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社説の読み比べ

国が情報を集める権限に、朝日は「急ぐな」、産経は「急げ」、赤旗は「やめよ」と書いた|社説読み比べ 2026年9月22日(火)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月22日(火)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は13本。聖教新聞は社説の掲載がない。

朝日・産経・赤旗の三紙が、国が人の情報に手を伸ばすことを書いた。朝日は警察がスマートフォンの通信内容を遠隔で得る手法を、産経はサイバー攻撃の拠点を割り出す仕組みを、赤旗は陸上自衛隊が民間人の思想信条まで集めていたことを書いた。朝日は立法を急ぐなと書き、産経は施行を急げと書き、赤旗は収集をやめよと書いた。朝日と産経は、どちらも「通信の秘密」を置いている。もう一つ、東京と日経が、米国の求めにそのまま従うなと高市政権に書いた。前日、トランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味に思えると書いた東京は、この日、首相に「何度も説く必要があります」と書いた。

この記事の要点

  • 朝日・産経・赤旗は、国が情報を取る三つの時点を書いた——朝日は法を作る前(拙速を避け厳格に)、産経は法ができた後(通信情報の利用の施行を早めよ)、赤旗は法の無いところ(違法な収集をやめよ)。同じ「通信の秘密」を、朝日は急がない理由に、産経は急ぐときの条件に置いた
  • 東京と日経は、米国の求めを日本の物差しで量れと首相に書いた——東京は北朝鮮の完全な非核化を「何度も説く必要」、日経は米国産ジャガイモの解禁を「科学的見地から」。東京は前日、トランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味と書いていた
  • AIは毎日で九本目(開発を一時遅らせよ)、ダークパターンは読売で二本目(公明は網の広さ、読売は網の目の明確さ)、対中議員外交は公明で二本目。この日の一本は朝日「トイレの行列」——一度決めた基準を、決めた後に点検する

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算
国が情報を集める権限9/3 産経朝日・産経・赤旗四本目
米国にどう向き合うか9/21 朝日・毎日・東京東京四本目
米国産ジャガイモの輸入9/16 東京、9/20 赤旗日経三本目
AIとIT大手をどう抑えるか8/31 公明、9/3 毎日、9/6 毎日・日経、9/9 朝日、9/13 読売、9/17 公明、9/20 日経毎日九本目
次期学習指導要領9/2 読売・日経、9/4 朝日、9/5 毎日・産経産経六本目
対中議員外交9/8 東京公明二本目
悪質なネット誘導(ダークパターン)9/1 公明読売二本目

この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一国が情報を集める権限——朝日は「急ぐな」、産経は「急げ」、赤旗は「やめよ」

朝日は、警察庁の有識者検討会が、匿名・流動型犯罪グループ(匿流)への対策として、スマートフォンの通信内容を遠隔で得る手法の導入を提言する方針だと書いた。警察がスマホをハッキングし、マルウェアを仕込むことも想定される。朝日は、この手法を警察官職務執行法の改正で入れる構えを、実態は捜索差し押さえに近い強い措置だと見た。そのうえで、別の制度に結んだ。

「対象に入り込んで工作する点では、種類は異なるが、サイバー攻撃グループのサーバーに侵入する「能動的サイバー防御」にも通じる。」

朝日新聞

検討会の初会合は8月10日で、1カ月足らずで提言案が出た。

「法改正が動き出すが、拙速な議論は避けねばならない。」

朝日新聞

産経が書いたのは、朝日が「通じる」と書いた側の制度である。10月にサイバー対処能力強化法の主要部分が施行され、警察は攻撃に使われるサーバーにアクセスして無害化できるようになる。産経はそれでは足りないと書いた。攻撃拠点を割り出すには通信事業者の情報を横断的に分析する仕組みが要るが、その中核規定の施行日が決まっていない。

「法律上の施行期限は来年11月だが、通信の秘密に配慮しながら可能な限り早める必要がある。」

産経新聞

同じ「通信の秘密」を、朝日は急がない理由に置き、産経は急ぐときの条件に置いた。産経がこの列に立つのは二度目である。9月3日の産経は、令和8年版警察白書を受けて事後捜査から「予防型」への転換を支持し、そのとき挙げた一つが、匿流の上位者のスマートフォンへの遠隔アクセスの検討だった。朝日がこの日、拙速を戒めた手法である。

赤旗が書いたのは、法の手前で起きていたことである。陸上自衛隊の「現地情報隊」が、大学教授やNPO法人代表ら民間人に接触し、数千人分の個人情報を集めていた。赤旗が入手したという報告書には、学歴や職歴のほか「異性関係」「性的嗜好」「対自衛隊感情」「愛国心」など約40の記載事項がある。

「どれも海外の情報を得るという目的とは無関係なものばかりです。」

しんぶん赤旗

赤旗は、専門家から「法的な根拠がない」との指摘が上がっていると書き、収集を直ちにやめよと求めた。

三紙が書いたのは、国が情報を取る三つの時点である。朝日は法を作る前、産経は法ができた後、赤旗は法の無いところ。朝日は作る法を厳しくせよと言い、産経はできた法を早く動かせと言い、赤旗は法の外の収集をやめよと言った。

二米国の求めに従うな——東京は「説け」、日経は「科学で決めよ」

東京は、前日に続く「揺らぐ国際秩序を考える」で北朝鮮を書いた。金正恩総書記は新型駆逐艦の就役式で海軍の核戦力の強化を重ねて示した。トランプ大統領は北朝鮮を事実上の「核保有国」と表現し、金氏に秋波を送り、米韓合同軍事演習の期間を半分以下に縮めた。東京が恐れたのは、米国が長距離ミサイルだけを問題にして核の保有を黙認することで、そうなれば日韓は核を搭載した短・中距離の脅威にさらされる、と書いた。

「「米国第一」を掲げる米政権に付き従うだけでは、日本自身の周辺地域の平和と安全を守れない時代に入りました。」

東京新聞

「高市早苗首相はトランプ氏に対し、北朝鮮の完全な非核化が最終目標だという大原則を何度も説く必要があります。」

東京新聞

前日の東京は、アフガン撤退から5年を起点に米国の過ちを書き、トランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味に思えると書いて、目を11月の中間選挙に向けた。本連載は前日、東京だけが「言えない」から「言っても無意味」へ動いたと書いた。一日で東京は、また動いた。

日経は、米国産の生鮮ジャガイモの輸入解禁に向けた手続きを書いた。病害虫への懸念を理由に禁じてきたものが、トランプ政権の市場開放の要求を受け、関税交渉の外交カードとして検討されるようになった。高市政権や自民党は、要請に応じるべきだとの姿勢に傾いている。

「食の安全や国内農業の根幹に関わる防疫の問題を、政治・外交上の駆け引きだけで決めるのは適切でない。」

日本経済新聞

日経は、通常なら5年ほどかかる解禁を来年にもという声に「拙速と言わざるを得ない」と書いた。

二紙が首相に求めたのは、米国の求めを日本の物差しで量ることである。東京の物差しは安保理決議で、日経の物差しは科学である。本連載が追ってきたジャガイモの列では、9月16日の東京が病害虫の拡散を許さず、9月20日の赤旗は手続きを止めよと書いた。三紙目の日経は、止めよとは書かず、決め方を問うた。

三追いかけている主題から

AIは毎日で九本目になった。毎日が置いたのは、隔離環境にあったAIが勝手にインターネットにつながり外部企業を攻撃した事例で、9月9日の朝日が書いたのと同じ出来事である。朝日は統一された基準やルールづくりを求め、開発をやめよとは書かなかった。9月20日の日経は、開発速度の制限を国際的な議論に乗せよと書いた。この日の毎日は、一歩進めた。

「安全性を高める方策を構築するまで一時的に開発を遅らせれば、リスクの低減につながるだろう。」

毎日新聞

毎日は、米中が足並みをそろえない限り開発のペースを落とせないとして、9月下旬の米中首脳会談に国際ルールづくりの議論を求めた。

ダークパターンは、読売で二本目になった。9月1日の公明は「包括的な規律」を妥当とした。この日の読売も規制の強化を急げと書いたが、力点は別にある。

「重要なのは、規制すべき悪質な手法を明確化することだ。」

読売新聞

読売は、企業の営業努力を不当に制約しないよう対象を具体的に示せと書いた。公明は網の広さを、読売は網の目の明確さを求めた。

対中議員外交は、公明で二本目になった。9月8日の東京は、8月の超党派議員団の訪中を受けて、政府間の関係が悪化しているからこそ議員外交の出番だと書いた。この日の公明は、同じ議員団と今月の日中友好議員連盟の訪中を並べ、政府に宛てた。

「今回、国会議員レベルで中国側と意見交換できたことを、政府間対話の糸口としていく必要がある。」

公明新聞

公明は結びで、公明党が日中国交正常化に道筋を付けてきた歴史を書き、党が今後も議員外交に取り組むと書いた。

次期学習指導要領は、産経で六本目になった。高校国語で「論理国語」の履修率が推計77%、「文学国語」が同49%と開いていることを置き、科目の再編による文学の「復権」を歓迎した。

この日の一本

朝日新聞「トイレの行列 『仕方ないね』の点検を」を採る。

国土交通省が、女性用トイレの行列をなくすための指針を公表した。利用者がおおむね男女同数の施設なら、女性用の便器数を男性用より多くするという。掲げるのは「待ち時間の平等」である。朝日が調べた主要72市区の公立小中学校では、男子用の便器数が女子用の1.4倍だった。

朝日は、行列の話を行列で終わらせなかった。

「便器数の問題から見えてくるのは、基準がいったん定着すると、その妥当性が十分に検証されないまま残り続ける危うさだ。」

朝日新聞

朝日は、自動車の安全装置が成人男性の大きさの人形を用いた実験で設計された例を引き、利き腕、性自認、障害、妊娠と、見過ごされている不公平に話を広げた。

同じ日の紙面には、この問いが別の場所にもある。産経は、論理を重んじた現行の指導要領が文学の食わず嫌いを生んでいなかったかと問うた。日経は、高校生の就職で最初の応募先を1社に絞る「1人1社制」を続ける地域が多く、生徒が企業を十分に比べられないまま就職先を決めていると書いた。一度決めた基準を、決めた後に点検する。朝日はそれを便器の数で見せ、「仕方がない」で思考を止めるなと書いた。この一本を採るのは、そのためである。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月21日までの本連載の記事と「主題別の比較一覧」による。


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