言葉の相談 0120-03-4946
社説の読み比べ

同じ国連演説、前日の三紙は「示した」と書き、この日の二紙は「足りぬ」と書いた|社説読み比べ 2026年9月25日(金)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月25日(金)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は14本。

毎日と東京が、高市首相の国連演説と国際刑事裁判所(ICC)を書いた。前日には読売、産経、日経が、同じ首脳会談と同じ演説を書いている。首相が会談のあとに語った「率直なやりとり」を、前日の読売と日経は首相がしたこととして書き、この日の毎日と東京は、中身が見えないこととして書いた。もう一つ、読売と産経が台風25号の豪雨を書いた。二紙とも、亡くなった人の多くが土砂崩れに巻き込まれたことを書いている。読売は夜の避難の難しさを書き、産経は夜になる前に逃げよと書いた。

この記事の要点

  • 毎日と東京は、首相が国連演説で米国のICC制裁に触れなかったことを書いた。前日の三紙が書いた同じ演説と同じ会見を、この日の二紙は言わなかったことの側から書いた。毎日は米国のイラン攻撃に触れないことも「二重基準」と受け取られかねないと書き、東京は9月21日の「無意味に思えて」から「粘り強く説得を続けるほかに道はない」へ書き方を変えた
  • 台風25号で、読売と産経はともに土砂崩れの犠牲を書いた。読売は避難所の遠さと夜間の避難の難しさを書いて自治体と住民それぞれに方法を考えよと求め、産経は「事前の避難が鉄則」としてレベル3でも夜に大雨が予想されれば早めにと書いた
  • ミンダナオの和平は東京で三紙目、無人偵察機の墜落は読売で二本目、米国にどう向き合うかは日経(グリーンランド)で六本目。この日の一本は赤旗「介護の基準緩和」——国の基準案を当てはめ、全国の自治体の6割近くが「特定地域」に指定されうることを数字で示した

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
米国のICC制裁と日本9/3 毎日、9/6 東京、9/20 朝日、9/24 読売・産経・日経毎日・東京八本目
災害に誰が備えるのか9/1から9/20までの十七本(直近は9/19 公明、9/20 毎日)読売・産経十九本目
ミンダナオの和平9/22 読売、9/24 朝日東京三本目
無人偵察機の墜落9/17 日経読売二本目
米国にどう向き合うか9/21 朝日・毎日・東京、9/22 東京、9/23 東京日経六本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一同じ国連演説——前日の三紙は示したと書き、この日の二紙は足りないと書いた

高市首相は国連総会の一般討論演説で「法の支配」を訴え、ICCを含む国際裁判所を一貫して支持してきたと述べた。トランプ大統領は22日の演説でICCを批判し、加盟国に脱退を求めている。毎日と東京は、首相が演説で、米国による赤根智子ICC所長らへの制裁に触れなかったことを書いた。

「日本が米国への直言をちゅうちょするようでは、ICC支持を打ち出しても説得力を欠く。」

毎日新聞

「米国を刺激することを避けたのだろうが、日本の立場を明確に表明すべきではなかったか。」

東京新聞

首相は演説に先立つトランプ氏との会談について、ICCを巡って率直なやりとりをしたと記者会見で述べた。前日の読売は、首相が会見でそれを明らかにしたと書き、日経は、首相が制裁の問題を自ら提起して率直なやりとりをしたと書いた。この日の二紙は、同じ一言の先を見た。東京は、首相が具体的な内容を明らかにしなかったと書き、毎日は、首相がトランプ氏をどこまで説得したかは判然としないと書いた。

「赤根氏らへの制裁撤回を米国に直接求める機会を生かせなかったのは残念極まりない。」

東京新聞

前日の三紙は、首相が演説でICCへの支持を示したことを書いた。この日の二紙は、同じ演説を、言わなかったことの側から書いた。前日の読売の見出しは「首相の国連外交 日本の立場を世界に示した」、この日の東京の見出しは「ICCと日米 首相演説に足りぬもの」である。

毎日は、ICCの外にも言わなかったことを数えた。首相は演説でロシアのウクライナ侵攻を一方的な現状変更の試みだと批判したが、米国のイラン攻撃には触れなかった、と毎日は書く。

「これでは、法の支配の尊重を訴えたところで、各国に二重基準と受け取られかねない。」

毎日新聞

東京は、この主題で書き方を変えた。9月21日の東京は、トランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味に思えてならないと書き、目を11月の中間選挙に向けていた。この日は、理解させるのが困難だとしても、こう書いた。

「粘り強く説得を続けるほかに道はない。」

東京新聞

東京は同じ一本の中で、欧州などと連携してトランプ氏の暴走に歯止めをかけよとも書いた。前日の読売は米国に説き続けよと書き、日経は欧州など同志国と打開策を練れと書いた。この日の東京は、その二つの宛先を一本で両方書いた。

二台風25号——読売は逃げられなかった夜を、産経は夜の前に逃げよと

大型で強い台風25号が関東に接近し、千葉県と神奈川県で土砂崩れや冠水、河川の氾濫が相次いだ。産経によると死者・行方不明者は計10人を超えた。

二紙とも、亡くなった人の多くが土砂崩れに巻き込まれたことを書いた。分かれたのは、そこから何を書いたかである。

読売は、避難が進まなかったことを書いた。千葉、神奈川両県には広い範囲にレベル4の土砂災害危険警報が出たが、住民の避難は低調だった。避難所が自宅から遠く、車で向かおうにも道路の冠水に阻まれた例が多かったとみられ、土砂崩れで亡くなった人の多くは高齢者だった、と読売は書く。

「雨が激しくなった夜間に避難すること自体が、容易ではなかったはずだ。」

読売新聞

自治体はホームページやSNS、防災行政無線で避難を呼びかけたが、担当者からは限界を感じるという声も聞かれる、と読売は続けた。そのうえで、地域の実情を踏まえた自治体の検討と、住民自身が避難の方法を考えておくことの両方を求め、これまでの被害想定の再点検と排水設備の強化を求めた。

産経は、いつ逃げるかを書いた。

「命を守るには事前の避難が鉄則だ。」

産経新聞

レベル4の警報が出たら直ちに避難し、レベル3の段階でも、夜にかけて大雨が予想されるなら早めに避難したい、と産経は書く。在宅避難をするなら崖から離れた部屋や2階以上へ移れ、とも書いた。

「これまでは大丈夫だったと油断すると命取りになりかねない。」

産経新聞

同じ夜を、読売は逃げられなかった理由として書き、産経は逃げる時刻を早める理由として書いた。読売は、避難が難しかった人の側から、自治体と住民がそれぞれ考えよと書いた。産経は、一人ひとりが警報の段階ごとにどう動くかを書き、そのうえで自治体に内水氾濫のハザードマップ作りを急げと求めた。

この主題で、9月1日の産経は、自分の命は自分で守る覚悟を書き、避難所へ行くこと自体が危険な場合に備えて自宅の上階など最も安全な場所を把握しておけと書いていた。この日も2階以上へ移れと書いた。9月2日の読売は、避難所の運営は国の主導でと書いていた。この日は、その避難所までの遠さを書いた。

三追いかけている主題から

ミンダナオの和平は、東京で三紙目になった。9月22日の読売と9月24日の朝日に続き、東京は、イスラム自治地域で初めて行われた議会選挙の結果を書いた。暫定自治政府の現首相が率いる党が第1党になったが、前の首相が率いる党とは1議席差で、どちらも過半数に届かなかった。東京は、日本の国際協力機構(JICA)が1990年代から総額600億円を超える支援をしてきたことと、2011年に日本の仲介で双方のトップの初の直接会談が千葉県で実現したことを書いた。朝日が数えた日本の支援と仲介を、東京も数えている。そのうえで東京は、選挙の先の危うさを書いた。

「議会選投票日には両党支持者間の銃撃戦で死傷者も出ており、政情は予断を許さない。」

東京新聞

無人偵察機の墜落は、読売で二本目になった。9月17日の日経は、鳥取県沖の公海上で航空自衛隊のグローバルホークが墜落したことを受け、原因の究明を急げと書いた。この日の読売は、原因とともに、自治体への説明を求めた。鳥取県知事は注意すべき海域について防衛省から話が来ないと不快感を示し、基地のある青森県三沢市は原因が分かるまで飛行を止めるよう求めた、と読売は書く。

「防衛政策の遂行に当たっては、自治体や住民の理解が何より欠かせない。」

読売新聞

米国にどう向き合うかは、日経で六本目になった。米国、デンマーク、デンマークの自治領グリーンランドの3首脳が新たな防衛協定に合意し、デンマークの主権とグリーンランドの領土の保全を確かめた。日経は、米国が領有をひとまず断念したのを当然とし、米軍基地を2つ増やすことは理にかなうと書いた。そのうえで、宛先を米国に置いた。

「米欧の協調が世界の安定につながることを米国は肝に銘ずるべきだ。」

日本経済新聞

この日の一本

しんぶん赤旗「介護の基準緩和 崩壊を追認し格差を持ち込む」を採る。

先の国会で、高齢者人口が減る地域などを「特定地域」とし、介護サービスの人員配置の基準を緩め、在宅サービスを保険給付から自治体の事業に移せるようにする法改正が行われた。来年4月の実施に向け、厚生労働省は審議会に指定の基準案を示している。

赤旗は、その基準案に当てはまる自治体を数えた。過疎地域などと、75歳以上の人口が少ない地域で912自治体を厚労省が公表しており、訪問介護の事業所が「ゼロ」か「残り1」の自治体は赤旗の調べで401ある。重複を除いて1千以上、全国の自治体の6割近くが指定の可能性がある、と赤旗は書く。

指定されても、制度の上では今の介護サービスは残る。赤旗が問題にしたのは、その先である。担い手が足りないなかで、少ない人数で回せる「特定地域サービス」への切り替えが進むおそれがある、と赤旗は書いた。

「社会保険でありながら地域格差が持ち込まれます。」

しんぶん赤旗

赤旗は、制度の上で残るものではなく、担い手不足の下で実際に進む切り替えを問題にした。そして、国の基準案をそのまま当てはめて、対象が全国の6割近くに及びうることを数字で示した。9月21日の赤旗は、敬老の日に高齢者の負担増と給付削減を書いている。この日は、同じ介護の給付が地域によって変わる仕組みを書いた。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月24日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


本サイトの権利の扱いについてはプロジェクト:著作権をご覧ください。

0120-03-4946 ゼロサンよく読む 0120-03-4946 ゼロサンよく読む