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社説の読み比べ

同じ中国の輸出を、朝日は弱さから、東京は強さから読んだ|社説読み比べ 2026年9月23日(水)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月23日(水)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は12本。聖教新聞は社説の掲載がない。

朝日と東京が、同じ日に中国の経済を書いた。朝日は不動産不況を、東京は電気自動車や電池、人型ロボットの伸びを書いた。二紙とも、中国の輸出が国外から批判されていることに触れている。朝日はその輸出を国内消費の弱さから説明し、東京は市場の大きさと開発の速さから説明した。そして朝日は中国政府に、東京は日本に向けて書いた。もう一つ、朝日と赤旗が、高市政権が問われる場所を通らずに進むことを書いた。朝日は首相の発信を、赤旗は皇族への中傷対策の立法を相手にし、二紙とも政権の「数」を書いた。

この記事の要点

  • 朝日と東京は、同じ中国の輸出を正反対の側から読んだ——朝日は不動産不況で国内消費がさえない裏側として、東京は市場の大きさと開発の速さの表れとして。宛先も分かれ、朝日は中国に内需への移行を、東京は日本に「対米追随一辺倒ではない」戦略を求めた。東京は三日続けて米国と日本の距離を書いた
  • 朝日と赤旗は、政権が問われる場所を通らないことを問うた——朝日は国会・記者会見と公文書(首相のSNSと公文書は三紙目)、赤旗は議員立法で内閣法制局の審査を避けるやり方。二紙とも背後に「数」を置き、朝日は政権が話す側を、赤旗は国民が話す側を見た
  • ドイツの極右は日経で四本目、ロシアは産経で四本目、子どもの受け皿は読売で七本目。この日の一本は産経「電子処方箋」——電子処方箋で確かめた処方箋の6件に1件に重複があった。人の注意に頼っていたところに仕組みを置くと何が見つかるかを、数字で示した

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
米国にどう向き合うか9/21 朝日・毎日・東京、9/22 東京東京五本目
首相のSNSと公文書9/4 毎日、9/9 東京朝日三本目
皇室典範の改正と、その先9/18 読売・産経赤旗三本目
ドイツの極右9/10 読売、9/12 毎日、9/20 産経日経四本目
ロシアの脅威9/7 産経、9/10 朝日・産経産経四本目
子どもの受け皿9/3 日経・公明、9/5 朝日、9/9 東京・赤旗、9/17 産経読売七本目
生活道路の法定速度9/1 日経読売二本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一同じ中国の輸出——朝日は弱さから、東京は強さから

朝日は、中国の不動産不況が本格化して5年がたち、国内需要を冷え込ませていると書いた。そのうえで朝日は、不動産と輸出を一本の線でつないだ。

「中国経済は不動産が足を引っ張り国内消費がさえない一方、製造業の供給力は増し、輸出を拡大させた。」

朝日新聞

これを各国が問題視し、最近もベッセント米財務長官が中国の輸出依存体質を批判した、と朝日は続けた。

東京は、9月21日、22日に続く「揺らぐ国際秩序を考える」の題で中国を書いた。人型ロボットの世界出荷の9割超とリチウムイオン電池と太陽光パネルの世界生産の4分の3以上が中国製で、電気自動車とプラグインハイブリッド車の世界販売の約6割が中国メーカー製だという。東京は伸びた理由を、14億人を超える国内市場と、部品の供給網が整っていることによる開発の速さに求め、欧州の猛暑で売れた移動式エアコンを例に引いた。欧州連合(EU)が中国の生産過剰を問題にしていることも、中国の反発と並べて書いている。

東京は、ユーラシア・グループが中国を「電気国家」と名付けた理由をこう書いた。

「レアアース(希土類)輸出制限が典型例で、特定の産業や分野での寡占を使い、影響力を示そうとの野望が透けるからです。」

東京新聞

同じ輸出を、朝日は国内消費の弱さの裏側として、東京は供給の強さの表れとして書いた。だから宛先も分かれる。朝日は中国に変わることを求めた。

「不動産不況を脱し、厚みのある国内消費を組み入れた循環へと移行する。」

朝日新聞

それが中国だけでなく世界経済にも望ましい、と朝日は結んだ。東京は中国が変わることを求めていない。米中の覇権争いの芽をエネルギーに見て、宛先を日本に置いた。

「対米追随一辺倒ではない、したたかな国家戦略を真剣に考えるべき時に来ています。」

東京新聞

東京は三日続けて、米国と日本の距離を書いたことになる。9月21日はトランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味に思えると書き、22日は北朝鮮の完全な非核化を首相が「何度も説く必要」があると書いた。この日の東京は、米国に何を言うかではなく、米国の側にだけ立たない戦略を求めた。

二問われる場所を通らない——朝日は首相の発信を、赤旗は議員立法を

朝日は、首相官邸の広報予算が一挙に10倍超になろうとしていることを書いた。2027年度予算の概算要求で、内閣広報室の予算が前年度の約7億円から約72億円に増えた。新型コロナ対応に追われた菅政権でも10億円規模で、その後は4億円程度が多かったという。朝日は、首相がSNSでの発信には熱心だが、国会への出席や記者会見には消極的だと書いた。

「都合のいいことを一方的にアピールし、厳しい双方向のやりとりを避けていては、その責務は果たせない。」

朝日新聞

朝日はもう一つ、首相の個人アカウントのX投稿が公文書管理法の対象にならず、保存や削除のルールがないことを挙げた。この点は、9月4日の毎日と9月9日の東京が書いたのと同じで、朝日で三紙目になった。毎日は誰の発信が対象から抜けているかを、東京はどれだけの発信が消えうるかを書いた。朝日は、そこに広報予算の10倍を重ねた。

赤旗は、皇室典範の改定を受けて、皇族への中傷対策の法整備を求める動きを書いた。名誉毀損は被害者が告訴しなければ起訴できない親告罪だが、皇族については告訴を不要にする案が検討されている。保護の対象には、養子候補になりうる旧宮家の男系男子も含めようとしている。

「皇族を特別に保護し、告訴なしで国家権力が処罰できるようになれば、名称はどうあれ、事実上の不敬罪復活と批判されて当然です。」

しんぶん赤旗

赤旗は、この法整備が議員立法で検討されていることを問題にし、内閣法制局による憲法や他の法制との関係の審査を避けた国旗損壊処罰法案や副首都法案と同じやり方だと書いた。

二紙が問うたのは、政権が問われる場所を通らないことである。朝日が挙げたのは国会と記者会見、そして後から検証するための公文書で、赤旗が挙げたのは法案を憲法に照らす内閣法制局の審査だった。二紙とも、その背後に数を置いている。朝日は首相が与党の「数の力」を背景に政策を推し進めていると書き、赤旗は皇室典範の改定を「数の横暴で押し通した」と書いた。

向きは逆である。朝日が見たのは政権が話す側で、赤旗が見たのは国民が話す側だった。朝日は首相の発信が問われないことを、赤旗は週刊誌などの皇室報道まで「不敬」とされかねないことを書いた。

改正皇室典範は、9月18日の読売と産経がどちらも取り上げている。そのとき産経は旧宮家の男系男子の皇籍復帰を欠かせないとし、読売は国民の総意が得られているとは言い難いとして女性・女系天皇も排除しない検討を求めた。赤旗はこの日、その男系男子を法で守ろうとする動きを書いた。

三追いかけている主題から

ドイツの極右は、日経で四本目になった。9月10日の読売と12日の毎日は民主主義の側から、20日の産経は対露融和という安全保障の側から書いた。この日の日経は両方を書いた。既成政党はAfDとの連立を拒む方針を崩すべきでないとし、親ロシア色が濃いAfDが行政や司法に浸透すれば安全保障にも影響が及びかねないとした。そのうえで日経は、台頭の背景にある経済の停滞や生活費の上昇、移民政策への不満にも目を向けた。

「こうした不安を排外主義の一言で片づけるのは適切な姿勢とはいえない。」

日本経済新聞

ロシアは、産経で四本目になった。産経は、ウクライナ侵略後初の下院選を侵略が支持されていると見せかける茶番だと書き、占領地で兵士が投票箱を持って巡回したことを挙げた。北方領土を不法占拠されている日本も、各国の非難に加わるべきだと書いている。

子どもの受け皿は、読売で七本目になった。2024年度に虐待で死亡した子どもは77人で、分析した50人のうち0歳児が34人、生まれた当日に亡くなった「0日死」が17人だった。9月9日の赤旗と17日の産経は、孤立出産の受け皿として内密出産の制度を国が作ることを求めた。この日の読売は内密出産には触れず、その手前を書いた。予期せぬ妊娠に悩む人の相談窓口をSNSで知らせることと、若者の悩みに応える「ユースクリニック」の推進である。

生活道路は、読売で二本目になった。9月1日の日経が「生活道路の車優先を変えよう」と見出しに掲げた、その日から法定速度が30キロに下がった。読売はこの日、新しいルールがどこまでドライバーに浸透しているかを心配した。

この日の一本

産経新聞「電子処方箋 薬の重複防ぎ患者を守れ」を採る。

処方箋の情報を薬剤師が電子データで一覧できる電子処方箋が、全国の9割を超える薬局に普及した。これまでは「お薬手帳」で確かめていたが、患者が持参を忘れたり、手帳を何冊も持っていたりして、正確な把握には限界があった。

オンラインで確かめた処方箋は今年8月に約7千万件を超え、6件に1件の割合で重複があった。しかも重複とみなすのは、成分が同じで使い方も同じ場合に原則限られる。

「検知する対象を限定しているにもかかわらず、重複が高い頻度で見つかったことは軽視できない。」

産経新聞

同じ日、読売は生活道路で「人が優先」の意識を、公明は閉山中の富士山の遭難救助を有料にする山梨県の案で登山者の安全意識を書いた。ただし読売も、意識だけでは終わっていない。段差(ハンプ)やポールで道を狭めて車の速度を落とさせる工夫を挙げた。公明も、有料化に抑止力を期待し、山梨県が同時に設ける登山届の義務化を並べた。人の注意に頼っていたところに、仕組みを置く。三紙が同じ方向を書いた日に、産経は、仕組みを置いたら何が見つかったかを数字で示した。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月22日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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