秘密と安全保障を理由に伏せ、外す——読売・日経は理由を認めて行き過ぎを戒め、朝日は理由を認めなかった|社説読み比べ 2026年9月28日(月)
公開
この日、並べると見えたこと
2026年9月28日(月)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説の掲載がない。
読売、日経、朝日の三紙が、別々の題材で、秘密や安全保障を理由に何かを伏せたり誰かを外したりする動きを書いた。読売は民事裁判の証拠、日経は日本学術会議の会員の選び方、朝日は米国のホワイトハウスの取材である。読売と日経はその理由をいったん認めて行き過ぎを戒め、朝日は理由そのものを認めなかった。それでも三紙が戒めたものは同じ形をしている。事実を隠すこと、異論を封じること、取材する側を選ぶことの道具になることである。もう一つ、朝日と日経が同じ男女格差の国際報告を書き、赤旗が安全な妊娠中絶の権利の日を書いた。三紙は、男女の平等のために打つ手を、別々の場所に見た。朝日は議席と役職に就く女性の数、日経は一人ひとりの生き方を縛る制度、赤旗は産むか産まないかを選ぶ権利である。
この記事の要点
- 読売は証拠の外部公開の制限を「趣旨は理解できる」としつつ不都合な事実を隠す目的に使うなと書き、日経は学術会議の会員要件の安全保障審査を「懸念は理解できるが」異論を封じる手段にするなと書いた。朝日はトランプ政権によるCNNなど3社の取材排除を、「機密を報じた」との主張も理由にならないと退けた
- 朝日と日経は同じ男女格差の報告(145カ国中117位)を書き、初の女性首相の誕生を朝日は是正と見るには「早計」、日経は「意義は大きい」と書いた。手立ては朝日がクオータ制、日経が選択的夫婦別姓。赤旗は安全な中絶の権利の日に、中絶の費用と配偶者の同意の壁を挙げた
- この日の一本は東京「選挙制度改革を考える 民意切り捨て許さない」——80年前の衆院選から書き起こし、比例定数を45削減すれば与党の議席占有率が75%から80%超になるという自社の試算を示して、定数を減らさない選挙制度の案を出した
この日の一覧
| 媒体 | 見出し |
|---|---|
| 朝日新聞 | (社説)報道と権力 排除を許さぬ連帯こそ/(社説)男女の格差 実効性のある方策を |
| 毎日新聞 | 社説:台頭する国家資本主義 自由と協調の価値損なう |
| 読売新聞 | 社説:民事裁判 迅速な審理へ証拠集めやすく/社説:戦争資料の展示 子供たちの心にどう配慮する |
| 産経新聞 | <主張>家庭学習の減少 子供の意欲高める環境を/<主張>「魅了ギョ」計画 魚食で漁業と海を守ろう |
| 東京新聞 | 〈社説〉選挙制度改革を考える 民意切り捨て許さない |
| 日本経済新聞 | [社説]学術会議は地球課題に針路示す重責担え/[社説]男女平等の社会へ停滞打破を |
| しんぶん赤旗 | 主張/安全な中絶の日/女性の選択を尊重する社会に |
| 公明新聞 | (主張)核のない世界へ 首相は非核三原則の堅持明言を |
追いかけ中の主題
| 主題 | これまで | この日 | 通算 | この日の【賛】と【注】 |
|---|---|---|---|---|
| 民事訴訟法の見直し | 9/10 朝日(見出し)、9/12 産経 | 読売 | 三本目 | — |
| 日本学術会議の法人化 | 9/11 東京 | 日経 | 二本目 | — |
| 中国の経済 | 9/23 朝日・東京 | 毎日 | 三本目 | — |
| 衆院の定数削減 | 9/22 毎日(見出し) | 東京 | 二本目 | — |
この日の主題は、論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている主題に入らないため、点は置かない。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。
一秘密と安全保障——読売と日経は理由を認めて行き過ぎを戒め、朝日は理由を認めなかった
読売は、法制審議会に諮問された民事訴訟法の見直しを書いた。民事裁判では、当事者が自分で証拠を集めて主張を立証する。見直しは、証拠を集めやすくして審理を速めるのが目的で、読売はそこに賛成した。法制審は、原告と被告の双方に、証拠を裁判以外の目的で第三者に公開することを禁じる規定も議論する。
読売は、個人のプライバシーや企業の営業秘密が漏れるようでは安心して証拠を出せないとして、制限の「趣旨は理解できる」と書いた。しかし、公益性の高い情報まで伏せられては、憲法が保障する裁判の公開原則に反する恐れがある、と続けた。例に挙げたのは、検事の取り調べの違法性が争われた民事裁判である。国が証拠として出した取り調べの映像が広く報道され、捜査の実態が分かった。検察の捜査手法に批判が集まった際、国は、映像を第三者に提供しないと原告側に約束させようとしたことがある、と読売は書く。
「証拠の外部公開を制限する制度が、不都合な事実を隠す目的で使われることがあってはならない。」
読売新聞
9月12日の産経は、諮問の前に同じ見直しを書き、証拠の目的外使用を制限する議論は慎重にと求めて、改革が「新たな秘密の壁」を築いては本末転倒だと書いていた。
日経は、日本学術会議が10月に国の機関から特殊法人に移ることを書いた。新しい組織が将来の改選に向けて検討している案は、会員の要件の一つに、安全保障上の懸念がない者であることを挙げている。
「懸念は理解できるが、過度な審査が異論を封じる手段になることは許されない。」
日本経済新聞
安全保障の懸念を問う要件は、9月11日に東京が書いている。東京は、「安全保障に係る懸念」という曖昧な要件は政府に批判的な研究者の排除に使われかねず、「学問の自由」とは到底相いれないと退けた。
朝日は、トランプ米大統領がCNNなどメディア3社を「フェイクニュース」と決めつけ、ホワイトハウスの取材から排除すると表明したことを書いた。報道内容への不満を理由に、報道機関そのものを締め出した、と朝日は書く。朝日は、「機密を報じた」という主張も排除を正当化する理由にはならないとし、1971年のペンタゴン・ペーパーズ事件で、国防総省の秘密文書の掲載差し止めを最高裁が認めなかったことを挙げた。
「誰に取材させ、何を国民に見せるかを、権力の側に選ばせてはならない。」
朝日新聞
読売と日経は、伏せる理由、外す理由をいったん認め、その行き過ぎを戒めた。朝日は、外す理由そのものを認めなかった。それでも三紙が戒めたものは同じ形をしている。秘密や安全保障という理由が、別の目的——不都合な事実を隠すこと、異論を封じること、取材する側を選ぶこと——の道具になることである。
二男女の平等——朝日は女性の数を、日経は制度を、赤旗は産む・産まないの選択を
朝日と日経は、世界経済フォーラムの男女格差の報告を書いた。日本は145カ国中117位で、主要7カ国(G7)では最下位だった。初の女性首相の誕生を、二紙は逆の向きから書いた。
「日本に初めて女性首相が誕生したとはいえ、男女格差が是正されたとの評価を期待するのは早計だ。」
朝日新聞
「男性中心の政治の世界で高市早苗首相が「ガラスの天井」を破った意義は大きい。」
日本経済新聞
朝日は、首相の誕生を差し引いて数字を見た。報告書は首相の就任を「歴史的な出来事」と評価したが、政治分野の達成率は10.5%にすぎない。今年2月の衆院選で女性当選者の割合は15.7%から14.6%に下がり、閣僚は内閣改造後も首相を除けば18人中2人にとどまる、と朝日は書く。日経は、首相に託した。後に続く女性たちがあらゆる分野で活躍できる社会の実現に向け、リーダーシップを発揮してほしい、と書いた。
二紙は、家事と育児の偏りでもそろった。朝日は、6歳未満の子を持つ家庭で家事や育児に費やす時間が、妻は1日7時間28分、夫は1時間54分だと書いた。日経は、性別役割分業意識が根強く、育児や家事の負担が女性に偏り、それが就業の継続や昇進を阻んでいると書いた。
分かれたのは手立てである。朝日は、欧州連合(EU)が2022年に上場企業の役員の少なくとも33%を女性にするよう義務づけ、違反すれば制裁もありうることを挙げた。
「政党や企業の自主的な努力だけで改善しなければ、クオータ制も含め、より実効性のある方策を検討する必要がある。」
朝日新聞
日経は、クオータ制に触れなかった。挙げたのは、多様な生き方を制約する制度の見直しである。高市首相が山下貴司法相に旧姓使用の拡大などの基盤整備を指示したことを書いたうえで、選択的夫婦別姓を求める声は「切実だ」と書き、改革を急ぎたいと結んだ。朝日は夫婦別姓に触れていない。
同じ日、赤旗は、9月28日の国際セーフ・アボーション・デー(安全な妊娠中絶の権利の日)を書いた。日本では先の国会の法改正で、出産費用の全額を公的保険で賄う方向にかじを切ったが、中絶費用には十分な支援がない、と赤旗は書く。中絶費用は妊娠初期で7万〜10万円程度、中期では40万〜60万円程度で、配偶者の同意の要件も残る。赤旗は、政府は「少子化対策」として健康な子どもを産むことには積極的だと書き、高市政権の「女性版骨太の方針2026」が、受胎前ケアの教育を位置づけたことを挙げた。
「ジェンダー平等の核心にはリプロダクティブ・ヘルス&ライツがあります。産むことも産まないことも尊重する政治に転換していきましょう。」
しんぶん赤旗
朝日は女性の数を決まりで確保する手を、日経は一人ひとりの生き方を縛る決まりを外す手を挙げた。赤旗は、産むか産まないかを選ぶことを妨げる費用と同意の壁を挙げた。
三追いかけている主題から
中国の経済は、毎日で三本目になった。9月23日、朝日は中国の輸出の拡大を、不動産不況で国内消費がさえない裏側として書き、東京は、市場の大きさと開発の速さの表れとして書いた。この日の毎日は、国の計画と補助金から書いた。習近平政権は2015年に掲げた国家計画の下で国有企業などに巨額の補助金を注ぎ込み、内需を上回る過剰な生産のはけ口は輸出に向かった、と毎日は書く。
毎日が問題にしたのは、その先である。日米欧も対抗して、補助金で自国の産業を支え始めた。毎日は、海外への過度な依存を改めて経済を強じん化する必要があるという主張を、日米欧の当局者に共通したものとして紹介したうえで、こう書いた。
「だが、経済安全保障を隠れみのに保護主義が際限なく広がれば、貿易が落ち込み、世界経済を悪化させるだけだ。」
毎日新聞
理由を紹介したうえで、それが別の目的の隠れみのになることを戒める。一節の読売・日経と同じ形である。毎日の処方は、日本が欧州などと手を携え、過剰な補助金や「経済の武器化」を抑える規律を提唱することである。
9月22日の首相の国連演説を、公明も書いた。9月24日、読売・産経・日経は、演説が国際刑事裁判所(ICC)への支持を示したことを書いた。9月25日の毎日・東京と9月26日の赤旗は、演説が言わなかったことの側から書いた。9月27日の産経は、演説で首相が旧敵国条項の早期削除を訴えたことを「妥当」と書いた。この日の公明は、首相が「核兵器のない世界」への取り組みを主導するとし、「唯一の戦争被爆国であるわが国の使命だ」と述べたことを、まず認めた。
「この認識自体は妥当だろう。しかし、わが国が堅持してきた非核三原則に関する言及がなかった点を見ると、核廃絶への姿勢に疑念を抱かざるを得ない。」
公明新聞
公明は首相に非核三原則の堅持を明言するよう求め、11月に開かれる核兵器禁止条約の再検討会議には、公明党が一貫して求めている日本政府のオブザーバー参加を決断すべきではないかと書いた。公明は、演説が言ったことを「妥当」と認めたうえで、言わなかったことを問うた。
四子供を書いた二本——読売は衝撃をやわらげる工夫を、産経は宿題を減らす流れに歯止めを
読売は、戦争資料の展示を書いた。戦後81年がたち、体験者から直接話を聞く機会が減るなか、写真や遺品が記憶の継承に果たす役割は増す。ただ、悲惨な資料に強いショックを受ける子供も少なくない。広島平和記念資料館は2028年度に小中学生向けの展示スペースを設け、悲惨な写真などのコーナーの手前に「この先には、傷つき苦しむ人の写真や絵があります」といった注意書きを掲げる予定だという。読売は、ありのままの資料を見て考えてもらうのが本来は望ましいとしたうえで、こう書いた。
「だが、強い恐怖や悲しみから、子供たちが「戦争に関する資料は見たくない」と思うようになっては元も子もない。」
読売新聞
産経は、家庭学習の減少を書いた。全国学力テストの調査で、塾などを含めて平日に学校以外で1日1時間以上勉強する割合は、小6が50.3%、中3が61.7%で、5年前よりいずれも10ポイント以上減った。産経が気にしたのは、宿題を減らしたり、なくしたりする学校が増えていることである。従来型の宿題はかえって学習意欲を失わせるとの意見もある、と受けたうえで、こう書いた。
「だが、塾などには行かず、家庭学習は宿題が中心という子供もいるだろう。宿題をなくした結果、ますます勉強机に向かわなくならないか。」
産経新聞
二紙とも、子供が離れていくことを心配した。読売は戦争の資料から、産経は勉強机から。そのうえで読売は、子供が受ける衝撃をやわらげる工夫を求め、産経は、宿題の出し方の工夫は求めつつ、宿題を減らす流れに歯止めをかけた。
この日の一本
東京新聞「選挙制度改革を考える 民意切り捨て許さない」を採る。
東京は、80年前の1946年4月の衆院選から書き起こした。日本の女性が初めて参政権を行使し、39人の女性国会議員が生まれた選挙である。この選挙は「大選挙区制限連記制」という特異な制度で行われ、有権者は定数に応じて2〜3票を投じた。次の衆院選から中選挙区制に戻り、女性議員も激減した。
10月5日召集予定の臨時国会では、日本維新の会が自民党に連立参加の条件として実現を求めた衆院定数削減法案が焦点になる。継続審議になっている法案は、施行後1年以内に与野党の議論がまとまらなければ、比例定数を自動的に45削減する。比例の割合は、いまの約38%から約31%に落ちる。
「本紙が今年2月の衆院選結果を基に試算したところ、与党の議席占有率は75%から80%超に上昇。」
東京新聞
東京はこれを、戦時中に東条英機内閣の戦争遂行に賛同する議員が8割以上に達した「翼賛選挙」に匹敵する民意の偏りを招く恐れがある、と書いた。
東京の案は、定数を減らすのではなく、選挙区を都道府県単位などに広げて定数を複数とし、比例代表かそれに近い投票方法にすることである。そうすれば小選挙区制に起因する弊害が減り、1票の格差も小さくできる、と書く。
「国会議員自ら身を削る必要があるというなら、1人あたり月100万円の調査研究広報滞在費や年315億円余りの政党交付金の削減にまず手を付けるべきです。」
東京新聞
9月22日の毎日も、「衆院の選挙制度改革 定数削減ありきは通じぬ」の見出しで書いている。前日の本連載は、連立に加わった維新について、読売は主張を押し通すことを戒め、赤旗は主張を引っ込めたことを責めた、と読んだ。東京が書いたのは、維新が連立参加の条件として実現を求めた、もう一つの主張である。
二節で朝日は、今年2月の衆院選で女性当選者の割合が下がったと書いた。東京が書き起こしたのは、女性議員の数が選挙の仕組みとともに動いた80年前である。選挙の仕組みは、誰の票が議席になるかを決める。この一本を採るのは、定数の数字の向こうにそれを見せたからである。
出典
各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。
- 朝日新聞 報道と権力/男女の格差
- 毎日新聞 台頭する国家資本主義
- 読売新聞 民事裁判/戦争資料の展示(URL中の数字は前日の日付だが、掲載は9月28日)
- 産経新聞 家庭学習の減少/「魅了ギョ」計画
- 東京新聞 選挙制度改革を考える 民意切り捨て許さない
- 日本経済新聞 学術会議は地球課題に針路示す重責担え/男女平等の社会へ停滞打破を(ウェブ配信は前日9月27日19時。紙面掲載は9月28日朝刊)
- しんぶん赤旗 主張/安全な中絶の日
- 公明新聞「(主張)核のない世界へ 首相は非核三原則の堅持明言を」2026年9月28日付2面(電子版より)
前日までの社説への言及は、8月31日から9月27日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。
本サイトの権利の扱いについてはプロジェクト:著作権をご覧ください。