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社説の読み比べ

紅海まで危うくなり、三紙とも力で開ける道を書かなかった|社説読み比べ 2026年9月17日(木)

 公開

この日、並べると見えたこと

2026年9月17日(木)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は14本。聖教新聞はこの日、社説の掲載がなく、公明新聞「主張」は電子版から採録した。

イランが封鎖したホルムズ海峡の代わりに原油を運んできた紅海の航路が、南側から脅かされている。これを毎日・読売・日経の三紙が書き、三紙とも、力でこじ開ける道は書かなかった。読売は米軍に紅海へ向かう余裕がないと書き、日経は米大統領が戦闘を終わらせられないと認めたと書いた。十一日前に読売が数えた弾薬の残量が、この日そのまま判断になっている。もう一つ、15日に閣議決定された税制改正大綱に、毎日としんぶん赤旗が一日遅れて加わって七紙がそろった。七紙とも財源の欠落を問題にしたが、この日の二紙が長く書いたのは財源ではなく、減税が終わる二年後である。

この記事の要点

  • 紅海の危機を書いた三紙とも、力でこじ開ける道は書かず、出口を交渉に置いた
  • 読売が9月6日に数えた米軍の弾薬の残量が、この日「紅海に戦力を投入する余裕がない」という判断になった
  • 税制改正大綱に毎日としんぶん赤旗が加わって七紙。立場が正反対の二紙が、二年後に来る増税という同じ一点で重なった

この日の一覧

追いかけ中の主題

主題これまでこの日通算この日の【賛】と【注】
ホルムズ海峡と紅海9/3 読売、9/6 読売・東京・毎日、9/7 公明、9/8 赤旗、9/10 日経毎日・読売・日経十本目まで—(賛否の軸に乗らない主題)
食料品の消費減税の財源9/5 読売、9/7 東京、9/8 日経、9/9 朝日、9/10 赤旗、9/13 東京、9/16 朝日・読売・産経・東京・日経毎日・しんぶん赤旗十三本目まで毎日 −2 ■■□
赤旗 +2 ■■■
中道改革連合の分裂9/1〜9/3 の六紙、9/7 赤旗、9/11 日経、9/12 公明、9/13 赤旗産経十一本目—(この日の産経は政党交付金の論点)
AIとIT大手をどう抑えるか8/31 公明、9/3 毎日、9/6 毎日・日経、9/9 朝日、9/13 読売公明七本目—(まだ採点していない主題)

【賛】と【注】の読み方。【賛】はその政策への賛否で、−2 反対を明記/−1 否定的だが撤回は求めず/0 是非に触れない/+1 条件付き支持/+2 もっと進めよ。【注】は政府への注文の強さで、□□□ 触れただけ/■□□ 注文を出した/■■□ 条件や基準まで示した/■■■ 代案を自分から出した。この採点は本連載の読みであり、各紙の公式見解ではない。賛否の軸に乗らない主題には付けない。主題ごとの全体像は主題別の比較一覧にある。

一代替路が脅かされ、力で開ける道は誰も書かなかった

イランが事実上封鎖したホルムズ海峡に代わって、サウジアラビアが原油をアジアへ運ぶ道としてきたのが紅海である。イエメンの親イラン武装組織フーシが港湾都市モカと紅海沿岸を制圧し、出入り口のバベルマンデブ海峡を掌握したと主張した。あわせて、サウジ東部の油田と紅海側をつなぐパイプラインが無人機に攻撃されて操業を止めた。この二つを、毎日新聞・読売新聞・日本経済新聞の三紙が同じ日に書いた。

読売は、紅海を南下する航路まで使えなくなったとして、残る道を日数で示す。紅海を北上してスエズ運河から地中海、大西洋を通り、喜望峰を回ってアジアへ運ぶと往復約100日を要し、ホルムズ海峡経由の約40日から大幅に延びる。原油価格は8月下旬の1バレル80ドル台から100ドル超に上がった。日経は、ホルムズ海峡には世界の原油と液化天然ガスの2割が通っていたと書き、米国で軽油が過去最高値を更新したと添えた。

非難の向きは三紙で違う。読売は、配下の武装勢力を操って中東の急所を支配しようとしているのは明らかだとして、イランを名指しした。

「世界のエネルギー供給に混乱を広げるイランの策略は断じて許されない。」

読売新聞

日経は、攻撃した相手を特定しないまま行為そのものを断じた。誰であれ原油供給を人質に取ることは許されない、フーシは航行の自由の妨害を直ちにやめるべきだ、と書く。そのうえで原因の側にも一文を置いた。

「いまの中東危機の原因は、国際法違反の疑いがある米国の先制攻撃だった。」

日本経済新聞

毎日は、戦闘が再開されたきっかけを米軍によるイラン攻撃に求めた。サウジが7月にイエメンの空港を爆撃し、フーシが報復した経過を置いて、こう書く。

「トランプ米政権による軍事行動が紅海の不安定化を加速させる結果を招いた。」

毎日新聞

三紙で重なるのは、力でこじ開ける道を誰も書かなかったことである。読売は米国の側の事情をこう説明した。

「米軍は弾薬不足に見舞われており、紅海に戦力を投入する余裕がないのが実情だろう。」

読売新聞

日経も、サウジがフーシ攻撃を要請したとされるのにトランプ大統領が慎重なのは、兵器を消耗するなかで戦線を広げたくないからだろうと書いた。そして、戦闘が「選挙の直後には終わるだろう」という大統領の発言を、中間選挙前の終結を諦めたともとれるとして、こう受けた。

「自ら始めた戦闘を終わらせる手立てがないと認めたも同然だ。」

日本経済新聞

読売が書いた弾薬不足は、この連載では初めて出てきた話ではない。9月6日、読売は横須賀を拠点とする米空母が中東へ回されて西太平洋が空いたことを書き、その際に、中東での作戦で巡航ミサイルのトマホークを備蓄の半分程度、迎撃ミサイルの8割を消費したとされる、と数えていた。そのときの求めは、米国は中東での戦闘終結を急げ、であった。この日の読売の結びは違う。

「原油輸送路を正常化させるには、トランプ氏がイランとの和平協議を再開させるしか道は残されていないのではないか。」

読売新聞

十一日前に数えた残量が、この日「余裕がない」という判断になり、「急げ」が「それしかない」に変わった。

残った手段を誰に求めるかで、三紙は分かれた。読売はトランプ大統領に和平協議の再開を求め、日経は日本に、米国とイランの双方へ自制と対話を促し続けよと求めた。毎日は別のところへ向けた。

「中露や日本などは、フーシ派の後ろ盾であるイランに両海峡での自由航行を保障するよう強力に働きかけるべきである。」

毎日新聞

読売は当事者の米国へ、日経は日本から双方へ、毎日は米国以外の大国を含めて、と宛先が三つに割れている。

二大綱の二日目——加わった二紙は、財源の先の「二年後」を見た

政府が15日に閣議決定した税制改正大綱を、16日に朝日・読売・産経・東京・日経の五紙が書いた。この日、毎日新聞としんぶん赤旗が加わって七紙になった。財源についての評価は前日の五紙と変わらない。毎日は、1%分の税収も給付に回すため年約5兆円が必要になるのに「赤字国債に頼らない」と繰り返すだけだと書き、赤旗は、年末の予算編成に先送りしたまま秋の臨時国会で法案を通そうというのは無責任だと書いた。

毎日がこの主題を社説の題に据えたのは、この日が初めてである。

二紙が長く書いたのは、その先である。減税は2027年4月から2年間で、終われば税率は1%から8%に戻る。毎日はこう書いた。

「首相が唱える『2年限定』で終わる保証もない。税率を元に戻す際に大幅な増税となるからだ。」

毎日新聞

赤旗は同じ二年後を、逆から書く。

「2年後は1%から8%への7%増税というかつてない大増税となります。」

しんぶん赤旗

立場は正反対である。毎日は、消費税は増え続ける社会保障費を支える重要な財源であり、目先の景気対策につぎ込めば超高齢社会に禍根を残すとして、減税そのものに否定的な立場から書いている。赤旗は、2年限定ではなくずっと減税し廃止すべきだ、日本共産党は一律5%への引き下げと将来の廃止を目指す、と書く。減税に反対する紙と、もっと減税せよという紙が、二年後に来る増税という同じ一点で重なった。前日の五紙で二年後に触れたのは読売だけで、税率を戻す政治的な難しさとして一文を置いていた。

減税が終わったあとに残る給付制度についても、二紙は前日までの五紙より深く入った。政府は中低所得者向けの「就業者負担軽減支援金制度」を2029年4月に前倒しで始めるとしている。赤旗は、その対象の線引きを読んだ。就労して一定の税・社会保険料の負担がある人に限られ、四つの所得要件で上下から絞られる。

「高齢・病気・障害などで働けない人は初めから除外されます。」

しんぶん赤旗

赤旗は、年金生活者は働いていても大部分が対象外であり、これまでの議論からみれば国民の9割は給付されない見込みだとも書いた。

毎日が初めて持ち出したのは、国会での決め方だった。減税と給付の法案が一本化されている。少数与党の参院で野党を取り込む狙いだろうと読んだうえで、減税は高所得者ほど恩恵が大きく、中低所得者向けの給付とは性格が根本的に異なる、と書く。

「一括して賛否を問うのは無理がある。」

毎日新聞

七紙が「財源を示せ」でそろったこの主題は、二日目に、財源ではなく二年後と採決の形へ論点が移った。なお、財源の中身を自分から示したのは、9月10日に大企業への課税を求めた赤旗に続き、この日も赤旗だけである。法人税率を中小企業を除き安倍政権以前の28%に戻す、大企業を優遇する税制を廃止・縮減する、株式の配当や譲渡所得への優遇をただす、の三つを挙げた。

この日の一本

産経新聞「<主張>中道から集団離脱 国民の税金にすがるのか」を採る。

中道改革連合から立憲民主、公明両党出身の衆院議員48人が離党し、立民出身の1人だけが清算のために残って党として存続する。立民系の新党は「民主改革の会」で、代表と幹事長は中道と同じ小川淳也氏と階猛氏、綱領も基本的に踏襲する。産経が問うたのは、その中道が今年の政党交付金の未交付分約11億6900万円を受け取ることである。

「実体を伴わない形ばかりの政党であるにもかかわらず巨額の交付金を受け取ることに、国民の理解を得られるのか。」

産経新聞

産経は、中道への今年の配分額が約23億3800万円で半分は支給済みであること、来年も1人政党として存続すれば約17億円を受け取れるとの指摘があること、平成26年に解党したみんなの党は残金約8億2600万円を国庫に返納したことを並べた。小川氏が述べた衆院選費用約20億円の債務履行という理由についても、政党助成制度の趣旨に沿うとは思えない、脱法行為と批判されてもやむを得まい、と書く。新党の名は「党名ロンダリング」だとした。結びはこうである。

「中道にいた議員は政治とカネの問題を好んで追及してきたが、これを論じる資格を失った。」

産経新聞

この一点を先に書いたのは、しんぶん赤旗である。9月13日の赤旗の主張は「中道の政党助成金/国民感情と乖離した税金受領」という見出しで、解体しながら税金を受け取ることを問うた一点は産経と同じである。四日の間を置いて、立場の離れた二紙が同じ場所に立った。

出典

各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。

前日までの社説への言及は、8月31日から9月16日までの本連載の記事による。


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