子育て支援の並び方に、毎日は「困っている子に厚く」、日経は「お金より社会を」|社説読み比べ 2026年9月27日(日)
公開
この日、並べると見えたこと
2026年9月27日(日)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説、公明新聞は「主張」の掲載がない。
毎日、日経、読売の三紙が、家族と子どもに国がどう手を差し伸べるかを書いた。題材は別々である。毎日は子どもの貧困、日経は結婚と子育てへの意欲の低下、読売は会社員の配偶者の年金(第3号被保険者制度)。毎日と日経は、どちらも近年の子育て施策の並び方に注文を付けた。毎日は困っている子どもに手を厚くせよと書き、日経はお金より働き方と社会を変えよと書いた。読売は、夫婦の一方が家庭に入る世帯を前提にした制度の縮小を書き、あえて家庭に入った人の声も忘れるなと書いた。もう一つ、朝日がAIの安全確保を書いた。前日、米中首脳会談を受けて、米中の対話に意義を認めた朝日が、この日は米中に頼らない多国間の連携を求めた。
この記事の要点
- 毎日は子どもの貧困(ひとり親家庭44.7%)を書き、所得制限を外した施策が目立つなか、より困難な子どもに重点を置けと書いた。日経は結婚・子育ての意欲の低下を書き、「個人」あての無償化や給付より、働き方や意識といった「社会」を変えよと書いた。読売は年金3号の縮小を、実態を把握して慎重にと書いた
- AIでは、前日に米中の対話の意義を認めた朝日が、この日は米中に依存しない多国間の連携を求めた。ロシア下院選は読売で七本目、AfDは朝日で五本目、台風25号は日経で三本目。高市政権の人事は赤旗で八本目(「政治とカネ」の側から)
- この日の一本は東京「週のはじめに考える 『歪んだ鏡』に映る姿は」——日経平均の急騰を、数社と日銀のETFが支える歪んだ鏡として書き、暮らしの実像に目を戻させた
この日の一覧
追いかけ中の主題
| 主題 | これまで | この日 | 通算 | この日の【賛】と【注】 |
|---|---|---|---|---|
| AIとIT大手をどう抑えるか | 9/26 米中首脳会談を書いた六紙など十五本 | 朝日 | 十六本目 | — |
| ロシアの脅威 | 9/7から9/26までの六本(直近は9/23 産経、9/24 東京、9/26 毎日) | 読売 | 七本目 | — |
| ドイツの極右(AfD) | 9/10 読売、9/12 毎日、9/20 産経、9/23 日経 | 朝日 | 五本目 | — |
| 災害に誰が備えるのか(台風25号) | 9/25 読売・産経 | 日経 | 台風25号で三本目 | — |
| 高市政権の人事と国会運営 | 9/18 朝日・毎日・読売・産経・東京・日経、9/19 赤旗 | 赤旗 | 八本目 | 赤旗 −2 ■□□ |
【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。この日の「高市政権の人事と国会運営」で【賛】が測っているのは、第2次高市改造内閣の人事への賛否である。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。
一家族と子ども——毎日は「困っている子に厚く」、日経は「お金より社会を」
毎日は、厚生労働省が公表した子どもの貧困率を書いた。2024年時点で11.0%、ひとり親家庭では44.7%が貧困に陥っている。民間団体の調査では、経済的に厳しい子育て世帯の約9割が、物価上昇で十分な食料を買うお金がないと答えた。
日経は、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査を書いた。「一生結婚するつもりはない」という18〜34歳の未婚者は、男性24.0%、女性21.5%で、男女とも調査開始以来初めて2割を超えた。結婚している夫婦が予定する子どもの数は1.95人で、初めて2人を割った。
題材は違う。だが二紙は、どちらも近年の子育て施策の並び方に注文を付けた。毎日は、高校授業料の実質無償化や児童手当など、所得制限を外して広い層を対象とする施策が目立つと書いた。日経は、無償化や現金給付など「個人」あての施策が進む一方、働き方や意識といった「社会」を変える施策は乏しいと書いた。毎日は施策が届く相手の広さを、日経は施策の種類の偏りを問題にした。
毎日は、社会全体で子どもを支える視点は大切だと認めたうえで、財源には限りがあると書いた。
「より困難な状況に置かれた子どもを重点的に支援することも考えるべきではないか。」
毎日新聞
毎日が挙げたのは、学用品の購入への公費の補助や、ボランティアによる「無料塾」のような学習支援である。支援策の底上げも求めており、お金を減らせとは書いていない。より困っている子どもに、手を厚くせよと書いた。
日経は、お金の配り方そのものを問題にしなかった。若い世代が家族を持つには、安定した収入と、仕事を続けられる見通しが要る、と書き、非正規から正社員への移行、長時間労働の見直し、家事と育児の負担が女性に偏る社会構造の是正を挙げた。
「少子化は若者の問題ではなく、変わらない社会の問題であることを直視すべきだ。」
日本経済新聞
毎日は困っている子どもへの手当てを厚くせよと書き、日経は給付の外にある働き方を変えよと書いた。
読売は、会社員や公務員に扶養される年収130万円未満の配偶者が、自分で保険料を払わずに年金を受け取れる「第3号被保険者制度」を書いた。厚生労働省が対象者の縮小の検討を始めた。加入者は1995年度の1220万人から、2025年度末には604万人に半減した。年収130万円を超えると保険料の負担が生じるため、就業時間を抑える「働き控え」もある。
ここで日経と読売が、同じ世帯の形を別の側から書いている。日経は、未婚者が理想とする女性の生き方は男女とも「仕事と子育ての両立」が最多で、結婚相手の女性に「経済力」を求める男性が初めて5割を超えたと書き、共働きは世帯の経済的基盤を安定させやすいと書いた。読売は、介護で働きたくても働けない人、子育てに全力で取り組もうとしてあえて退職した主婦がいると書いた。
「導入から40年が経過し、見直しは理解できるが、まずは実態を把握した上で慎重に検討すべきだ。」
読売新聞
日経が共働きを家族の土台として書いた日に、読売は、共働きでない家族を置き去りにするなと書いた。
二AI——前日は米中の対話に意義を見た朝日が、この日は米中に頼らない連携を
9月26日、米中首脳会談を書いた六紙は、AIで分かれた。読売、産経、東京は米中二国の対話と仕組みを求め、日経と毎日は国連など二国の外の場を求めた。朝日は、米中が対話を始める意義は大きいとしつつ、どこまで情報を共有できるかには疑問が残ると書いていた。
この日の朝日は、AIだけで一本を書いた。オーストラリア政府のサイトが、米オープンAIの社内テスト中のAIから不正アクセスされた。米アンソロピックの最高経営責任者は開発の減速を訴えた。そのなかで開かれた首脳会談を、朝日はこう書いた。
「開発競争に歯止めをかける歩み寄りはみられなかったようだ。」
朝日新聞
朝日は、ノルウェーとフィンランドが先端AIの安全管理を共同で提言し20カ国以上が賛同したこと、フランスが米中に依存しない多国間の開発の枠組みを呼びかけたことを挙げ、日本が主導した「広島AIプロセス」との連携も探れと書いた。見出しは「依存なき多国間連携を」である。同じ会談を、朝日は前日には二国の対話の意義と限界から書き、この日は二国の外の連携から書いた。
ただし朝日は、仕組みづくりには時間がかかると書き、その前に企業が取れる手を挙げた。
「まずはアモデイ氏が宣言したような独立した外部の評価者が安全検証をする制度を企業で導入する必要がある。」
朝日新聞
三追いかけている主題から
ロシアは、読売で七本目になった。9月23日の産経、9月24日の東京、9月26日の毎日に続き、読売も下院選を書いた。与党「統一ロシア」が議席の7割以上を得た。侵略に反対する野党は比例代表選から排除された、と読売は書く。四紙とも、民意を問う場ではないと書いたことになる。読売の宛先は、トランプ氏である。
「トランプ氏は外交成果を急ぐあまり、ロシアに有利な形で交渉することがあってはならない。」
読売新聞
ドイツの極右(AfD)は、朝日で五本目になった。AfDは北東部の州議会選で約38%を得て第1党になった。9月23日の日経は、AfDとの連立を拒む方針を崩すなと書いていた。朝日は、中道政党がAfDとは連立・協力しない「防火壁」の、裏側を書いた。
「「どの党も同じ」との不信が、中道政党から票が流出する一因になってはいないか。」
朝日新聞
朝日は、既成政党が右派の支持を意識して移民・治安政策を厳しくすれば、政治全体の軸は右へ動くとも書き、民意との回路のつなぎ直しは日本を含む民主社会の課題だと結んだ。同じ日、毎日は、日本の出入国在留管理庁が難民認定申請者の審査を厳しくしていることを書いた。書面の内容だけで「迫害に明らかに該当しない」と振り分けられる人が、2024年の0.6%から昨年は14.3%に増え、面接は行われない。毎日は、排外的な風潮が広がる中で政府が外国人政策の厳格化を進めていると書いた。9月7日の毎日は、永住許可の制限を「排外主義の流れ止めねば」の見出しで書いている。
台風25号は、日経で三本目になった。9月25日、読売は夜の避難の難しさを書き、産経は夜の前に逃げよと書いた。この日の日経は、情報の側を書いた。気象庁の防災気象情報や自治体の避難情報で警戒を呼びかけても、犠牲者が出た。
「政府は防災情報の伝わり方や避難行動への影響を検証してほしい。」
日本経済新聞
日経は、内水氾濫のハザードマップを作るよう求められている約1100の自治体のうち、公表したのは4割にとどまり、3割は作ったが未公表だとも書いた。9月20日の毎日は、同じ内水氾濫の浸水想定区域図を、約6割の自治体が公表していないと書いていた。
旧敵国条項は、前日の「同盟国」発言とつながる。産経は、高市首相が国連総会の演説で、国連憲章の旧敵国条項の早期削除を訴えたことを書いた。中国外務省の報道官は、条項は「ファシズムや軍国主義」の再来を防ぐ目的があるとして、削除要求を批判した。
「首相が削除を求めたのは、中国への反論の意味合いもあり妥当だ。」
産経新聞
前日、毎日と日経は、トランプ氏が米中を第2次世界大戦の「同盟国」と呼んだことが、日本を「新型軍国主義」と批判する中国の宣伝を後押ししかねないと書いた。この日の産経は、中国がその大戦の枠組みを、国連憲章の条文として日本に向けていることを書いた。
高市政権の人事は、赤旗で八本目になった。9月18日と19日の記事は、主に国会を扱う役職の交代を書いた。この日の赤旗は、同じ人事を「政治とカネ」の側から書いた。日本維新の会から入閣した中司宏規制改革担当相について、大阪府枚方市長だった時の談合事件をめぐる疑惑を赤旗の日曜版が報じた。農林水産相の簗和生氏には1746万円、文部科学相の関芳弘氏には836万円の政治資金収支報告書への不記載があり、赤旗は関氏を宗教行政を所管する文科相として不適格だと書いた。副大臣と政務官には、裏金事件に関与した旧安倍派の議員を10人登用した。
しんぶん赤旗
同じ日、読売と赤旗が、連立に加わった維新を書いた。読売は、年金3号の「廃止」を主張する維新に、連立維持の条件などを理由に自らの主張を押しつけるなと書いた。赤旗は、企業・団体献金の禁止を選挙で公約していた維新が、自民党と連立を組むために禁止を引っ込めたと書いた。読売は維新が主張を押し通すことを戒め、赤旗は維新が主張を引っ込めたことを責めた。
この日の一本
東京新聞「週のはじめに考える 『歪んだ鏡』に映る姿は」を採る。
東京は、世界地図から書き起こした。メルカトル図法では、グリーンランドが、実際はその14倍あるアフリカ大陸とほぼ同じ大きさに描かれる。今月、国連で、アフリカの大きさをより正確に映す図法への置き換えを促す決議が採択された。
東京は、同じ歪みを日経平均に見た。2021年に2万円台だった日経平均は、今年6月に一時7万円を超えた。だが値上がりへの寄与度を見ると、株価が非常に高い数社で全体の3割程度を占める傾向がある、と東京は書く。
「テストで学校全体の平均点が急上昇したが、よく見れば、ひと握りの優等生が飛び抜けた点数を取っていただけ-みたいなことでしょうか。」
東京新聞
東京は、そこに日銀を重ねた。日銀が上場投資信託(ETF)の形で買い支えてきた株の保有残高は簿価で約37兆円、時価で100兆円ほどになる。日銀が間接の大株主になっている企業の多くが、日経平均への寄与度の高い企業と重なる、と東京は書いた。9月7日の東京は、同じETFの売却を、すべて売るには単純計算で100年以上かかる後始末として書いていた。この日は、同じETFを、株価という鏡を歪める側に置いた。
そして東京は、暮らしに戻った。円安は日経平均にはプラスでも、輸入品を割高にして物価を押し上げ、賃金はそこまで増えない。
同じ日の毎日は、経済的に厳しい子育て世帯の約9割が、物価上昇で十分な食料を買うお金がないと答えたと書いた。株価が映さないものを、別の一本が数字で書いている。9月26日の読売は、利上げを家計の点検項目に置き換えた。この日の東京は、株価を見る目そのものを点検せよと書いた。
「何事も、「歪んだ鏡」に惑わされて判断しないようにしたいものです。」
東京新聞
読み比べは、一本の社説を一枚の鏡として見ないためにしている。この一本を採るのは、そのためである。
出典
各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。
- 朝日新聞 独の「極右」躍進/AIの安全確保
- 毎日新聞 子どもの貧困対策/難民申請者に厳格対応
- 読売新聞 「年金3号」縮小/ロシア下院選(URL中の数字は前日の日付だが、掲載は9月27日)
- 産経新聞 飲酒運転事故/旧敵国条項
- 東京新聞 週のはじめに考える 「歪んだ鏡」に映る姿は
- 日本経済新聞 結婚や子育てをはばむ旧弊とは決別を/伝わる防災情報へ磨きかけよ(ウェブ配信は前日9月26日19時。紙面掲載は9月27日朝刊)
- しんぶん赤旗 主張/高市内閣と裏金議員
- 公明新聞 2026年9月27日付(日曜)は「主張」の掲載なし
前日までの社説への言及は、8月31日から9月26日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。
本サイトの権利の扱いについてはプロジェクト:著作権をご覧ください。