税制大綱に五紙がそろって同じ注文、その先で割れた|社説読み比べ 2026年9月16日(水)
公開
この日、並べると見えたこと
2026年9月16日(水)付の主要9紙の社説を読み比べる。この日の掲載は13本。聖教新聞はこの日、社説の掲載がなく、公明新聞「主張」は電子版から採録した。
政府が15日に閣議決定した税制改正大綱を、朝日・読売・産経・東京・日経の五紙が書いた。五紙とも、財源が書かれていないことを問題にした。だが、そろったのは注文の一点だけで、減税そのものへの立場は五紙で割れたままである。もう一つ、前日に五紙が書いた浜岡原発の不正に、毎日新聞が一日遅れて加わり、六紙のなかで唯一「原発事業からの撤退」まで踏み込んだ。
この記事の要点
- 税制大綱を書いた五紙が、そろって「財源が示されていない」と書いた
- 同じ注文の下で、朝日は減税に反対、産経は減税を前提に制度設計を求めるなど、立場は割れたまま
- 浜岡原発の不正に毎日が六紙目として加わり、唯一「原発事業からの撤退」まで書いた
この日の一覧
| 媒体 | 見出し |
|---|---|
| 朝日新聞 | (社説)気候危機 1.5度目標を手放さずに/(社説)消費減税の大綱 具体像示さない不誠実 |
| 毎日新聞 | 社説:中部電の「浜岡」不正 原発からの撤退免れない |
| 読売新聞 | 社説:消費減税の大綱 社会保障制度の安定を壊すな/社説:インフル流行 残暑で体力を低下させぬよう |
| 産経新聞 | <主張>BRICS 印は中露両国と距離保て/<主張>消費減税で大綱 懸念払拭へ明確な方策を |
| 東京新聞 | 〈社説〉食品消費税減税 財源の議論を深めねば/〈社説〉ジャガイモ輸入 病害虫拡散は許されぬ |
| 日本経済新聞 | [社説]税制大綱は消費税減税の財源をまず示せ/[社説]米国防総省の混乱を憂慮する |
| しんぶん赤旗 | 主張/西岸の入植地拡大/パレスチナの地 強奪に抗議を |
| 聖教新聞 | (この日は社説の掲載なし) |
| 公明新聞 | (主張)認知症施策の充実 自治体の計画策定へ国が支援を |
追いかけ中の主題
| 主題 | これまで | この日 | 通算 |
|---|---|---|---|
| 食料品の消費減税の財源 | 9/5 読売、9/7 東京、9/8 日経、9/9 朝日、9/10 赤旗、9/13 東京 | 朝日・読売・産経・東京・日経 | 十一本目まで |
| 浜岡原発の不正 | 9/15 朝日・読売・産経・東京・日経 | 毎日 | 六紙目 |
| 西岸の入植者の暴力 | 9/10 毎日 | しんぶん赤旗 | 二紙目 |
| 気候危機 | 9/15 赤旗(気候変動と災害) | 朝日 | 二本目 |
一五紙が同じ一点でそろい、その先で割れた
政府は15日、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる税制改正大綱を閣議決定した。財源は、赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の適正化、税外収入、歳出・歳入全般の見直しで確保するとされ、具体の中身は年末の予算編成に先送りされた。この一点を、五紙がそろって問題にした。
日本経済新聞は、文書そのものの格を問うた。
「減税分を穴埋めする具体的な財源は明示されず、税制改正の大方針を示す『大綱』を名乗るには不十分で無責任な内容だ。」
日本経済新聞
日経は、税制改正大綱は通常、歳出と歳入のつり合いを考えて増減税の規模を示すもので、その調整は自民党税制調査会が担ってきた、と書いた。
朝日新聞は、国会審議の前提として求めた。財源も給付の対象も示さないまま法案提出へ向かう姿勢を「国会軽視ではないか」と書き、結びをこう置く。
「負担や線引きの話を遠ざけ、聞こえのいい話ばかり並べる政治は、何より国民に対して不誠実だ。」
朝日新聞
読売新聞と東京新聞は、社会保障の側から求めた。読売は「消費税は社会保障の安定財源であり、本来、景気対策に用いるべきでない」としたうえで、候補を挙げながら中身が見えないことをこう評した。
「いまだ詳細な内容を見いだせていないのは、責任ある姿勢とは言えまい。」
読売新聞
東京は、社会保障給付が2026年度予算で144兆円に上るのに主たる財源の消費税収は34兆円にとどまる、という開きを置いて、臨時国会に注文する。
「当面の負担軽減策にとどまらず、社会保障の将来像と財源のあり方について政府と与野党が議論を深めるよう求めたい。」
東京新聞
産経新聞が求めたのは、臨時国会で賛同を得るために懸念へ答えることである。
「実現可能な財源確保策についてはできる限り具体的に明示するよう努めるべきだ。」
産経新聞
産経は候補も名指しした。与野党の一部にある法人税増税は可能か、租税特別措置の見直しでどれほど捻出するのか、防衛費や成長投資に必要な財源との兼ね合いはどうか。財源の候補を自分から並べたのは産経だけで、その先頭に法人税を置いた。9月10日にしんぶん赤旗が大企業への課税を財源に求めており、立場の異なる二紙が、同じ税目を別の意味で持ち出したことになる。赤旗は求める先として、産経は成り立つかを問う対象としてである。
そろった注文の下で、減税そのものへの立場は割れている。朝日は、期間限定であっても社説は消費税の減税に反対してきた、と自らの立場を明記した。日経は弊害が数多く指摘されているとして、物価高対策としての効果が限られることと、社会保障の安定財源に穴が空くことを挙げた。読売は2年で税率を戻す政治的な難しさを書き、東京は減税が妥当なのかと問うた。産経は制度設計を問うた。同じ「財源を示せ」が、減税に反対する紙からも、制度設計を問う紙からも出ている。
規模の書き方も五紙で違う。読売は減税分を国と地方で年間4・3兆円の税収減と書き、日経は年4兆円を超す財源と書いた。朝日は社会保障に充てる年間約5兆円の財源を失うと書き、東京は減税と給付を合わせて年間5兆円が必要だと書いた。減税だけを数えた紙と、給付まで含めて数えた紙がある。
財源の当てが細っていることは、数字で共通している。東京は、政府が各省庁に租税特別措置の見直しを指示した結果、廃止方向は現時点で3件にとどまると書いた。9月9日の朝日が書いた「27年3月末が期限の約120件のうち廃止の要望は3件」と同じ数である。
二毎日が一日遅れて、六紙のなかで最も遠くまで書いた
浜岡原発の地震動データ不正は、前日15日に朝日・読売・産経・東京・日経の五紙が書いた。毎日新聞はこの日に書き、六紙目となった。
前日の五紙で最も遠くまで書いたのは東京で、再稼働を断念して他の電力に力を向ける道もある、という書き方だった。毎日は書き出しでそれを越える。
「ルールを踏みにじり、国民の信頼を裏切った中部電力は、原発事業からの撤退を免れることはできまい。」
毎日新聞
理由として毎日が積んだのは、この一件だけではない。昨年11月に発覚した安全対策工事の契約変更手続きの不備、先月明らかになった1、2号機の廃炉作業での報告書改ざん、電気料金の過大請求を2年5カ月放置したこと。不正を一件ずつ並べて企業統治が破綻していると書き、そこから事業者としての資質へ進んだ。結びは規制委員会に向く。安全文化や品質保証体制の実態を見極め、厳しい処分を検討すべきだ、と。
前日の日経は組織風土と企業統治を刷新して再出発せよと書き、読売と産経は再稼働が遠のいたことをエネルギー政策の損失として数えた。
毎日はもう一つ、この不正を過去の企業不祥事の列に置いた。
「過去には、東芝やニデックでも経営陣が現実離れした高い目標を現場に押しつけ、不正会計問題を引き起こした。」
毎日新聞
9月13日に朝日がニデックの調査報告書を書いたとき、そこで見たのも「経営層が現場に押しつける」構図だった。三日のあいだに、電機と電力の二つの報告書が、同じ形の指摘で結ばれたことになる。
この日の一本
しんぶん赤旗「主張/西岸の入植地拡大/パレスチナの地 強奪に抗議を」を採る。
ヨルダン川西岸地区での入植者の暴力は、9月10日に毎日新聞が書いている。毎日は、極右政党の政権参加、軍の手薄を補う武器提供、トランプ政権による入植活動の黙認を背景に挙げ、圧力をかける主体として「国際社会」を名指しした。
赤旗は、同じ主題を日本の側から書いた。国連などの数字として、西岸でイスラエル軍や武装入植者に殺されたパレスチナ人住民が2023〜25年に1244人にのぼり、06〜22年の17年間の1036人を上回ったことを置く。英仏カナダなど12カ国が8日に入植地産品の輸入禁止を発表したことも書く。そのうえで、国連総会決議に賛成した国としての日本に矛先を向けた。
「攻撃型ドローンをはじめイスラエル製武器の輸入を防衛省が検討していることは重大です。」
しんぶん赤旗
毎日が「国際社会」と書いた場所に、赤旗は日本政府を置いた。武器の輸入と経済連携協定という、日本がいま決めようとしている二つを挙げたことで、この主題が国内の判断の話になった。
出典
各紙の当日社説より引用。引用部分の著作権は各新聞社に帰属する。
- 朝日新聞 気候危機/消費減税の大綱
- 毎日新聞 中部電の「浜岡」不正
- 読売新聞 消費減税の大綱/インフル流行(URL中の数字は前日の日付だが、掲載は9月16日)
- 産経新聞 BRICS/消費減税で大綱
- 東京新聞 食品消費税減税/ジャガイモ輸入
- 日本経済新聞 税制大綱は消費税減税の財源をまず示せ/米国防総省の混乱を憂慮する(ウェブ配信は前日9月15日19時。紙面掲載は9月16日朝刊)
- しんぶん赤旗 主張/西岸の入植地拡大
- 公明新聞「(主張)認知症施策の充実 自治体の計画策定へ国が支援を」2026年9月16日付2面(電子版より)
- 聖教新聞は、この日は社説の掲載がなかった。
前日までの社説への言及は、8月31日から9月15日までの本連載の記事による。
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