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社説の読み比べ

同じ米中首脳会談、産経は言葉を見て「避けられた」と書き、朝日と日経は止まった武器売却を見た|社説読み比べ 2026年9月26日(土)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月26日(土)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説の掲載がない。

朝日、毎日、読売、産経、東京、日経の六紙が、24日にワシントンで行われた米中首脳会談を書いた。六紙とも、習近平国家主席が台湾独立に「反対」する立場をトランプ大統領に求めたことを書いている。産経は会談で交わされた言葉を見て、危うい妥協は避けられたと書いた。朝日、東京、日経は、会談の外で止まっている台湾への武器売却を書いた。もう一つ、人工知能(AI)でも分かれた。読売、産経、東京は米中二国の対話と仕組みを求め、日経と毎日は二国だけで決めることの先を見た。

この記事の要点

  • 習氏は米国に、台湾独立を「支持しない」から「反対する」へ踏み込むよう求めた。産経はトランプ氏が応じたとの話は出ていないとして「危うい妥協を避けた」と書き、朝日と日経は、議会の承認後も保留され大幅に先延ばしされている台湾への武器売却に、中国の圧力を見た。宛先は、読売がトランプ氏、毎日が中国、東京が両首脳、朝日・産経・日経は日本にも置いた
  • AIでは、読売・産経・東京が米中二国の対話や通知の仕組みを求め、日経は「両国だけで決めていいはずはない」として国連など多国間の場を求めた。毎日も米中に多国間協調の責務を求めた
  • ロシアの下院選は毎日で六本目、米国産ジャガイモは朝日で四本目、米国のICC制裁と日本は赤旗で九本目。この日の一本は読売「金利上昇と家計」——利上げを、預ける人・借りる人・学ぶ人がそれぞれ点検する項目として並べた

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
米中首脳会談9/21 毎日(会談の前に台湾での譲歩を憂慮)、9/24 読売・日経(同じ懸念)朝日・毎日・読売・産経・東京・日経会談後の六本
AIとIT大手をどう抑えるか9/22 毎日(米中首脳会談に国際ルールの議論を)など九本朝日・毎日・読売・産経・東京・日経十五本目
ロシアの脅威9/7から9/24までの五本(直近は9/23 産経、9/24 東京)毎日六本目
米国産ジャガイモの輸入9/16 東京、9/20 赤旗、9/22 日経朝日四本目
米国のICC制裁と日本9/3 毎日、9/6 東京、9/20 朝日、9/24 読売・産経・日経、9/25 毎日・東京赤旗九本目
アジア大会9/19 毎日・産経・東京産経四本目
インフルエンザの早い流行9/7 東京、9/13 産経、9/16 読売公明四本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一米中首脳会談と台湾——産経は会談の言葉を、三紙は止まっている武器売却を

中国の習近平国家主席が国賓として訪米し、24日にトランプ大統領と会談した。米国はこれまで、台湾独立を「支持しない」という立場をとってきた。習氏は会談で、米国が台湾独立に「反対」する立場を堅持するよう求めた。六紙ともこれを書いている。

会談の前にも、この懸念は書かれていた。9月21日の毎日は、習氏の訪米を前に、台湾問題での米国の譲歩を憂慮した。9月24日の読売と日経は、トランプ氏が台湾などを巡って中国に譲歩する懸念に触れていた。会談が終わって、その懸念をどこに探したかが分かれた。

産経は、会談で交わされた言葉を見た。習氏は「独立反対」を求めたが、トランプ氏が応じたとの話は出ていない、と産経は書く。

「トランプ氏は踏み込んだ発言をせず、危うい妥協を避けたもようだ。」

産経新聞

朝日、東京、日経は、会談の外に目を向けた。朝日は、米国による台湾への140億ドル分の武器売却が、議会の承認後も保留されたままだと書いた。

「中国の圧力が効いているものとみられる。」

朝日新聞

東京も、トランプ氏が台湾への武器売却の承認を保留していると書き、習氏の発言はそれに踏み切らないようけん制する狙いがあると読んだ。日経は、トランプ氏が5月の首脳会談のあと、台湾に武器を売るかどうかを中国との交渉材料だと語ったことを挙げ、それが1982年に米国が台湾にした約束——武器売却で中国と事前に協議しない——に反すると書いた。そして、実際に売却の決定が大幅に先延ばしされていると続けた。

「このまま売却が宙に浮くなら、中国の思うつぼだ。」

日本経済新聞

産経は、トランプ氏が「反対」に応じたとの話が出ていないことを見た。朝日と日経は、保留されたままの売却に中国の圧力を見た。

読売は、米国側はトランプ氏の台湾に関する発言を発表していない、と書き、5月の「取引材料」発言を挙げて、トランプ氏に釘を刺した。

「トランプ氏は安易な言動で台湾海峡情勢を不安定化させるようなことがないようにしてほしい。」

読売新聞

宛先も分かれた。読売はトランプ氏に宛て、東京は両首脳に対話による緊張緩和を求めた。毎日は、台湾で中国の主張が際立ったと書いたうえで、宛先を中国に置いた。

「軍事的な威圧で緊張を高めているのは中国である。」

毎日新聞

朝日、産経、日経は、宛先を日本にも置いた。朝日は、隣国関係まで米国に委ねては日本外交の選択肢を狭めると書き、産経は、高市首相に米国との緊密な関係の維持を求め、日経は、米中双方に言うべきことを言うのは首相の責任だと書いた。

六紙のうち五紙は、トランプ氏が歓迎式典で、米中は第2次世界大戦で同盟国だったと述べたことも書いた。読売、産経、日経は、当時の同盟の相手は中華民国で、いまの中華人民共和国ではないと正した。毎日と日経は、この発言が日本を「新型軍国主義」と批判する中国の宣伝を後押ししかねないと書き、朝日は、戦勝国だったことを根拠に「正義」の側にあるとする習政権の論法を受け入れた面があると書いた。東京はこの発言に触れていない。

二AI——二国に仕組みを求めた紙と、二国だけで決めるなと書いた紙

六紙とも、会談でAIが話し合われたことを書いた。習氏はAIを「人間の管理」の下に置く必要を述べ、トランプ氏は規制は不要との立場をとっている。

読売、産経、東京は、米中の二国に求めた。

「AIの悪用や暴走を防ぐためには、米中が対話や協力を進めることが欠かせない。」

読売新聞

産経は、国家安全保障上の問題が起きた際に米中双方が通知し合う制度の新設などを求めた。東京は、5月の前回の首脳会談で合意した政府間対話の枠組みづくりも進んでいないと書いた。

「AIの安全性確保には、開発をリードする両国が率先して危険性に目を向けるべきではないか。」

東京新聞

朝日は、事前の閣僚級協議で米国側が、国家安全保障にかかわる事態を招いた場合に互いに知らせる仕組みを提案したと書き、米中が対話を始める意義は大きいとしつつ、どこまで情報を共有できるかには疑問が残ると書いた。

日経は、二国に任せなかった。

「人類全体の課題であるAIのあり方を両国だけで決めていいはずはない。」

日本経済新聞

日経は、国連など多国間の枠組みで議論するよう求めた。毎日も、国連で国際的な監視体制の議論が始まっていることを書き、米中には多国間協調を実現する責務があると書いた。9月22日の毎日は、米中が足並みをそろえない限り開発のペースを落とせないとして、この首脳会談に国際ルールづくりの議論を求めていた。この日の毎日は、実効性のある対策を講じられるかは不透明だと書いた。

同じ会談で話し合われたAIを、読売、産経、東京は二国の協力の入口として書き、日経と毎日は、二国の外の場へ持ち出すべきものとして書いた。

三追いかけている主題から

ロシアは、毎日で六本目になった。9月23日の産経と9月24日の東京に続き、毎日もウクライナ侵攻後初めての下院選を書いた。与党「統一ロシア」が4分の3以上の議席を得た。早期の戦争終結を訴えた野党「ヤブロコ」は比例代表から排除された、と毎日は書く。

「異論を排除して選挙の勝利を演出したところで侵略の正当化にはならない。」

毎日新聞

9月23日から、三紙が同じ下院選を、民意を問う場ではないと書いたことになる。9月24日の東京は、英国防省情報機関によるとロシア軍の死傷者は約150万人と書いた。この日の毎日は、推計約140万人と書いている。

米国産ジャガイモの輸入は、朝日で四本目になった。朝日は、特定された病害虫21種のうち目視での検出が難しい2種の線虫が特に警戒されていると書き、国内生産の約8割を占める北海道の懸念を書いた。9月22日の日経と同じく、科学的な根拠に基づく厳格な判断を求めている。

「通商交渉の取引材料に使うべきではない。」

朝日新聞

同じ日、日経と読売は、台湾への武器売却を「交渉材料」「取引材料」と語ったトランプ氏の発言を書いた。朝日は、ジャガイモの防疫を同じ取引の場に載せるなと書いた。

米国のICC制裁と日本は、赤旗で九本目になった。前日の毎日と東京に続き、赤旗も、高市首相が国連演説で「法の支配」を強調しながら、米国による赤根智子ICC所長らへの制裁を批判しなかったことを書いた。首相が会談でICCを巡って率直なやりとりをしたと述べたことについては、制裁に言及したかどうかさえ明かさなかった、と書く。演説がロシアのウクライナ侵略を批判しながら米国のイラン攻撃に触れなかったことも、前日の毎日と同じく挙げた。前日の二紙は、首相に米国への直言や説得を求めた。赤旗は、宛先を日米同盟そのものに置いた。

「平和憲法に基づく自主・自立の外交への転換が切実に求められます。」

しんぶん赤旗

アジア大会は、産経で四本目になった。9月19日の毎日、産経、東京は運営と経費を書いた。この日の産経は、競泳の大橋信の世界新記録と、卓球男子団体が中国を破った60年ぶりの金メダルを書き、地上波の中継がなかった競技があったことを惜しんだ。

インフルエンザの早い流行は、公明で四本目になった。9月7日の東京、9月13日の産経、9月16日の読売に続く。公明は、直近1週間の患者数が1医療機関当たり5.54人に上り、2023年を除き過去10年で最も早いペースだと書いた。東京都は17日に注意報を出している。公明は予防接種を勧め、そのうえで治療薬の安定供給を政府に求めた。

この日の一本

読売新聞「金利上昇と家計 リスクを点検するべき局面だ」を採る。

日銀は政策金利を約31年ぶりの1.25%程度に引き上げ、長期金利は25日に一時3.115%に上がった。読売は、これを家計の側から書いた。銀行は普通預金の金利を相次いで0.5%に引き上げる予定で、今回の利上げで1世帯あたり年6000円の所得の押し上げ効果があるという。

読売は、恩恵とリスクを同じ一本に並べた。預金の側では、大手企業が個人向けに出す社債は年5%近いリターンを見込めるが、個人向け国債のような元本保証はない、と書き、金融教育の啓発を金融庁に求めた。借りる側では、住宅ローンの8割を占める変動金利型は日銀の政策金利に連動し、35年などの固定金利型は長期金利との関係が強い、と書いた。東京都心で「億ション」が常態化し、返済期間50年の住宅ローンを組む人が増えていることも挙げた。

「50年もの長期の市場変動の予測は難しいことに、留意する必要がある。」

読売新聞

そして、大学生などが借りる奨学金にも、利率が変動するタイプがあると書いた。

読売は、利上げを、預ける人、借りる人、学ぶ人のそれぞれが点検する項目として書いた。9月10日の公明は、奨学金の金利上昇で返済総額が増える不安を書いた。9月21日の読売は、基準地価を受けて企業と家計にリスクの点検を求めていた。この日は、その点検の中身を一つずつ挙げた。長期金利の上昇を、この連載は9月2日から政府と日銀への警鐘として追ってきた。この一本は、同じ金利を、暮らしの側の手元の数字に置き換えた。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月25日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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