敬老の日に三紙は高齢者に「元気で」と書き、赤旗は政府に「負担を増やすな」と書いた|社説読み比べ 2026年9月21日(月)
公開
この日、並べると見えたこと
2026年9月21日(月)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は14本。敬老の日である。
読売・産経・赤旗・公明の四紙が敬老の日を書いた。三紙は高齢者に向けて書き、赤旗は制度に向けて書いた。読売は健康寿命を、産経は働く高齢者とAIを、公明は低栄養の対策を書き、いずれも高齢者が元気でいることを求めた。赤旗は、高齢者の負担増を求める「世代間の公平」の論理を分断論と呼び、負担増を止めよと書いた。もう一つ、朝日・毎日・東京の三紙が、米国を混乱の起点として書いた。起点の見立ては同じで、その米国に何を言えるかが三段に分かれた。朝日は「対米修復の道を閉ざすな」、毎日は首相に「米国に求めよ」、東京は「説いても無意味」である。
この記事の要点
- 敬老の日の四紙——読売(健康寿命)・産経(働く高齢者とAI)・公明(低栄養)は高齢者の側が変わることを書き、赤旗は「世代間の公平」の論理を分断論と呼んで負担増を止めよと書いた。読売の「若い世代とともに」と赤旗の「全世代の痛み」は、同じ世代の語で費用の分かち合いと痛みの広がりを指した
- 朝日(カナダとEU)・毎日(米国のアジア外交)・東京(揺らぐ国際秩序)は米国を起点と見て一致し、米国に言えることが三段に分かれた——朝日「対米修復の道を閉ざすな」、毎日「首相は米国に求めよ」、東京「説いても無意味」。ICC制裁への三紙の並び(毎日は米国に、東京は言えない日本を、朝日は米国以外に)と同じ配置
- 基準地価は読売・日経が同じ数字から金利を見て、読売は企業と家計に、日経は政府に向けた(長期金利の波及・十本目)。紅海は産経で四本目、日本政府に役割を求めた。この日の一本は朝日「ふるさと納税」——障害者雇用ビジネス・民泊に続く「制度が生んだ商売」の三つ目で、答えが制度の外に出た
この日の一覧
| 媒体 | 見出し |
|---|---|
| 朝日新聞 | (社説)カナダとEU 米の独善が招いた蜜月/(社説)ふるさと納税 助け合いの理念どこに |
| 毎日新聞 | 社説:米国のアジア外交 取引優先では安定図れぬ/社説:環境配慮掲げる製品 誤解招かぬ表示の徹底を |
| 読売新聞 | 社説:基準地価上昇 金利の影響を精査すべき局面/社説:敬老の日 「健康長寿」をどう実現するか |
| 産経新聞 | <主張>紅海の海峡 原油輸送を途絶させるな/<主張>働く高齢者 AI使って社会の活力に |
| 東京新聞 | 〈社説〉揺らぐ国際秩序を考える 米国の過ち、混乱の起点 |
| 日本経済新聞 | [社説]地価の上昇が落ち着くか注視する局面だ/[社説]ロボタクシーで課題解決を |
| しんぶん赤旗 | 主張/敬老の日に考える/全世代に痛みもたらす分断論 |
| 聖教新聞 | 〈社説〉23日は少年少女部結成記念日 |
| 公明新聞 | (主張)100歳以上が過去最多 健康寿命延ばす栄養ケア後押しを |
追いかけ中の主題
| 主題 | これまで | この日 | 通算 |
|---|---|---|---|
| 長期金利の上昇と、その波及 | 9/2 毎日・日経、9/3 読売・朝日、9/4 産経、9/6 毎日、9/8 日経、9/10 公明 | 読売・日経 | 十本目 |
| イランの戦争と中東(紅海) | 9/3 読売、9/6 読売・東京・毎日、9/7 公明、9/8 赤旗、9/10 日経、9/17 毎日・読売・日経 | 産経 | 十一本目 |
| 9・11から四半世紀 | 9/6 東京、9/11 朝日・毎日・産経・日経 | 東京 | 六本目 |
| カナダと米国の関税 | 9/9 読売 | 朝日 | 二本目 |
| 制度が生んだ商売 | 9/20 読売・日経 | 朝日 | 三本目 |
この日の主題は、いずれも論調の目盛り(【賛】と【注】)を付けている六つの主題に入らないため、点は置かない。目盛りの説明と、主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。
一敬老の日——三紙は高齢者に「元気で」と書き、赤旗は政府に「負担を増やすな」と書いた
読売・産経・公明の三紙は、同じ官庁の数字から始めた。65歳以上は3624万人で人口の29.6%(読売・産経)、100歳以上は初めて10万人を超えた(読売・公明)。そこから三紙が書いたのは、高齢者が元気でいるための条件である。
読売は健康寿命を書いた。2022年のデータで、平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。支障なく日常生活を送れる健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳で、大きな差がある。読売はこの差を縮めるために適度な運動と食事、そして居場所を挙げ、横浜市のシニアクラブが月1回開くそば打ちの昼食会を紹介した。
公明も同じ健康寿命の数字を置いた。男性72.57歳、女性75.45歳。公明が差を縮める手段としたのは食事、とりわけ高齢期の低栄養への対応である。公明党が予防医療の柱に低栄養の改善を位置づけるよう訴えていると書き、健康寿命の差については、こう書いた。
「この差を縮められれば、高齢者個人の生活の質が向上し、膨らむ医療・介護費の抑制にも通じると期待される。」
公明新聞
産経は働く高齢者を書いた。65歳以上の就業者は22年連続で増えて943万人。日本の65歳以上の39%が収入を伴う仕事をしたい(続けたい)と答え、米独などの7割以上が「したくない」と答えたのと対照的だと書き、AIを高齢者の側に置いた。
「若いときほどの体力はないが意欲と気力はある、まだまだ働きたい―そんな高齢者にこそAIは強い味方になろう。」
産経新聞
三紙が書いたのは、高齢者の側が変わること——健康に、栄養に、働き方に——である。宛先には自治体や政府も入るが、求めた変化は高齢者の側にある。
赤旗は、数字から始めなかった。書いたのは、「全世代型社会保障」の名の下で進む高齢者の負担増と給付削減である。来年3月からのOTC類似薬の一部保険外し(薬代の4分の1を保険から外し、窓口負担3割の人は実質5割)、高齢者の医療費窓口負担の原則3割への引き上げ、介護保険の自己負担2割の対象拡大。赤旗は、政府が導入の理由に挙げる「世代間の負担の公平性確保」の先に何が来るかを、こう書いた。
「しかし、高齢者たたき、世代間分断がもたらすのは全世代にわたる社会保障切り捨ての痛みです。」
しんぶん赤旗
赤旗が求めた変化は制度の側にある。高齢者に変われとは書いていない。
並べると、「世代」の語を読売と赤旗が置いた。読売は結びで、超高齢化社会が医療費など社会保障費の増大につながるとして、こう書いた。
「高齢者だけの問題ではなく、若い世代とともに考えていかねばならない。」
読売新聞
読売の「ともに」は、増える費用を世代を超えて支え合うことである。赤旗の「全世代」は、負担増の痛みが世代を超えて及ぶことである。同じ世代の語で、読売は費用を分かち合う先を、赤旗は痛みが及ぶ先を書いた。
四紙が高齢者を書いたこの日、聖教は少年少女部の結成記念日(23日)を書いた。前身の少年部が結成されたのは1965年で、その1期生は今、70代から60代だという。
二米国が起点——朝日は「閉ざすな」、毎日は「求めよ」、東京は「無意味」
朝日は、欧州委員会がカナダをEU初の「準加盟国」とする構想を提案し、カーニー首相が賛意を示したことを書いた。引き金はトランプ政権によるカナダ製品への高関税と「併合」への言及である。朝日は、この接近が新たな陣営づくりに傾けば西側の分断を固定化しかねないとして、カナダとEUに「準加盟国」の看板より実のある協力の積み上げを求め、こう書いた。
朝日新聞
そのうえで、責任の所在は動かさなかった。
朝日新聞
毎日は、トランプ大統領の「米国第一」の外交がアジアで顕在化していることを、今週の習近平国家主席の訪米を前に書いた。憂慮したのは台湾問題での米国の譲歩と、在韓米軍の撤退をめぐる臆測である。毎日はトランプ外交に一貫した戦略を見いだすのは難しいとしたうえで、高市首相に行動を求めた。
「同盟国の利益を重視するよう米国に求めると同時に、中国との関係打開に向けた努力を払う必要がある。」
毎日新聞
東京は、アフガニスタン撤退から5年を起点に、米国の過ちを書いた。アフガンとイラクで親米国家の建設に失敗した米国が、2期目のトランプ氏の下でイランに同じことを繰り返している、という書き方である。
「世界に広がる混乱は、いまや失敗を教訓とせず過ちを繰り返す米国が起点です。」
東京新聞
東京は、トランプ氏に「法の支配」を説くのは無意味に思えると書き、目を11月の中間選挙に向けた。
三紙の見立ては同じである。米国が同盟国を敵視し(朝日)、同盟国の利害を度外視し(毎日)、「法の支配」のたがを捨てようとしている(東京)。違ったのは、その米国に何を言えるとしたかである。朝日はカナダとEUに、米国との道を閉ざすなと書いた。修復は可能だという前提である。毎日は首相に、米国に求めよと書いた。求めれば届くという前提である。東京は、説いても無意味だと書いた。届かないという前提で、宛先を米国の有権者に移した。
本連載が追ってきた米国のICC制裁への三紙の書き方と、並びは同じである。9月3日の毎日は、同盟国として米国に直言せよと書いた。9月6日の東京は、日本政府が制裁に抗議すらできないと書いた。9月20日の朝日は、国連総会でICCの意義を語れと書き、抗議は求めなかった。毎日は米国に言い、東京は言えない日本を書き、朝日は米国以外に言う。この日の三本も、その配置のままである。東京だけが一歩動いて、「言えない」から「言っても無意味」へ進んだ。
三追いかけている主題から
基準地価を読売と日経が書いた。同じ7月1日時点の数字——全用途1.5%、住宅地1.0%、商業地2.9%、5年連続の上昇——から、二紙とも金利を見た。読売は、日銀が18日に政策金利を約31年ぶりの1.25%程度に引き上げ、長期金利が30年ぶりに3%を超えたことを置き、大都市圏のマンション価格の変調と、地方の中核都市での再開発の中止を並べた。
「企業も家計も、リスク点検が問われる局面に入っていくことを自覚したい。」
読売新聞
日経は、公示地価と共通する地点の半年ごとの変動で今年に入って上昇率が鈍ったことをはっきりさせ、金利が上昇局面に入って実需が鈍ったと見た。そのうえで、東京などの不動産価格が中所得層にも手が届きにくくなっていると書いた。
「地価の上昇が落ち着きをみせたとしても、政策的な対応が必要な段階に来ているのではないか。」
日本経済新聞
利上げから三日、同じ地価の数字を、読売は企業と家計に、日経は政府に向けた。本連載が「長期金利の上昇と、その波及」として追ってきた列では、9月8日に日経が再開発の費用を、9月10日に公明が奨学金の利率を、波及の先に置いた。この日の読売は再開発の中止を、日経は住宅の取得を置いた。
紅海は産経で四本目、イランの戦争と中東の列では十一本目になった。9月17日に毎日・読売・日経が書いたフーシ派の紅海沿岸掌握に、産経が続いた。毎日は中露と日本にイランへの働きかけを求め、読売は米軍に余裕がなく和平協議しか道がないと書き、日経は誰であれ行為そのものを断じた。産経は、フーシ派の攻勢とイラクの親イラン組織によるパイプライン攻撃のどちらもイラン革命防衛隊との関連が取り沙汰されるとして、イランを名指しした。安保理の緊急会合で米国がフーシ派に撤退を求め、ロシアも憂慮を述べ、中国がイランに非公式に要請したと並べたうえで、宛先を日本政府に置いた。
産経新聞
その直前に置いたのは、ペリム島から約20キロのジブチに自衛隊の護衛艦などが拠点を置いていることである。9月17日の毎日と日経も日本政府に役割を求めていた(毎日はイランへの働きかけ、日経は米国とイランの双方への自制と対話の促し)。自衛隊の拠点の所在を添えたのは産経だけである。
カナダと米国の関税は、朝日で二本目になった。9月9日の読売は、カナダの報復関税を不毛な貿易戦争と書いた。この日の朝日は、その先にある帰結——カナダのEU接近——を書いた。
東京「揺らぐ国際秩序を考える」は、9・11から四半世紀の列で六本目になる。9月6日の東京がイラン攻撃を米国の四半世紀の歩みから書いたのと同じ場所から、この日はアフガン撤退から5年を数えた。
この日の一本
前日、本連載は読売(障害者雇用ビジネス)と日経(民泊)を「制度が生んだ商売」として並べた。法定雇用率が仲介業者を生み、民泊新法が投資物件を生んだ。この日の朝日は、三つ目を書いた。ふるさと納税が生んだ仲介サイトである。
朝日が置いた数字は、2025年度の寄付総額が約1.3兆円で10年で8倍、仲介サイト経由の寄付額の11%が手数料、「黒字」の自治体でも使えるのは寄付金の5割ほど。
朝日の答えは、まず読売の側にある。自治体が使える額を2029年に6割にする基準の引き上げ、仲介サイトへの個別の引き下げ要求、返礼品の調達費用の上限(寄付額の3割以下)の引き下げ。規制を足す答えである。そのうえで、朝日はもう一段書いた。
「社会全体で助け合う税の理念に立ち戻り、さらに踏み込んだ改革が欠かせない。」
朝日新聞
東京と地方の税収格差については、自治体の財政力に応じて交付金を配る制度で対応するのが基本だろう、と朝日は書いた。読売は権限を、日経は仕分けを求めた。朝日は規制を足したうえで、格差の是正を商売の生まれない別の制度に戻せと書いた。三つ目にして、答えが制度の外に出た。この一本を採るのは、そのためである。
出典
各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。
- 朝日新聞 カナダとEU/ふるさと納税
- 毎日新聞 米国のアジア外交/環境配慮掲げる製品
- 読売新聞 基準地価上昇/敬老の日(URL中の数字は前日の日付だが、掲載は9月21日)
- 産経新聞 紅海の海峡/働く高齢者
- 東京新聞 揺らぐ国際秩序を考える
- 日本経済新聞 地価の上昇が落ち着くか注視する局面だ/ロボタクシーで課題解決を(ウェブ配信は前日9月20日19時。紙面掲載は9月21日朝刊)
- しんぶん赤旗 主張/敬老の日に考える
- 聖教新聞「〈社説〉23日は少年少女部結成記念日」2026年9月21日付5面(紙面より)
- 公明新聞「(主張)100歳以上が過去最多 健康寿命延ばす栄養ケア後押しを」2026年9月21日付2面(電子版より)
前日までの社説への言及は、8月31日から9月20日までの本連載の記事による。
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