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社説の読み比べ

同じ日米首脳会談、ICCの宛先が三つに分かれた|社説読み比べ 2026年9月24日(木)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月24日(木)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説の掲載がない。

読売、産経、日経の三紙が、高市首相とトランプ大統領の会談を書いた。三紙とも、国際刑事裁判所(ICC)に対するトランプ政権の姿勢に触れている。三紙はそろって、首相が国連演説でICCへの支持を示したことを書いたが、その先で日本が誰に何をするかは三つに分かれた。読売は米国に説き続けよと書き、日経は欧州など同志国と打開策を練れと書き、産経は話し合いを促せと書いた。もう一つ、朝日と赤旗が、東南アジアで武力に頼らずに築かれた平和を書いた。朝日は日本がしてきたことを数え、赤旗は日本がしてこなかったことを書いた。

この記事の要点

  • 同じ日米首脳会談を書いた三紙は、ICCについて日本の宛先が三つに分かれた——読売は米国に「粘り強く説き続けていくべきだ」、日経は同盟と法の支配を引き合うものとして書き欧州など同志国と打開策を、産経は米国の反発の理由を書いて「話し合いを促す」。産経は、この主題の六本のなかで初めて日本を仲立ちの位置に置いた
  • 朝日と赤旗は、東南アジアを力ではなく対話で平和を築いた例として書いた——朝日は日本がしてきた支援と仲介を数えて関与を続けよと、赤旗は日本の政府がしてこなかった外交と平和構築への転換を求めた
  • ロシアは東京で五本目、北朝鮮は公明で二本目、ふるさと納税は日経で二本目。この日の一本は毎日「SNSと地方選挙」——法律ができたことではなく、法律に罰則がなく事業者任せであることを問題にし、選挙期間中の収益化停止という仕組みの案まで書いた

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
米国のICC制裁と日本9/3 毎日、9/6 東京、9/20 朝日読売・産経・日経六本目
ロシアの脅威9/7 産経、9/10 朝日・産経、9/23 産経東京五本目
投票の方法9/5 公明、9/10 読売、9/11 読売、9/12 毎日・日経、9/20 産経毎日七本目
ミンダナオの和平9/22 読売朝日二本目
北朝鮮の核・ミサイル9/22 東京公明二本目
ふるさと納税9/21 朝日日経二本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一同じ会談、ICCの置き場所——読売は米国へ、日経は同志国へ、産経は仲立ちへ

高市首相は国連総会に出席するため訪米し、トランプ大統領と会談した。読売、産経、日経の三紙は、24日の米中首脳会談を前に日米の首脳が中国を巡って意思疎通したことに、そろって意義を認めた。読売と日経は、トランプ氏が台湾などを巡って中国に譲歩する懸念にも触れている。

読売と日経は、トランプ政権がICCの赤根智子所長を制裁対象にした問題を書き、産経は、トランプ政権がICCの解体を唱えていることを書いた。首相は会談でICCを巡って議論し、国連の一般討論演説でICCへの支持を表明した。9月20日の朝日は、国連演説でICCの意義を語れと求めていた。その演説は行われ、三紙はそれを書いた。分かれたのは、その先である。

読売は、宛先を米国に置いた。

「日本政府は今後も、様々なレベルで米国に対し、法の支配やICCの意義を粘り強く説き続けていくべきだ。」

読売新聞

日本政府が人選して送り込んだ赤根氏を守り抜くことも忘れてはならない、と読売は続けた。

日経は、見出しに同盟と法の支配を並べ、二つを引き合うものとして書いた。中国への抑止に米国との同盟の強化は欠かせないとしたうえで、こう書く。

「だからといって、戦後長らく日本に平和と繁栄をもたらしてきた法の支配をないがしろにしていいはずがない。」

日本経済新聞

日経は、同盟国の頭越しに強権国家に近づく米国にどう向き合うかで日本が苦慮する場面は今後も続き、ICCはその一例に過ぎないと見た。そのうえで宛先を米国の外に置き、政府は欧州など同志国とも連携して打開策を練らなければならない、と結んだ。

産経は、米国の側の理由を書いた。

「トランプ政権は米兵へのICCの捜査を主権侵害とみて反発している。日本政府は話し合いを促すことが重要だ。」

産経新聞

読売は米国に説けと書き、日経は米国以外と組めと書き、産経は米国とICCのあいだに立てと書いた。本連載が追ってきたこの主題では、9月3日の毎日が同盟国として米国に直言せよと書き、9月6日の東京は制裁に抗議すらできない日本を書き、9月20日の朝日は国連総会に集まる国際社会に向けて語れと書いた。この日の読売は毎日と同じく米国に言う側に、日経は朝日と同じく米国の外に言う側に並んだ。産経の「話し合いを促す」は、六本のなかで初めて、日本を仲立ちの位置に置いた。

二武力に頼らない平和——朝日は日本がしてきたことを、赤旗はしてこなかったことを

朝日は、フィリピン南部ミンダナオ島などのバンサモロで14日に行われた、自治政府の発足に向けた議会選挙を書いた。分離独立を目指す武装闘争では1970年代から十数万人が犠牲になったとされ、2014年に政府と武装組織が包括和平に合意した。朝日は、この選挙の意義を世界の流れの中に置いた。

「法治が軽んじられ、力ずくで秩序を押しつける風潮が世界で強まるだけに、その意義は大きい。」

朝日新聞

赤旗は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々が東南アジア友好協力条約(TAC)を締結して50年になることを書いた。紛争の平和的解決や武力の不行使を掲げたこの条約が、紛争と分断に覆われていた東南アジアを平和と協力の地域に変えた、と赤旗は書く。国連総会は4日、TAC50周年の記念決議を全会一致で採択した。

二紙とも、東南アジアを、力ではなく対話で平和を築いた例として書いた。赤旗も、ASEANは力の論理に負けず、外交と信頼構築を選んできたと書いている。分かれたのは、そこに日本をどう置いたかである。

朝日は、日本がしてきたことを数えた。1990年代から600億円を上回る規模の支援を行い、2011年には成田空港近くでフィリピン政府と武装組織の秘密裏のトップ会談を仲介した。暫定自治政府の首相顧問は、国際協力機構(JICA)の日本人職員が務めている。

「この地域で日本への信頼を確かな外交資産にするためにも関与を続けていきたい。」

朝日新聞

赤旗は、日本の政府がしてこなかったことを書いた。歴代自民党政権は安全保障情勢の厳しさを理由に軍事的対応を強めるばかりで、外交と平和構築の努力を怠ってきた、と書き、日本共産党の「平和構築提言」をその対案に置いた。

「日本の選択が平和の構築に転換するならば、平和の国際秩序と地域平和への大きな貢献となることを、TACの実践は示しています。」

しんぶん赤旗

同じ東南アジアの平和から、朝日は日本に続けよと書き、赤旗は日本に変われと書いた。

ミンダナオは、9月22日の読売が見出し「日本らしい支援で平和定着へ」で取り上げており、朝日で二紙目になった。

三追いかけている主題から

ロシアは、東京で五本目になった。東京は9月21日から「揺らぐ国際秩序を考える」の題で、米国、北朝鮮、中国と一国ずつ書いてきた。四日目のこの日はロシアである。侵攻から4年7カ月がたち、英国防省情報機関によるとロシア軍の死傷者は約150万人に上るが、支配面積は最近ほとんど増えていないという。前日の産経が「茶番」と書いた侵攻後初の下院選を、東京も書いた。

「プーチン体制下の選挙は民意を問う場でなく、統治を正当化する手段に過ぎないからです。」

東京新聞

東京は、日本がウクライナ支援と対ロシア制裁をさらに強めなければならないと結んだ。

北朝鮮は、公明で二本目になった。9月22日の東京は、米国が北朝鮮の核の保有を黙認することを恐れた。この日の公明は、核・ミサイル開発の資金源を書いた。

「北朝鮮当局は海外労働者の賃金の8~9割を没収し、核・ミサイル開発に充てている。」

公明新聞

日米韓など11カ国の多国間制裁監視チームの報告書によると、ロシアと中国をはじめ17カ国に最大で10万人を超える北朝鮮労働者がいる、と公明は書き、全ての国連加盟国に安保理決議の完全な履行を求めた。

ふるさと納税は、日経で二本目になった。9月21日の朝日は、税収の格差の是正を交付金という別の制度に戻せと書いた。この日の日経は、制度の中で規模を抑える側を書いた。経費率の上限を5割から4割に下げる総務省の見直しを「望ましい方向」とし、手数料の引き下げ要請にほぼゼロ回答だった仲介サイトにこう書いた。

「協力を得られなければ制度維持のため一定の規制はやむをえないだろう。」

日本経済新聞

この日の一本

毎日新聞「SNSと地方選挙 事業者任せでは不安募る」を採る。

毎日は、9月13日に投開票された沖縄県知事選で真偽不明の情報がネットにあふれたことから書き始めた。知事選関連のXの投稿数は、昨年10月の宮城県知事選を大きく上回り、県外からの発信が圧倒的だったという。先の国会では、SNS投稿者に虚偽情報を広めない責務を定めた改正公職選挙法と、事業者に偽・誤情報への措置と年1回の公表を求めた改正情報流通プラットフォーム対処法が成立している。

「ただし、いずれも罰則はなく、事業者任せの面が強い。」

毎日新聞

毎日は、法律ができたことではなく、法律に罰則がないことを問題にした。そのうえで、仕組みの案を出している。虚偽情報の拡散にはアクセス数や閲覧時間に応じて収益が生まれるアテンションエコノミーが影響しているとして、こう書いた。

「選挙期間中だけでも収益化停止を義務づけることも有力な選択肢となる。」

毎日新聞

韓国やフランスの監視・取り締まりの仕組みも参考にせよ、と毎日は続けた。改正法は来年3月に施行され、来春の統一地方選で初めて使われる。その前に、毎日は罰則のない法律の穴と、それを埋める仕組みの案を並べて示した。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月23日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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