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社説の読み比べ

続投ばかりの人事で変わった二つは、どちらも国会の役職だった|社説読み比べ 2026年9月18日(金)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月18日(金)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は14本。前日に発足した第2次高市改造内閣を、朝日・毎日・読売・産経・東京・日経の六紙が書いた。

六紙とも、来秋の自民党総裁選での再選をにらんだ布陣だと読んだ。評価は割れたが、読みそのものは産経まで含めて六紙が同じだった。そのうえで、続投ばかりのこの人事で変わった数少ない役職のうち二つが、どちらも国会を扱う役職だったことに、六紙のうち五紙が目を留めた。ただし両方を書いたのは朝日・毎日・東京の三紙で、読売と日経は参院幹事長の交代だけを書いている。そして五紙は、向きが正反対のまま同じ一点に行き着く。批判した三紙は「首相の国会出席は憲法上の義務だ」と原理で書き、政権寄りの二紙は「参院の数は人事では変わらない」と実務で書いた。もう一つ、朝日は別の一本で、減税の財源が地方の負担として回ってくることを書いた。閣議決定の前に地方と協議した回数は、一カ月で四回だった。

この記事の要点

  • 六紙とも「再選をにらんだ布陣」という読みは同じで、分かれたのは評価だった
  • 変わった二つは国会対策委員長と参院幹事長。批判した三紙は憲法上の義務を、政権寄りの二紙は参院の議席を持ち出し、向きは逆でも同じ壁を指した
  • 朝日「支援金と地方」——減税とセットの支援金の費用が地方に回る。閣議決定の前の協議は一カ月で四回だった

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算この日の【賛】と【注】
高市政権の人事と国会運営(この日が一本目)朝日・毎日・読売・産経・東京・日経六本朝日 −1 ■■□
毎日 −1 ■■□
東京 −1 ■■□
読売 +1 ■■□
日経 +1 ■■□
産経 +2 ■□□
食料品の消費減税の財源9/5 読売、9/7 東京、9/8 日経、9/9 朝日、9/10 赤旗、9/13 東京、9/16 朝日・読売・産経・東京・日経、9/17 毎日・赤旗朝日(「支援金と地方」)※朝日・東京・日経・産経は改造内閣の社説のなかでも財源に触れた十四本目朝日 0 ■■□
米国の金融政策「長期金利の上昇と、その波及」として9月2日以降に八本読売・日経二本読売 +2/日経 +1
【注】は付けない(注文の相手が米国のため)
ホルムズ海峡と紅海9/3 読売、9/6 読売・東京・毎日、9/7 公明、9/8 赤旗、9/10 日経、9/17 毎日・読売・日経(主題とした社説はなし。読売と産経が別の社説のなかで触れた)十本のまま—(賛否の軸に乗らない主題)
中道改革連合の分裂9/1〜9/3 の六紙、9/7 赤旗、9/11 日経、9/12 公明、9/13 赤旗、9/17 産経(主題とした社説はなし。産経が改造内閣の社説の末尾で触れた)十一本のまま—(この日は主題として書かれていない)

【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。この日の「高市政権の人事と国会運営」で【賛】が測っているのはこの人事と、そこに表れた国会運営の進め方への賛否であり、【注】が測っているのは同じ主題について政権に出した注文の強さである。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一続投ばかりの人事で変わった二つは、どちらも国会の役職だった

9月17日、第2次高市改造内閣が発足した。高市早苗首相にとって初の改造である。六紙が並べた顔ぶれは、ほぼ同じだ。内閣では木原稔官房長官、茂木敏充外相、片山さつき財務相、小泉進次郎防衛相らが留任。自民党では麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長、小林鷹之政調会長が再任。昨年の党総裁選で首相と争った4人のうち、続投しなかったのは林芳正総務相ひとりだった。閣外協力だった日本維新の会から中司宏前幹事長が初入閣し、旧派閥の政治資金パーティー収入の不記載で党から処分を受けた議員2人が閣僚になった。女性閣僚は留任の2人にとどまった。

この人事を「来秋の総裁選での再選をにらんだもの」と読んだ点で、六紙は一致している。朝日は「ライバルたちを取り込んでおく思惑」と書き、毎日は「内向きの論理」と呼び、東京は「内向き人事」と呼んだ。日経は「政権の安定とライバルの封じ込めに布石を打った人事」と書く。政権寄りの二紙も同じ読みで、読売は林氏が閣外に出たことを総裁選出馬と結びつけ、産経は「来秋の自民総裁選を見据え」と明記した。

分かれたのは評価である。産経は肯定した。

「継続性と安定性を重視した政策遂行の布陣となったといえよう。」

産経新聞

読売は条件を付けて受け入れる。

「主要人事の継続を柱とした態勢作りは理解できる。」

読売新聞

日経は骨格の維持を認めたうえで、注文を先に置いた。

「新体制では異論や警鐘にも真摯に耳を傾け、広範な信頼を得る政権運営を心がけてほしい。」

日本経済新聞

留任と再任が並ぶこの人事で、実際に人が入れ替わった役職は多くない。そのうちの二つ——党の国会対策委員長と参院幹事長——が、どちらも国会を扱う役職だった。国対委員長には閣僚経験のない村井英樹元官房副長官が就いた。朝日は、村井氏が国会の「効率化」を主張し首相の国会出席時間の短縮に前向きだと書き、毎日は、閣僚の国会出席を減らすよう提言してきたと書いている。参院幹事長の石井準一氏は交代した。毎日によれば、石井氏は、首相が今年度予算を異例の短い日程で成立させようとした際に、野党に配慮した円滑な審議を重んじて対立した経緯がある。

六紙のうち五紙が、この交代に目を留めた。ただし二つとも書いたのは朝日・毎日・東京の三紙で、読売と日経が書いたのは参院幹事長の交代だけである。村井氏の起用に触れた紙は、批判した三紙に限られる。毎日はこう書く。

「党幹部の布陣には、国会運営を首相官邸の意のままにしたい思惑が透けて見える。」

毎日新聞

朝日は、首相の予算委員会への出席が歴代首相に比べて著しく少なかったことを置いたうえで、結論を一文にした。

「首相をなるべく国会に出さないなどという国会対策は許されない。」

朝日新聞

東京は、予算成立が遅れた原因の見立てから違えた。

「予算成立の遅れは、首相が1月に衆院解散に踏み切ったことが原因であり、首相の国会出席は憲法に定められた義務だ。」

東京新聞

毎日も、ただでさえ少ない国会出席がさらに減ることを危ぶんでいる。

「首相の都合が優先され、ただでさえ少ない国会出席が更に減ることが危惧される。」

毎日新聞

三紙が持ち出したのは、憲法と慣例という原理である。ところが読売と日経は、同じ二つの人事を、まったく違う言葉で受けた。読売は、首相が国会審議の迅速化に意欲を燃やしていると書いたすぐあとに、こう続ける。

「だが与党は参院で過半数に届いていないため、法案審議は首相の思いどおりに進むとは限らない。」

読売新聞

日経は、対決型の運営を進めた場合に起きることを書いた。

「参院で野党が多数派の国会が空転し、ほかの法案にも影響しかねない。」

日本経済新聞

そして東京も、原理を述べたあとに同じ現実を置いている。

「与党が少数の参院では、国会運営を担う党役員が代わっても審議日程は首相の思うままにはならない。」

東京新聞

批判した紙は「してはいけない」と書き、政権寄りの紙は「やっても効かない」と書いた。向きは正反対だが、五紙が指しているのは同じ壁——参院の議席である。人事で動かせるのは役職であって議席ではない、という一点で、賛否の離れた紙が重なった。

六紙のうち、この二つの役職に一言も触れなかったのは産経だけである。産経が字数を割いたのは、年末の安保3文書の改定、ウクライナ支援、エネルギーの「脱ホルムズ海峡」、憲法改正の条文起草、拉致問題、そして10月に施行される改正皇室典範だった。

その皇室典範について、読売と産経はどちらも「積み残し」「国の基本」として取り上げ、同じ改正を見て正反対の方向を求めている。産経は、皇族との養子縁組による旧宮家の男系男子の皇籍復帰は皇統の安定のために欠かせないとして、宮内庁任せにせず首相直轄で対応せよと書いた。読売は、養子に生まれた男子が将来の皇位継承資格を持つことについて「国民の総意が得られているとは言い難い」としたうえで、こう求めた。

「女性・女系天皇が即位できる制度も排除せず、現在の皇統の存続を最優先とする方策の検討に入るべきだ。」

読売新聞

二減税の財源は、地方の負担として回ってくる

臨時国会の焦点が飲食料品の消費税減税であることは、六紙すべてが書いている。財源が示されていないという指摘も、朝日・東京・日経・産経の四紙が改造内閣の社説のなかで繰り返した。産経の一文は、前日までの各紙の要求とほとんど同じ形をしている。

「消費減税をめぐる懸念の解消には、国債に頼らない財源を具体的に示し、財政への信認を損なわない制度設計が求められる。」

産経新聞

この日、その財源の話を一本の社説にしたのは朝日である。ただし朝日が見たのは、国の財源ではなく地方の負担だった。

政府は来春から2年間の飲食料品の消費税減税とセットで、「就業者負担軽減支援金」の創設を目指している。その費用の一部を地方にも求める。朝日によれば、支援金の総額は数兆円になるとの民間シンクタンクの試算があり、その3分の1なら兆円規模になる。ところが、政府と知事会など地方側の代表者が協議したのは、大綱の閣議決定の直前1カ月間に4回だけだった。初回に国側が唐突に地方負担を求める意向を表明し、地方側からは「大きな驚き」「唐突で大変困惑している」といった発言が相次いだという。3回目に国が「3分の2以上」を負担し、残りを都道府県と市町村が半分ずつ、と踏み込んだ。大綱には「国が3分の2以上」という表現が盛り込まれ、最終決定は年末の予算編成に合わせてとなる。

朝日は、地方分権改革が積み上げてきた「対等・協力」の原則に沿ったやり方とはとても言えない、と書く。自治体の負担分は全額を地方交付税で賄えるようにすると国は言うが、2000年代の三位一体改革で交付税が大幅に削減された経験があり、地方側は警戒している。政府の社会保障国民会議は3月から4カ月にわたり、知事会の代表と地方財政の専門家も参加する有識者会議を開いていたのに、その議論は活用されなかった、とも指摘した。

「財源なしで制度設計を先行させるから、不安が広がる。」

朝日新聞

「国はなぜ、地方側の不信を招くような協議をしたのか。国会審議で解明すべきポイントだ。」

朝日新聞

この日の朝日の二本は、別々の主題でありながら同じ形をしている。一本は、国会に出る時間を削ろうとする人事を問題にした。もう一本は、国会に持ち込む前の地方との協議が一カ月で四回だったことを問題にした。どちらも、決める前に取る手続きの時間の話である。なお、9月16日に大綱を論じた際、朝日は財源も給付の対象も示さないまま法案提出へ向かう姿勢を「国会軽視ではないか」と書いていた。二日後、毎日がその同じ語を、改造内閣の社説の見出しに置いた。——「高市内閣改造と党人事 国会軽視が強まらないか」。

この日の一本

しんぶん赤旗「主張/満州事変と首相/歴史にそむく者に未来はない」を採る。

1931年9月18日、日本軍が南満州鉄道を爆破し、それを中国軍の仕業として中国東北部への攻撃を始めた。この日で95年になる。六紙が改造内閣の顔ぶれを数えたその朝、同じ首相を、赤旗だけは歴史認識の側から見た。日付に合わせた一本である。

赤旗は、高市首相が2002年8月18日に満州事変を「私はセキュリティー(安全保障)のための戦争だと考えている」と述べ、1995年3月16日には国会で先の戦争を「私は反省なんかしていません」と述べたと書く。

「高市首相の侵略戦争美化は、歴代首相のなかでも突出しています。」

しんぶん赤旗

そのうえで赤旗は、首相就任後の変化を並べた。先の戦争についての認識を問われると、日本政府はこれまで侵略として謝罪してきたとして「その政府見解を踏襲しております」と答えている(2025年11月7日)。一方で、8月15日の戦没者追悼式典の式辞では「反省」の言葉を消した。靖国神社の参拝は見送り、近くから遥拝して玉串料を納めた。かつて高市氏は、米国が安倍晋三首相(当時)の靖国参拝に「失望」を表明したことについて、同盟国の米国が反対するのは理解できない、外交問題でなくなるよう努力を続けたいと述べていた。赤旗は、アジア諸国の批判と米国との関係を優先して参拝を断念せざるを得なかったのだ、と読む。結びはこうである。

「一国の首相が歴史認識を堂々と語れないこと自体、歴史の審判に堪えられない認識であることを告白するものです。」

しんぶん赤旗

この一本には、他紙の記事と交わる箇所が一つある。赤旗は、韓国国防省が小泉進次郎防衛相の靖国参拝について「未来志向的な関係をつくっていこうという努力に正面から反する」と表明し、この直後に小泉氏が韓国主催の防衛会議への出席を見送った、と書いた。その小泉防衛相は、改造内閣を書いた六紙のうち朝日・読売・東京の三紙が、名指しで「留任」と書いた閣僚である。朝日と東京は、昨年の総裁選で首相と争った一人が現職にとどまった、という位置づけで書いた。読売は続投した閣僚を並べたなかに名を挙げただけである。留任までの間に何があったかを書いた紙は無い。同じ人物について、三紙は座席の話を書き、一紙だけが行いの話を書いた。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月17日までの本連載の記事による。


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