告別式の喪主挨拶。同じ日に三度話す人のために
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結論
喪主の挨拶は、集まってくださった方への礼が骨です。故人の話は、その中に一つだけ置きます。弔辞のように故人へ語りかける場ではありません。ここを取り違えると、身内の思い出話を長く聞かせる形になります。
この記事の受け取り方
- 下書きを実際に編集した実物を、元の文章とあわせて載せている。
- 括弧で開いた場所は、異なる判断がありうる場所である。太字が、こちらで採った側。
- 目安は通夜と告別式が3分から5分、献杯が2分ほど。ただし式場が時間を決めていることが多い。
1完成した文章
編集した側が場面に照らして選ぶなら、こうなります。
本日はご多忙のところ、亡き父〇〇の葬儀にご参列いただきまして、誠にありがとうございました。
父は十年前に会社を退きましてから、毎朝、庭の水やりを日課としておりました。晩年は病気がちで、思うように動けない日もございましたが、家族に見守られて、安らかに旅立ちました。
生前は、皆様に大変お世話になりました。
残された家族一同、力を合わせてまいります。今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
本日は、誠にありがとうございました。
2きざんだ本文
括弧の中の「/」は選択肢です。スラッシュのない括弧は「入れるか、省くか」。<001> は形の違う選択肢をまとめた番号ブロックで、丸数字のどれかを選びます。太字が、上の「1 完成した文章」に採った側です。
太字だけを声に出して読むと、1の文章になります。読み終えたら、5節と読み比べてください。
本日は(ご多忙/お忙しい)のところ、(亡き父/父)〇〇の葬儀に(ご参列/お運び)(いただき/くださり)まして、誠にありがとうございました。
父は十年前に(会社/勤め)を(退き/離れ)ましてから、(毎朝/朝ごとに)、庭の水やりを(日課/習慣/楽しみ)としておりました。
晩年は(病気/病)がちで、(思うように動けない/体の自由がきかない)日も(ございました/ありました)が、家族に見守られ(て)、(安ら/静)かに旅立ちました。
<001>
①(生前/存命中)は、皆様に(大変/ひとかたならぬ)お世話になりました。
②父がこうして最後まで(穏や/安ら)かにおりましたのは、皆様に(支え/見守っ)ていただいたおかげ(でござい/だと思っており)ます。
③(この部分は割愛する)
残された家族(一同)、(力を合わせて/支え合って)まいります。今後とも(変わらぬ/これまでと同じ)(ご厚誼/お引き立て)を賜りますよう(お願い申し上げます/お願いいたします)。
<002>
①本日は、(誠に/重ねて)ありがとうございました。
②本日は、(お忙しい/ご多用の)ところを、(誠/本当)にありがとうございました。
③(この部分は割愛する)
分岐は28箇所、本文は16文。1文あたり1.75箇所です。
3どんな場面か
| 話す人 | 喪主。父を送る長男 |
|---|---|
| 場面 | 告別式。出棺の前に、参列者へ向けて |
| 長さ | 3分から5分。ただし式場や葬儀社が時間を決めていることがほとんど |
| 元の文章 | 喪主本人が書いた下書き、という想定。創作例です |
4元の文章
きざむ前の下書きです。これと、2の「きざんだ本文」を見比べてください。
ビフォー
本日はご多忙のところ、亡き父〇〇の葬儀にご参列いただきまして、誠にありがとうございました。
父は十年前に会社を退きましてから、毎朝、庭の水やりを日課としておりました。晩年は病気がちで、思うように動けない日もございましたが、家族に見守られ、安らかに旅立ちました。生前、皆様には大変お世話になりました。
残された家族一同、力を合わせてまいります。今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。
この下書きは、よくできています。直すところはほとんどありません。喪主の挨拶で工夫すべきなのは、礼の言い回しではないからです。ここは型どおりで構いません。
5判断の解説
5-1 礼のところは、型どおりでよい
冒頭の「本日はご多忙のところ〜」と、結びの「本日は、誠にありがとうございました」は、型そのものです。それでよいのです。
弔辞では「型どおりに始めると誰の弔辞にもなる」と書きました。喪主の挨拶は逆です。喪主は個人として語る立場ではなく、遺族を代表して礼を述べる立場です。ここで独自性を出そうとすると、かえって場が浮きます。工夫する場所を間違えないことが、この挨拶ではいちばん大事です。
5-2 人柄が出るのは、ここ一か所 <001>
①は型どおりの礼で、短く収まります。②は「皆様に支えていただいたおかげ」と踏み込む形で、参列者への言葉としては厚くなります。
ただし②を採ると、故人の話より参列者への礼のほうが長くなります。どちらを重くするかは、その場の顔ぶれで決まります。会社関係の方が多ければ②、身内が中心なら①、というのが一つの目安です。
③は丸ごと省く選択肢です。通夜でも同じ礼を述べる場合、告別式では省いて構いません。同じ日に三度挨拶する喪主にとって、どこで何を言うかの配分がいちばんの問題だからです。
5-3 「庭の水やり」で、父の像が変わる
(日課/習慣/楽しみ)の三択です。
「日課」は、勤めを終えた人の規律を立てます。会社を退いてなお、毎朝決まったことをしていた人。「楽しみ」は、晩年の穏やかさを立てます。同じ庭の水やりでも、聞いた人の中に残る父が違ってきます。
元の文章が「日課」なので、そのまま採りました。話す方が、どちらの父を送りたいかで選び直してよいところです。
5-4 「一同」を入れるかどうか
素の括弧、つまり「入れるか、省くか」の判断です。
入れると、家族が一つの塊として立ちます。省くと、話し手個人の言葉に寄ります。親族間に配慮が要る場合——再婚があった、疎遠だった家族がいる——ここは慎重に選ぶところです。「一同」と言った瞬間に、その中に誰が入っているかを、聞いている人は数えます。
6三度の挨拶を、どう言い分けるか
喪主は、同じ日に何度も挨拶します。そして親族の多くは、その全部に居合わせています。同じ話を三度繰り返せば、必ず気づかれます。
先に配分を決めておくのが、いちばん確実です。
| 場面 | 目安 | その場で求められていること |
|---|---|---|
| 通夜 | 3〜5分 | 足を運んでくださったことへの礼。翌日の告別式の案内。通夜振る舞いへのお誘い。故人の話は短く |
| 告別式・出棺 | 3〜5分 | その日いちばん重い挨拶。生前のお付き合いへの礼と、故人の話を一つ。遺族への今後のお願い |
| 精進落としの献杯 | 2分ほど | 席が和らぐ場。長く話さない。ここで初めて、少しくだけた思い出に触れられます |
故人の話を一つに絞るのは、この配分のためでもあります。告別式で三つ話してしまうと、献杯の席で話すことが残りません。
よくある質問
喪主の挨拶は、どのくらいの長さですか。
通夜と告別式が3分から5分、精進落としの献杯が2分ほどが目安です。ただし式場や葬儀社が時間を決めていることがほとんどですので、担当の方に確認してください。
通夜と告別式で、違う挨拶が必要ですか。
必要です。親族の多くは、通夜も告別式も献杯も、すべての場に居合わせます。同じ話を繰り返すと気づかれます。場面ごとに何を言うかを変えておくと、その日一日が一続きの弔いになります。
故人の話は、どのくらい入れますか。
一つだけです。喪主の挨拶は、集まってくださった方への礼が骨になります。故人の話はその中に置かれるもので、中心ではありません。三つ並べると、どれも薄くなります。
家族葬でも、挨拶は必要ですか。
多くの場合、必要です。人数が少ないぶん、一人ひとりに向けた言葉になります。形式的な文言でごまかせない場ですので、かえって難しいことがあります。