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地方議員の現場レポート 第3回

道にたまる雨は誰が流すのか――側溝の詰まりから流域の治水まで

公開

この回の幹

道路に降った雨は、側溝や雨水ますなどを通って流されます。道路と下水道は、それぞれ別の法律に管理の仕組みが書かれていて、その先の川も含め、管理する役所が分かれることがあります。今回読んだ投稿には、雨で水がたまる場所の相談を、その場所を受け持つ役所へ渡した例と、県と市の境目があると聞いていた場所で、両方を呼んで分担を整理した例がありました。

この記事の要点

  • 道路などにたまる雨水についての相談を扱った、2026年2月〜8月の六つの投稿を紹介します
  • 担当部署や市に伝えて直った例のほか、東京都の建設事務所に要望した例、県と市の分担を整理した例、地区の要望書を出した例があります
  • 道路・下水道・川では管理の仕組みが異なり、管理する役所が分かれることがあります。国は2003年以降、河川や下水道の管理者、地方公共団体などが一緒に取り組む仕組みを重ねてきました

今回の投稿(2026年2月〜8月)

以下は投稿の要約です。投稿そのものは、各段の下に表示しています。

担当部署に伝えて工事に(埼玉県越谷市・土屋らいむ市議/2026年3月19日)
「雨のたびに道路が冠水する」という相談を、以前に地域の方から受けた。担当部署に伝え、工事が行われて、水たまりが解消された、という報告です。

側溝と舗装の改修(千葉県市川市・石崎ひでゆき市議/2026年8月5日)
「雨が降ると道路に水がたまり、歩きにくい」という相談です。現地を確かめ、市に対応を頼んだところ、側溝や舗装の改修が行われ、水はけがよくなった、と報告しています。

数年の協議で排水溝を新設(愛知県名古屋市・月森たくや市議/2026年2月17日)
雨が降るたびに大きな水たまりができて不便だ、という相談です。数年にわたって土木の担当と協議を重ね、側溝が整えられ、排水溝が2か所新しくつくられた。長年の水たまりが解消した、という報告です。

横断歩道の水たまりを都に要望(東京都江戸川区・関根まみ子区議/2026年8月20日)
雨が降ると横断歩道に水たまりができて渡りにくい、という声が以前からあり、東京都の第五建設事務所に対策を要望していた。時間は多少かかったが、雨水ますが格子状のふた(グレーチング)に改修され、水がたまらなくなった、という報告です(同じ投稿のほかの話題は省きます)。

県と市の境目で、両方を呼ぶ(奈良県議会・中川たかし県議/2026年4月25日)
格子状のふた(グレーチング)が詰まって水はけが追いつかず、駅前が川のようになっていた、という相談です。このあたりには県と市の境目があると聞いていたので、県と市の両方を呼び、「これは県がやる、これは市がやる」と整理できた。奈良土木事務所に連絡して来てもらった、と書いています。片方だけに頼んでいたら対応が遅かったかもしれない、というのは本人の勘だ、とも断っています。

地区の排水路・道路・河川をまとめて要望(岐阜県岐阜市・浅野まさき市議/2026年6月30日)
市内の一地区の河川や排水路などの課題について、地域から陳情を受けてきた。投稿の前日、その地区の自治会長らと市役所を訪れ、要望書を出した。要望は三つに分かれていて、排水路は転落防止の柵、草刈り、たまった土砂の除去。道路は交差点の安全対策と、冠水対策としての道路のかさ上げ。河川は倒れた木や枯れた木の伐採、盛り上がった土砂の除去、用水路の工事の中身や時期の確認です。

比べてみる

六つの投稿は、いずれも雨水や排水にかかわる相談です(岐阜市の要望書には、交通安全などの課題も含まれています)。投稿に書かれた、伝えた先と結果を並べます。

困りごと伝えた先投稿で報告された結果
越谷市雨のたびに道路が冠水担当部署工事が行われ、水たまりが解消
市川市雨で道路に水がたまる市側溝と舗装を改修
名古屋市雨のたびに大きな水たまり土木の担当(数年協議)側溝を整え、排水溝を2か所新設
江戸川区横断歩道に水たまり東京都の第五建設事務所雨水ますをグレーチングに改修
奈良県グレーチングの詰まりで駅前が川のように県と市の両方県と市の分担を整理
岐阜市地区の排水路・道路・河川市役所に要望書要望書を提出した段階

投稿に書かれた伝えた先は、書き方がそれぞれ違います。越谷市は担当部署、市川市は市、名古屋市は土木の担当と書いています。江戸川区の関根区議は区議会議員ですが、要望した先は東京都の建設事務所でした。奈良県の中川県議は、県と市の両方を呼んでいます。江戸川区と奈良県の投稿からは、水たまりの相談でも、場所によっては、都に要望したり、県と市の両方と調整したりすることがあるとわかります。

手の入れ方にも幅があります。江戸川区は今ある雨水ますの改修、市川市は側溝と舗装の改修でした。名古屋市は排水溝を新しくつくり、岐阜市の要望書には道路のかさ上げが入っています。対応に時間がかかったことを書いているのは、名古屋市(数年にわたる協議)と江戸川区(多少かかった)です。時間がかかった詳しい理由は、投稿には書かれていません。

国の制度とつなぐ――雨の通り道と、管理する者

道路の側溝や雨水ますは、道路をつくるときの基準に書かれた設備です。道路構造令は、道路には排水のため必要な場合、側溝や集水ますなどの排水施設を設ける、と定めています。道路の管理は道路法で決まっていて、都道府県道は原則として都道府県が、市町村道は市町村が管理します(政令指定都市の中の都道府県道はその市が管理する、などの特例があります)。管理する者は、道路をいつもよい状態に保つよう維持・修繕に努めなければならない、とされています。

道路から流れ込んだ先の下水道について、下水道法は、「下水」には汚水だけでなく雨水も含まれるとし、公共下水道は原則として市町村が管理する、と定めています(複数の市町村が受益し、関係する市町村だけでは設置が難しい場合には、都道府県が関係する市町村と協議して管理することもあります)。下水道から川へ流す場合には、その川を管理する者(河川管理者)も関わります。道路、下水道、川では管理の仕組みが異なり、場所によっては管理する役所が分かれます。

江戸川区の投稿で要望先になった東京都の第五建設事務所は、東京都建設局によると、墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区の区域で、国道の一部と都道、一級河川などを管理しています。区の中の道路でも、都が管理する道路であれば、話を持っていく先は都になります。奈良県の投稿では、県と市の境目があると聞いていた場所で、両方を呼んで分担を整理したと報告されています。何の境目だったのかは、投稿には書かれていません。

水防法は、一時的に大量の雨が降ったとき、下水道などの排水施設で雨水を流しきれない、または排水施設から川などへ流しきれないことによる出水を、「雨水出水」(いわゆる内水)と呼んでいます。今回の投稿が扱うのは、道路や横断歩道の水たまり、駅前の冠水です。奈良県の投稿の「グレーチングが詰まって水はけが追いつかない」という状態は、排水が追いつかないという点では定義と重なりますが、この投稿だけでは、法律の上の「雨水出水」に当たるかどうかはわかりません。

歴史と比べる――「雨を流す役」は、どう書かれ、どうつなぎ直されてきたか

東京都下水道局の資料によると、明治10年(1877年)に銀座通りがつくられたとき、道路の両側にあったドブが洋風の溝に改められました。明治17〜18年には、東京府が神田の一部にレンガ積みの下水道を敷きました(「神田下水」)。明治33年(1900年)に下水道法ができ、明治41年(1908年)に定められた東京市の下水道の計画は、雨水を流して浸水を防ぐことと、汚水を流して暮らしの環境をよくすることの両方を考えたものでした。国土交通省も、日本の下水道事業は当初、雨水と汚水を流すことを目的に始まった、と説明しています。雨を流すことは、下水道の最初からの仕事でした。

戦後には、3節で見た道路法(1952年・昭和27年)ができ、道路の種類ごとに管理する者が定められました。1958年(昭和33年)には下水道法が抜本的に改められ、国土交通省によると、都市の中の浸水を防ぐことに重点が置かれました。道路の側溝や集水ますは、いまの道路構造令(1970年)に定められています。

その後、国は、施設ごとの管理者を一緒に動かす仕組みを足していきます。国土交通省によると、2003年(平成15年)、都市で浸水の被害が相次いだことを受けて、河川管理者、下水道管理者、地方公共団体が一体となって浸水対策を進めるための「特定都市河川浸水被害対策法」ができました。2015年(平成27年)には水防法などが改められ、下水道などが雨を流しきれずにあふれる場合に備えて、浸水が想定される区域を示す制度ができました。2021年(令和3年)2月に閣議決定された流域治水関連法案は、「流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働して取り組む」ことを掲げ、流域水害対策の協議会の創設を盛り込みました。法律は同じ年の5月10日に公布されました。国土交通省の施行の通知によると、この改正では、浸水が想定される区域を示す対象に、それまで外れていた河川や下水道のうち周辺に住宅などがあるものが加えられ、「水害リスク情報の空白地帯」をなくすことが目指されています。

「誰が雨を流すのか」という問いで、この百年あまりをたどり直すと、流れが見えます。明治の下水道は、雨と汚水をともに流すものとして始まりました。戦後は、道路と下水道のそれぞれに管理する者が法律で定められました。2003年以降は、河川管理者、下水道管理者、地方公共団体が一緒に取り組む仕組みが、法律に重ねられてきました。制度は、流域の計画や協議会を整えるとともに、個々の施設の管理も扱っています。それでも、ある場所の水たまりが、どの施設の、どの管理者の受け持ちになるかは、場所ごとに違います。

奈良県の投稿には、その受け持ちを現場で確かめた過程が書かれています。ほかに、江戸川区の関根区議は区議会議員として受けた声を東京都の建設事務所へ持っていき、岐阜市の浅野市議が自治会長らと出した要望書は、同じ地区の困りごとを排水路・道路・河川の三つに分けて並べていました。管理者どうしが一緒に取り組む仕組みは法律に重ねられてきましたが、一か所の排水について県と市の分担を整理する作業は、奈良県の例のように、相談を受けた現場で行われることがある、と筆者は考えます。

社説とつなぐ――排水能力の強化と、身近な手入れ

9月19日の公明新聞と9月20日の毎日新聞が、続けて内水氾濫を取り上げました。社説読み比べ(9月20日)は、公明が排水能力の抜本的な強化を求めたのに対し、毎日は、地下の調節池や分水路は有効だが費用と時間がかかるとして、浸水想定区域図の公表(同記事によれば、毎日は約6割の自治体が未公表と指摘)や、貯留槽、アンダーパスの交通規制など、できるところからの対策を求めた、と整理しています。

> 「同じ内水氾濫に、公明は抜本策を、毎日は手前の策を求めた。」(社説読み比べ 2026年9月20日)

この読み比べから筆者が考えたいのは、排水能力を大きく強める対策と、身近でできる対策を、どう組み合わせるかという問いです。今回の投稿には、今ある施設の改修や新設の報告と、草刈りや土砂の除去などを求める要望が出てきます。市川市では側溝や舗装の改修で排水の働きがよくなり、江戸川区では雨水ますの改修で水がたまらなくなった、と報告されています。名古屋市では、数年の協議を経て排水溝が新しくつくられました。岐阜市の要望書には、草刈りやたまった土砂の除去と、冠水対策としての道路のかさ上げが、一緒に書かれていました。

今回の六つの投稿は、雨水や排水にかかわる地域の困りごとを、受け持つ役所への相談や要望につないだ記録です。岐阜市の要望書のように、今ある施設の手入れと、道路のかさ上げのような工事の要望をまとめて出すやり方は、手入れと工事をどう組み合わせるかを、地区の単位で考えるときの手がかりになる、と筆者は考えます。

→ 社説読み比べ 2026年9月20日

この題材は、小説にもなっています。→ お仕事小説(地方議員)『低い土地』(note)

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出典

各議員の投稿は、本文中の埋め込みからXで原文をお読みください。制度・歴史の記述は次の資料によります。


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