も、理解できるとした。この日の朝日は、自民党の提言にある外国代理人の登録制度と外国干渉防止法について、こう書いた。

「いずれも、定義や要件があいまいなら、政府の恣意(しい)的な運用につながる懸念がある。」

朝日新聞

朝日は、陸上自衛隊の情報を扱う部隊が有識者らの思想信条や私的な情報を集めていたことを挙げた。9月22日の赤旗も、陸上自衛隊による民間人の情報収集をやめよと書いていた。国家情報会議設置法の審議で野党が求めた国会の関与、第三者による監視、記録の保存や事後検証に政府は応じなかったとして、朝日は、もはやそうした消極姿勢は許されないと書いた。

朝日は、会議の顔ぶれも挙げた。情報機能の強化を推す立場の専門家に加え、法学者や法律の実務家、メディアから読売新聞グループ本社社長も参加している、と朝日は書く。朝日はこの会議に、政府に厳しい注文をつけ、市民の側に立った議論を進めるよう求めた。議事録も、要旨にとどめず全文を公開すべきだと書いた。

前日の読売とこの日の朝日は、同じ会議を逆の側から書いた。読売は集める力を、朝日は集める力を見張る仕組みを書いた。読売も前日、報道の自由が制限されることもあってはならないと書いていた。一つの会議に何が問われているかが、二日の社説を並べると両側から見える。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月29日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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