横断歩道と信号は誰が決めるのか――「ここに欲しい」が警察の物差しにかけられるまで
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この回の幹
横断歩道も信号機も、設置を決めるのは区や市ではなく、都道府県の公安委員会です。調べて検討するのは警察です。住民の「ここに欲しい」という声は、警察が定めた基準に照らして判断されます。今回読んだ投稿には、その判断に届くように要望を渡した例と、届かなかったあとに別の手を探した例がありました。
この記事の要点
- 横断歩道と信号機についての相談を扱った、2026年3月〜9月の七つの投稿を紹介します
- 設置が実現した例もあれば、警察の基準に届かず、注意を促す標識や看板など別の対策に移った例や、別の方法を探している例もあります
- 信号機には警察庁の「設置の指針」が、横断歩道には間隔などの基準があります。信号機は、条件を満たしても、必ず設置されるとは限りません
- 【10月15日 追記】信号機を求める地元の声、かすれた横断歩道の引き直し、信号機の撤去と住民への説明が、1989年から2025年まで国会でどう話されてきたかを、会議録からたどって5節に足しました
今回の投稿(2026年3月〜9月)
以下は投稿の要約です。投稿そのものは、各段の下に表示しています。
横断歩道は警察署の所管――距離が近すぎると見送り(東京都大田区・中坪悦子区議/2026年7月1日)
横断歩道の設置を求める相談です。横断歩道は警察署の所管で、区では直接は対応できない。1年前から区の担当課や都議会議員にも相談し、警察署に申し入れてきたが、近くに別の横断歩道がすでにあり、距離が近すぎるという理由で見送られた。その後、ほかの自治体の例を調べ、自治体の判断で道路に注意を促すマークを入れられることがわかったので、別の方法での再検討を働きかけていく、と書いています。
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— @nakatsuboetsuko https://x.com/nakatsuboetsuko/status/2072239068541567202
信号機は基準に届かず――◇の目印と看板に切り替え(東京都足立区・石毛かずあき区議/2026年8月1日)
横断歩道を渡ろうとする人がいても、車が速度を落とさずに通り過ぎて危ない、という相談です。区の職員にも現地を見てもらい、信号機の設置も要望したが、設置の基準を満たさないため実現しなかった。そこで、「この先横断歩道あり」の◇の道路標識や、注意を促す看板を4か所に設置してもらった。根本的な解決ではないが、事故防止への一歩になれば、としています。
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— @ishige_kazuaki https://x.com/ishige_kazuaki/status/2083428591086542877
歩行者用の信号機が動き出す(東京都板橋区・木田おりべ区議/2026年9月16日)
車両用の信号機しかない交差点で、見通しが悪い部分もあり、交通事故が起きたり、事故の恐れがたびたび生じたりしていた、という場所です。地域の方からの要望を、前の都議会議員を通じて警視庁に伝え、歩行者用の信号機が設置された。9月16日の投稿で、その運用が始まったと報告しています。
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— @kidaoribe https://x.com/kidaoribe/status/2100204809185902660
消えた停止線と横断歩道を引き直す(静岡県議会・盛月ひろみ県議/2026年5月23日)
交差点の停止線と横断歩道が消えてしまって危ない、という3月下旬の相談です。雨の日に現地を見ると、停止線の位置がわからなかった。すぐに県警察に対応を依頼し、「5月中には引き直しをする」との回答を得ていたところ、相談者から「引き直しが終わっている」と電話があった、という報告です。
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— @1uP1L2858xcHxKY https://x.com/1uP1L2858xcHxKY/status/2058137131021910439
相談から1年あまりで設置の報告(神奈川県川崎市・河野ゆかり市議/2026年3月22日)
公園の方から駅へ向かう人が道路を渡るのが危ない、横断歩道を設置できないか、という2024年12月の相談です。2026年3月22日の投稿で、横断歩道の設置が完了し、相談者と現場を確かめたと報告しています。
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— @kounoyukari https://x.com/kounoyukari/status/2035657282193948843
交差点の最後の一か所(東京都杉並区・宇田川ゆうじ区議/2026年8月14日)
公園どうしを結ぶ道の途中の交差点で、横断歩道が一か所だけ無かった、という場所です。約1年前に地域の方から、残りの一か所にも設置してほしいとの要望を受けてきた。時間はかかったが、先日設置された、という報告です。
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— @yuji_udagawa https://x.com/yuji_udagawa/status/2088074120215040423
信号機が撤去された交差点(福岡県福岡市・かつやま信吾市議/2026年5月1日)
交差点の交通安全についての、自治会長からの相談です。この交差点では2025年度末に一灯式の信号機が撤去され、「止まれ」の停止線と標識に替わった。ところが、直進するときの右手の見通しが悪く、ひやりとする場面が多い。急いで要望書を作り、区長あてに出した、という報告です。
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— @katsuyama1118 https://x.com/katsuyama1118/status/2049996423681503469
比べてみる
七つの投稿は、どれも区や市だけでは決められないものにかかわっています。議員の動きと結果は、次のように分かれました。
| 求めたもの | 結果 | |
|---|---|---|
| 板橋区 | 歩行者用の信号機 | 前の都議会議員を通じて警視庁に要望し、設置・運用開始 |
| 川崎市 | 横断歩道 | 相談から1年あまりで設置完了を報告 |
| 杉並区 | 交差点に残る一か所の横断歩道 | 要望から約1年で設置を報告 |
| 静岡県 | 消えた停止線と横断歩道の引き直し | 県警察に依頼し、相談から約2か月後に引き直しの完了を確認 |
| 足立区 | 信号機 | 基準を満たさず実現せず。◇の目印(投稿の言い方は「◇の道路標識」)と看板を4か所に |
| 大田区 | 横断歩道 | 近くの横断歩道との距離が近すぎるとして見送り。別の方法での再検討を働きかける意向(自治体の判断で入れられる注意のマークを調べた) |
| 福岡市 | 撤去された信号機のあとの安全 | 要望書を区長あてに提出 |
投稿に書かれた相談の時期から、完了を報告した投稿までは、静岡県の引き直しが約2か月、川崎市の横断歩道が1年あまり、杉並区の横断歩道が約1年でした。期間の違いがどこから来るのかは、投稿だけではわかりません。
足立区と大田区は、求めたものが認められなかった例です。足立区では、そのあと、投稿が「◇の道路標識」と書く目印や、注意を促す看板が設置されました。大田区では、路面のマークなど別の方法で再検討してもらうよう働きかけていく、としています。設置が実現しなかったあとも、別の安全対策を進めたり探したりしている点が、二つの投稿に共通しています。
国の制度とつなぐ――信号機の「設置の指針」と横断歩道の間隔
横断歩道や信号機は、道路交通法にもとづく交通規制として、都道府県の公安委員会が設置を決めます。現場を調べて検討するのは警察で、道路管理者との調整も要ります。区や市の道路の担当課だけでは決められません。大田区の中坪区議が、区では直接は対応できないと書いたのは、この仕組みのことです。
信号機には、警察庁が定めた「信号機設置の指針」があります。兵庫県警察が公開している概要(2026年3月27日付の警察庁交通局長通達)によると、次の五つの条件をすべて満たし、さらに、人身事故が過去1年に2件以上起きている、学校に通う子どもや病院・老人ホームなどの高齢者の交通安全を特に確保する必要がある、などの条件のどれかに当たることが必要です。
- 信号で止まっている車とすれ違える道幅がある
- 歩行者が待てる場所がある
- いちばん多い1時間に、優先側の道路の交通量が原則300台以上ある
- 近くの信号機とおおむね150メートル以上離れている
- 信号の灯器が見やすい配置になるよう、柱を立てる場所を確保できる
条件には細かい要件があり、一部には例外もあります。人身事故についても、信号機で防げたと考えられる事故かどうかなどの限定があります。警視庁は、条件に当てはまっても必ず設置されるわけではない、と説明しています。指針には撤去の考え方もあり、交通量が減るなどして必要性が下がった信号機は、ほかの対策で安全を保てるかを検討したうえで撤去を進め、常時点滅している信号機は、一時停止の規制などで代えられる場合に撤去を検討する、としています。
福岡市の投稿では、一灯式の信号機が撤去され、停止線と標識に替わったと報告されています。撤去の理由は、投稿には書かれていません。
横断歩道にも基準があります。例えば、千葉県警察が公開している「交通規制基準」では、横断歩道の間隔は、市街地でおおむね100メートル以上、それ以外でおおむね200メートル以上とされています。ただし、通学の子どもや高齢者、体の不自由な人が渡る場所などでは、間隔を短くできる、ともあります。大田区は警視庁の管内で、同じ数値が当てはまるかは確かめていません。大田区の中坪区議は、近くの横断歩道との距離が近すぎるという理由で見送られた、と報告しています。
足立区の相談は、横断歩道があるのに車が止まらない、というものでした。道路交通法は、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいるとき、車は横断歩道の手前で一時停止しなければならない、と定めています。それでもJAF(日本自動車連盟)が2025年に各都道府県2か所ずつ、計6,226台を調べた全国調査では、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%でした。調査の対象になった車の4割以上が、一時停止しなかったことになります。
歴史と比べる――信号を「置く」と決める役は、どこに置かれてきたか
日本の交通信号の始まりは、1919年(大正8年)、東京の上野広小路の交差点です。「トマレ」「ススメ」と書いた木の板を回転させて使う、手動のものでした。1930年(昭和5年)には、日比谷の交差点にアメリカから輸入した赤・黄・緑の電気式の信号機が置かれました。信号の操作は、人の手から機械へ移っていきます。一方で、警察の組織は、戦後に大きく変わりました。
戦後、警察の一部が市町村の組織として置かれた時期があります。1948年(昭和23年)に施行された旧警察法は、すべての市と、人口5千人以上の市街地の町村に自治体警察を置き、市町村長の所轄のもとに置いた市町村公安委員会がこれを管理する仕組みでした。費用は、施行の約3か月後にできた地方財政法で、その自治体が全額負担することになりました。当初は全国に1,605の自治体警察がありました。しかし費用の負担に耐えられない市町村が次々に返上し、新しい警察法ができる直前には402にまで減っていました。1954年(昭和29年)の新警察法は、国家地方警察と自治体警察の二本立てをやめ、警察庁と都道府県警察の仕組みに改めました(五大市の市警察は経過措置で翌1955年まで残りました)。
1960年(昭和35年)に制定された道路交通法は、この都道府県の仕組みの上に書かれています。制定時の第4条は、都道府県の公安委員会またはその委任を受けた者が信号機を設置し管理できると定め、交通のひんぱんな交差点など危険を防ぐために必要な場所には、公安委員会が信号機を設置するよう努めなければならない、としました。区や市の役所ではなく都道府県の公安委員会が信号機を置く、という今の形は、1960年の時点で法律に書かれています。
その後、信号機は全国で約20万7千基(2023年3月末)になりました。2012年12月に中央自動車道の笹子トンネルで天井板が落ちて9人が亡くなった事故のあと、古くなった社会資本の点検が急がれ、警察庁も信号柱の更新に国の補助をつけました。このとき、耐用年数を過ぎていた信号柱は全国で2万2千本あまりありました。警察庁は白書で、整備から長い時間がたった信号機の老朽化対策を課題とし、交通環境の変化で効果が下がった施設は撤去するとしています。3節の「信号機設置の指針」が、設置の条件と並べて撤去の考え方を書いているのは、この流れの中にあります。必要な場所への設置、老朽化した施設の更新、必要性が下がった施設の撤去が、いま並んで進められています。
こうして並べると、地方議員がこの分野で置かれている位置が見えます。1954年に警察の組織は都道府県を単位に改められ、1960年の道路交通法は信号機を置く権限を都道府県の公安委員会に定めました。今回の投稿でも、板橋区の要望は前の都議会議員を通じて警視庁へ伝えられ、大田区の相談は都議会議員にも持ち込まれ、静岡県では県議会議員が県警察に依頼していました。板橋区、大田区、静岡県の投稿には、権限のある側へ要望を伝えた経路が記録されています。
国会ではどう話されてきたか――「ここに欲しい」と「ここは要らない」のあいだ
【2026年10月15日 追記】この節は、公開後に足しました。国立国会図書館の「国会会議録検索システム」で、信号機と横断歩道の話をたどりました。発言は要旨です。各段の終わりに、会議録へのリンクを付けています。
早い例――1989年「ぜひ信号機を」という声
1989年11月22日、衆議院の地方行政委員会と交通安全対策特別委員会の連合審査会でのやり取りです。山田英介委員は、前の年に交差点で起きた死亡事故のうち、信号機のない交差点での車どうしの出会い頭の事故が819件と飛び抜けて多い、と述べました。
委員は、信号機の設置は沖縄を除いて県の単独事業になっている、とも述べました。そのうえで、地元では「あそこにもここにもぜひ信号機をという声が非常に多く聞かれる」として、自治大臣の考えを尋ねました。
自治省の財政局長は、信号機を含む交通安全施設は、五か年計画に従って財源の手当てをしている、と答えました。渡部恒三自治大臣は、地方団体への財政の援助にできるだけ努めたい、と答えています。
→ 会議録 1989年11月22日 質問/答弁(財政局長)/答弁(大臣)
線を引き直すのは誰か――2016年 かすれた横断歩道
2016年4月1日、衆議院の内閣委員会でのやり取りです。小宮山泰子委員は、横断歩道や車線のラインの引き直しなど、身近な交通安全施設の補修の予算が足りない、と警察関係者から聞いていると述べました。かすれた横断歩道を引き直すとき、予算がなければ幅を少し短めにするなどの努力をしている、とも紹介しています。
同じ日、後藤祐一委員は、地元の厚木市で、小学4年生の女の子が横断歩道ではねられて亡くなった事故を挙げました。横断歩道がかすれていたことが原因の一つではないか、という話もある、としています。そのうえで、横断歩道の塗りかえは県のお金で行い、市町村が自分のお金を出して行うことは、地方財政法の規定でできない、と述べました。
河野太郎国家公安委員長は、新しく横断歩道を市町村が勝手につくるのはまずいと思う、と前置きしました。一方で、かすれた横断歩道を市町村が自分のお金で塗るのは「何となくよさそうに思う」と述べています。ただ、法律を直すと横断歩道のほかにも広く関わるので、一存では決められない、と答えました。市道を補修して横断歩道が消えた場合は、引き直してよいという話になっている、とも述べています。そのうえで、いろいろな方面と検討したい、と答えました。
→ 会議録 2016年4月1日 質問(予算)/答弁/質問(市町村のお金)/答弁
撤去の計画と住民――2020年 信号機の点検
2020年5月29日、衆議院の内閣委員会でのやり取りです。塩川鉄也委員は、警察庁が2015年12月に信号機設置指針を定め、2019年3月に信号機合理化等計画を立てるよう求める通達を出した、と述べました。これを受けて、全国の都道府県で信号機の撤去計画がつくられている、としています。
警察庁の交通局長は、全国の信号機は2018年度末で20万8,251基だと答えました。そのうち、2019年末の時点で、指針に照らして点検する必要が高いとして6万618基が選ばれ、実際に1万6,841基が点検されました。撤去や移設が妥当と報告されたのは2,883基だった、と述べています。
委員は、通学路の横断歩道の信号機も撤去の対象になっているとして、住民の理解が得られないのではないか、と尋ねました。武田良太国家公安委員長は、信号機の設置も交通規制の手段の一つで、交通の実態に的確に対応するとともに、地域住民の理解を得ることが重要だ、と答えました。個別の移設や撤去は、それぞれの地域で十分に周知が図られるべきだ、とも述べています。
委員は、撤去の計画が住民にほとんど伝わっていなかった例を挙げました。局長は、住民への周知が足りないものがあるという指摘に向き合わなければならない、と反省を述べました。そのうえで、通達では、撤去にあたって地域住民や道路管理者と十分に調整すること、住民には必要性が下がった状況や撤去後の安全性を説明して理解を求めることを指示している、と答えています。
→ 会議録 2020年5月29日 質問/答弁(局長)/質問(通学路)/答弁(委員長)/質問(周知)/答弁(局長)
いま――2025年「両方に言ってくれ」
2025年3月14日、衆議院の国土交通委員会でのやり取りです。
国土交通省の道路局長は、道路管理者が設ける路面の標示として、車道の中央線などの区画線を挙げました。
警察庁の審議官は、横断歩道や一時停止といった交通規制は都道府県公安委員会が行い、その道路標示を置くのは警察だ、と答えています。
森山浩行委員は、横断歩道や止まれの線、中央線が消えかけている交差点について、地元や学校のPTAから要望が出ても、警察と道路管理者の優先順位がずれて、なかなか前に進まない例をよく見かける、と述べました。
こうした陳情が多く、「両方に言ってくれと言われる」とも述べています。
中野洋昌国土交通大臣は、道路管理者と警察で更新の時期を合わせていないといった課題があると認識している、と答えました。
進んだ地域では、国・県・市町と警察が路面の標示を同時に施工する取り組みがあり、こうした取り組みを全国に知らせて広げていきたい、と述べています。
→ 会議録 2025年3月14日 答弁(道路局長)/答弁(警察庁)/質問/答弁(大臣)
現場の声と、国会の議論の距離
1989年には、委員が、地元から信号機を求める声が多いこと、信号機の設置は県の単独事業だということを述べました。
2016年には、かすれた横断歩道を市町村が自分のお金で引き直せないことが話されました。
2020年には、指針に照らして信号機を点検し、撤去を進める計画と、住民への周知が話されました。
2025年には、横断歩道を受け持つ警察と、中央線などを受け持つ道路管理者の、時期のずれが話されました。
筆者は、ここに今回の投稿を重ねて読みたいと思います。
静岡県では、消えた停止線と横断歩道について、県議会議員が県警察に対応を依頼し、相談から約2か月後には引き直しが終わっていた、と報告されています。
2025年の答弁にある、横断歩道の標示は警察が設けるという分担と合う流れです。
福岡市では、一灯式の信号機が撤去され、停止線と標識に替わった交差点について、自治会長の相談から要望書が区長あてに出されました。
2020年の答弁は、撤去にあたって住民に説明し、理解を求める、というものでした。
ただし、福岡市の撤去がこの計画によるものか、どんな説明があったかは、投稿からはわかりません。
大田区では、横断歩道が見送られたあと、自治体の判断で入れられる注意のマークが調べられていました。
2016年の答弁で大臣は、新しい横断歩道を市町村が勝手につくるのはまずいと思う、と前置きしていました。
筆者は、横断歩道そのものではなく、自治体が自分で手を打てるものを探した例として読みます。
社説とつなぐ――基準は「仕方ないね」で終わっていいか
ここでは、別の題材から、この回の問いに重ねて読める社説を取り上げます。
9月22日の朝日新聞「トイレの行列 『仕方ないね』の点検を」です。国土交通省が、女性用トイレの行列をなくすため、利用者が男女ほぼ同数の施設では女性用の便器を男性用より多くするという指針を公表した。朝日は主要72市区の公立小中学校を調べ、男子用の便器数が女子用の1.4倍だったと書き、そこからこう続けました。
> 「便器数の問題から見えてくるのは、基準がいったん定着すると、その妥当性が十分に検証されないまま残り続ける危うさだ。」(朝日新聞)
横断歩道と信号機にも、基準があります。信号機の指針では、いちばん多い1時間に優先側の道路を通る車が原則300台以上、近くの信号機からおおむね150メートル以上、といった条件が全国共通に定められ、あわせて例外や個別に検討する事項も書かれています。足立区では信号機の設置が「基準を満たさない」とされ、大田区では横断歩道が既存の横断歩道との距離を理由に見送られました。足立区では満たさなかった条件が、大田区では距離の数値や判断の詳細が、投稿には書かれていません。福岡市では、信号機が撤去された交差点の見通しの悪さについて相談が寄せられました。撤去の理由は投稿からはわかりません。
基準に届かなかったこと。信号機が撤去され、停止線と標識に替わったこと。住民の側から見れば、どちらも「仕方ないね」で終わりかねない場面です。この回の投稿では、そのあとに議員がしたことが書かれていました。足立区では、投稿が「◇の道路標識」と書く目印や、注意を促す看板が4か所に置かれ、大田区では自治体の判断で入れられる路面のマークが調べられ、福岡市では区長あてに要望書が出されました。個別の危険に手を打つことと、基準そのものの妥当性を検証することは、別の仕事です。ただ、基準が答えを出したあとに現場に何が残ったかは、基準を検証するときの材料になります。朝日が示した、定着した基準の妥当性を点検するという視点は、一つの交差点に残った危険を記録することにもつながる、と筆者は考えます。
もう一本、9月20日の日本経済新聞は民泊の規制について、制度を整理したうえで、一律に禁止・規制するよりも、きちんと運営している物件と不備がある物件で扱いを変えるのが望ましい、と書きました。一律の扱いだけでなく個別の事情を見るという観点は、横断歩道の基準にもあります。3節で見た横断歩道の間隔の基準には、通学・通園の子どもや高齢者などが渡る場所、商店街など横断が特に多い場所では間隔を短くできる、という例外が置かれています。一律の数字と、現場ごとの例外。基準はその両方を持っています。原則と例外のどちらを当てはめるかを検討するには、その場所の交通の状況や安全性を具体的につかむ必要があります。
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出典
各議員の投稿は、本文中の埋め込みからXで原文をお読みください。制度・歴史の記述は次の資料によります。
- https://www.police.pref.hyogo.lg.jp/traffic/regulation/shingo/data/sisin.pdf
- https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/doro/singoukisetchi/singoukisetchi.html
- https://www.police.pref.chiba.jp/content/common/000054526.pdf#第6横断歩道
- https://jaf.or.jp/common/news/2025/20251030-001
- https://www.police.pref.osaka.lg.jp/sogo/oshirase/koho/kidscorner/guidance/question/kotsujiko/2518.html
- https://www.pref.nagano.lg.jp/police/rekishi/shingomenkyo.html
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BF%A1%E5%8F%B7%E6%A9%9F#信号標板
- https://www.npa.go.jp/hakusyo/h16/hakusho/h16/html/F2102000.html
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E8%AD%A6%E5%AF%9F_%28%E6%97%A7%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E6%B3%95%29#5000人
- https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/03419600625105.htm#第四条
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- https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/55165.pdf
- https://kokkai.ndl.go.jp/api/speech?speechID=111604731X00119891122_089&recordPacking=json
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